- 日本とブラジルの高校生の研究では、長い通学と短い睡眠が結び付いていました。
- 放課後の予定や保護者の教育への期待も、子どもの睡眠と関連しています。
- 実測の研究では、朝の出発条件と、夜に何を終えてから寝るかを分けて捉えています。
- 睡眠時間と成績の関連は小さく、通い方の判断には本人の眠気や暮らしやすさも必要です。
- 移動、帰宅、就床、起床を記録し、動かせる予定から見直します。
バスと電車で通塾する中高生の睡眠は削られるか|通学時間と寝る時刻の研究
5785人を分析した日本の高校生研究では、通学が長い生徒ほど睡眠時間が短いという関連が報告されています。大分県の高校生を追ったSetaら(2025)の結果は、田無駅のバス停で子どもの帰りを待つ保護者にも気になる数字です。バス停での待ち時間も含め、武蔵境方面の塾への行き帰りが長くなると、そのぶん眠る時間が削られるのでしょうか。長い移動は睡眠を圧迫する要因として見直す価値があり、通い方は帰宅後の予定と翌朝の起床まで含めて判断するのが実用的です。
帰宅が遅い日には、食事や入浴、翌日の準備が後ろへずれ、寝る時刻まで押されることがあります。一方、帰宅が早くても寝る直前まで用事が残っていれば、寝床に入る時刻は早まりません。そこで、塾にいる時間、帰りの移動、家に着いてから寝るまでを分けて眺めます。学校へ出るために起きる時刻も並べると、夜だけを見ていたときには気づきにくい窮屈さが見えてきます。通い始める前にも、すでに通っている家庭の見直しにも使える見方です。
要点
- 日本とブラジルの高校生の研究では、長い通学と短い睡眠が結び付いていました。
- 放課後の予定や保護者の教育への期待も、子どもの睡眠と関連しています。
- 実測の研究では、朝の出発条件と、夜に何を終えてから寝るかを分けて捉えています。
- 睡眠時間と成績の関連は小さく、通い方の判断には本人の眠気や暮らしやすさも必要です。
- 移動、帰宅、就床、起床を記録し、動かせる予定から見直します。
長い通学と短い睡眠は、日本の高校生でも結び付いている
「遠くへ通うほど寝る時間が減る」という見方には、観察研究による裏付けがあります。観察研究とは、研究者が通い方を割り振らず、普段の生活と睡眠の関係を調べる方法です。Pereiraら(2014)はブラジルのサンタマリア市で高校生1126人を調べ、移動が長いほど寝床にいる時間が短いという関連を報告しました。平均年齢は16.24歳で、朝に授業がある組と夜に授業がある組では、長い移動と短い睡眠が結び付いていました。
日本の結果も同じ方向です。Setaら(2025)は大分県の高校40校で生徒を募り、両方の調査に答えた5785人を最終分析した、2年間のコホート研究を行いました。コホート研究は、同じ集団を追って変化を調べる研究です。追跡時に睡眠の問題が見られた割合は、通学が1時間を超す組で48.9%、30分未満の組で41.9%でした。
Setaら(2025)では、通学が1時間を超す組を30分未満の組と比べた調整オッズ比は1.42、95%信頼区間は1.17〜1.73でした。調整オッズ比は、ほかの要因を統計上考慮したうえで、問題がある場合とない場合の比を組どうしで比較する指標です。信頼区間は、推定値の不確かさを幅で示すものです。この研究では長い通学と睡眠時間の短さも結び付いており、通う時間を生活設計の項目に入れる根拠になります。
家庭では、行き先までの距離よりも、実際に家を出てから帰るまでの時間に注目すると整理しやすくなります。乗っている時間に加えて、待つ時間や乗り継ぎの前後も予定表に入れます。経路の候補を比べるときは各社の最新の案内で確かめ、普段使う時間帯の帰宅の流れを見ておきます。
塾の予定と家庭の期待も、寝る時刻に関わる
通い方を決める場面では、バスや電車の乗車時間に目が向きがちです。ただ、家に戻れる時刻は移動を始める時刻にも左右されます。塾の終了が遅くなれば、同じ道を帰っても帰宅は遅くなります。帰りの便だけを工夫する前に、学校を出てから寝るまでの予定をつなげて確認することが大切です。
Yoo(2020)は韓国の子ども2257人を、11〜16歳に当たる6年間追跡した縦断研究で、睡眠の変化と放課後の予定を分析しました。縦断研究とは、同じ対象を時間を置いて繰り返し調べる方法です。放課後の授業に使う時間が1時間増えることは、睡眠時間が0.071時間減ることと関連していました。予定と睡眠の結び付きは、乗車中だけでなく、授業が終わって帰路につく前の時間にも目を向ける理由になります。
Yamashitaら(2025)は、日本の小学高学年から中学生までの子どもと母親を対象とする全国的な調査を用いました。観察データの分析では、保護者の教育への期待が高いほど中学生の睡眠が短いという関連があり、その一部に通塾が関わっていました。一方、小学生では同じ関連は見られませんでした。親の期待、通塾、睡眠を別々の問題にせず、家庭の予定の組み方として見直す視点が得られます。
この結果を家庭で生かすなら、「頑張れるか」だけで予定を増やさず、帰宅後に何が残るかを親子で確かめます。子どもが続けたい学びと、眠るために空けたい時間を同じ紙に置くと話し合いやすくなります。送迎や食事の準備を担う大人の都合も書き添え、子どもだけに調整を任せない形にします。負担が集中する曜日が見えれば、終了時刻や通う曜日を相談するための具体的な材料になります。
実測で見ると、起床と就寝には違う条件が関わる
眠る時間は、夜に寝始める側と、朝に起きる側から決まります。通学に時間がかかる生徒は、学校へ間に合うよう朝の準備や出発を早める必要があります。夜の予定だけを動かしても、翌朝の出発がさらに早ければ、眠る時間の余裕は広がりにくくなります。このため、帰宅の遅さと朝の早さを分けて見る研究が参考になります。
Charoenthammanonら(2025)は、シンガポールの13〜18歳の133人を対象に、登校日前夜の睡眠を観察しました。睡眠の測定には、体の動きから眠りと覚醒を推定するアクチグラフを使っています。朝の準備と通学が長いこと、学校の始業が早いことは、早い起床と関連していました。一方、短い睡眠と関連した要因には、年齢の高さ、夜型の傾向、就寝間際の学習、早い始業時刻が挙がり、通学時間はそこに含まれていませんでした。
同じCharoenthammanonら(2025)の観察では、宿題や勉強が終わることを主な就寝理由とした場合、疲れや眠気を理由に寝た場合より睡眠が45分短いという結果でした。ここで比べているのは、帰りの移動手段ではなく、寝るきっかけです。帰宅後の終わり方を記録すると、移動が終わった後にも就寝を遅らせる予定があるかを捉えやすくなります。
研究ごとに見ている部分を並べると、家庭で確認する場所も明確になります。長い通学との関連、朝の起床との関連、就寝のきっかけとの関連は、それぞれ異なる問いへの答えです。予定表には帰宅時刻だけでなく、その後に残る用事と翌朝の起床も書きます。
| 通学と睡眠をめぐる見方 | 就寝・起床について得られた結果 | 生徒の条件と調べ方 |
|---|---|---|
| 移動が長いと眠りが短くなる | 長い通学と短い睡眠に関連があった | Setaら(2025)、日本の高校生を追跡 |
| 通学は朝の生活を圧迫する | 長い通学と早い起床が関連した | Charoenthammanonら(2025)、シンガポールの中高生相当、機器を用いた観察 |
| 家に早く着けば早寝につながる | 就寝直前の行動も睡眠と関連した | Charoenthammanonら(2025)、寝る理由と睡眠を比較 |
成績との関連は小さいため、眠気も判断材料にする
通う先を選ぶときには、「移動を短くして長く寝れば成績も上がるのか」という疑問が出てきます。睡眠と成績を扱う研究をまとめると、両者の関連は小さいという結果です。睡眠時間だけで通い方の学習面の良し悪しを決めるよりも、朝の起きやすさや日中の眠気を一緒に見るほうが、家庭での判断に役立ちます。
Dewaldら(2010)は、子どもと青年の研究をまとめたメタ分析を行いました。メタ分析は、複数の研究結果をまとめて計算し直す方法です。睡眠時間を扱う17研究、15,199人の集計では、成績との相関係数は0.069でした。相関係数は、ある値が高い人ほど別の値も高い、または低いという結び付きの強さと向きを表す数で、この結果は小さい関連を示します。
Dewaldら(2010)では、成績との関連は睡眠の質で0.096、眠気で-0.133でした。眠気の値が負なのは、眠気が強いほど成績が低い向きの関連を表します。睡眠時間、質、眠気のうち、眠気が最も強く結び付いていましたが、研究全体として関連は控えめでした。何時から何時まで寝たかに加えて、本人が昼間をどう過ごせているかを聞く理由になります。
米国の中等教育の生徒を扱ったMusshafenら(2021)の系統的レビューとメタ分析でも、関連はごく小さいという結果でした。系統的レビューは、あらかじめ決めた条件で研究を集めて検討する方法です。条件に合った14研究のうち11研究を統合し、睡眠時間と成績の相関係数は0.03、95%信頼区間は-0.027〜0.087で、統計的に明確な関連は認められませんでした。成績だけを見て睡眠の不足を我慢させるより、授業中に起きていられるか、朝の支度がつらくないかも家庭の評価項目に入れます。
短く帰る工夫は、急がず眠れる予定と組み合わせる
研究の結果を通い方に生かす際は、単に移動を短くすることと、本人の負担を軽くすることを分けて考えます。帰宅が早い経路でも、乗り継ぎに追われて落ち着かないなら、日々続ける条件として再検討します。逆に、帰宅の見通しが立ち、食事や翌日の準備を含めても寝る予定を守れるなら、その流れを記録に残します。比較する単位を家に着く瞬間で止めず、翌朝まで延ばすことが大切です。
時間を縮めるために道路や階段を急ぐような計画は避けます。眠気が強い状態での単独移動や、間に合わなければ走ることを前提にした乗り継ぎは、家庭の安全面の確認事項です。早く帰れたかだけを成果にすると、本人が焦りや疲れを言い出しにくくなります。転びそうになった、乗り過ごしそうだった、待つのがつらかったという出来事も、移動の負担として聞き取ります。
遅い時間帯の通塾が向かないのは、帰宅後の生活を整えても就寝が後ろへずれ、翌朝の起床や学校生活がつらい状態になる子どもです。移動の途中で強い眠気が出る場合も、本人の慣れに任せず、付き添いや予定の変更を含めて考えます。寝る時間を確保しても強い眠気や睡眠の困りごとが続く場合は、記録を持って医療機関へ相談します。
家庭の工夫としては、通う曜日、授業が終わる時刻、帰宅後の用事の順序を候補に挙げます。親が帰宅前に用意できることと、本人が家に着いてから行うことを分けると、夜に残る作業が見えます。変更を試したときには、帰宅が早まったか、寝床に入る時刻も早まったか、翌朝が楽だったかを順に確認します。本人が続けたい内容を聞きながら、眠る余地を残せる予定へ調整していきます。
田無で学習塾へ通うなら、帰宅から翌朝までを記録する
家庭で試すなら、まず2週間を記録の期間にします。これは家庭で曜日ごとの予定を見渡すための提案で、普段の通塾日と通わない日を並べる作業です。紙の予定表でもスマートフォンのメモでもよく、子どもが負担なく続けられる形を選びます。記録をつける目的は、寝るのが遅いことを責めることではなく、どこを動かせば夜に余裕が生まれるかを探すことです。
まずは、帰路についた時刻と家に着いた時刻を残します。帰り道では、待ち時間が長かった、乗り継ぎが慌ただしかったなど、いつもと違う出来事を短く添えます。交通機関の案内上の時間と、家まで戻る実際の流れを分けると、家庭が調整したい部分が見えやすくなります。
- 帰路の確認: 塾を出る時刻、家に着く時刻、待ち時間や移動中の眠気を記録します。
- 夜の確認: 食事や入浴など残っていた用事と、寝床に入る時刻を並べます。
- 朝の確認: 起きた時刻と、起きづらさ、日中の眠気を本人の言葉で残します。
- 比較の確認: 通塾日かどうか、翌朝に学校があるか、普段と違う予定があったかを添えます。
見返すときは、翌朝の登校条件が似ている日を並べます。帰宅が遅い日に就床も遅くなっているなら、終了時刻や帰りの流れが見直しの候補です。帰宅時刻は変わらず就床だけが遅くなる日には、家で残った用事の順序を確かめます。就床が同じなのに朝がつらい日には、起床の早さや本人の眠りの感覚を聞きます。
変更は、比べたい条件を絞って試します。曜日と経路と帰宅後の流れを一緒に変えるより、何を変えたかが記録から追える形にします。記録を前に、本人が保ちたい学びと、家庭が動かせる予定を照らし合わせます。帰りの見通しと眠る余裕を両立させるために、次の通塾ではどの条件を選びますか。
よくある質問
通学が長い子どもには、近い塾を選ぶべきですか
朝の通学が長い場合は、塾から戻った後にどれほど用事が残るかを先に確かめます。近さに加え、授業が終わる時刻、帰宅から就床までの流れ、翌朝の起床を並べると比較しやすくなります。候補を検討する段階で、子ども自身にも無理なく帰れそうかを聞きます。学びたい内容と睡眠を保てる予定を両方満たすかという視点で、通う曜日も含めて選びます。
帰宅が早いのに寝る時刻が変わらないときは、何を見ますか
家に着いた後、食事、入浴、明日の準備などがどの順番で進んでいるかを見ます。帰宅時刻だけを記録していた場合は、寝床に入った時刻と、直前まで何をしていたかも添えます。予定のどこかで待っている時間があるなら、家族が先に準備できることを探します。早く帰る工夫が眠る余裕につながっているかを、翌朝の起きやすさと合わせて確かめます。
記録は保護者と子どものどちらがつけるとよいですか
帰宅時刻など外から見えることは保護者が、眠気や寝つきの感覚は子どもが記す形にすると分担しやすくなります。親が見た様子と本人の感じ方が違っても、両方をそのまま残します。空欄を責めず、続けやすい項目に絞ることも大切です。見直すときには子どもの希望を先に聞き、通う時間帯や帰宅後の予定をどう調整するかを一緒に考えます。
この記事の限界
測定の面では、寝床にいた時間、本人が申告した睡眠、体の動きから推定した睡眠が混在しており、通学時間と眠りの関係を比べる際には、それぞれが捉えたものの違いが残ります。学校の始業時刻や家庭の予定、夜型の傾向なども重なる観察研究が中心で、移動だけを短くした場合の睡眠の変化は確定していません。
取り上げた通学研究は朝の移動が中心で、日本の高校生の結果を含む一方、田無から武蔵境方面へ通う中高生の夜の塾帰りと就寝時刻を直接調べた研究は見つかりませんでした。家庭の記録では、バス停で待った日も含めて帰宅から就寝、翌朝の起床をつなぎ、眠る時間を圧迫している予定を探します。
参考文献
- Pereira EF, et al. Increased commuting to school time reduces sleep duration in adolescents. Chronobiology International. 2014;31(1):87-94.
- Seta D, et al. Relationship between commuting to school and sleep disturbance in Japanese adolescents: a 2-year cohort study. Sleep Medicine. 2025;136:106846.
- Yamashita J, et al. Parental educational aspirations and children’s sleep: a mediation analysis. Scientific Reports. 2025;15(1):41862.
- Yoo C. Sleep Duration Change and its Associated Factors During Adolescence: a 6 Year Longitudinal Study. Child Indicators Research. 2020;13(2):573-590.
- Charoenthammanon RS, et al. Factors associated with late bedtimes, early wake-up times, and short sleep in adolescents on school nights. Sleep Advances. 2025;6(4):zpaf018.
- Musshafen LA, et al. Associations between sleep and academic performance in US adolescents: a systematic review and meta-analysis. Sleep Medicine. 2021;83:71-82.
- Dewald JF, et al. The influence of sleep quality, sleep duration and sleepiness on school performance in children and adolescents: A meta-analytic review. Sleep Medicine Reviews. 2010;14(3):179-189.
改札を出てから扉に着くまでの数分が、続くかどうかを決める。
- 向く人: 授業や練習のあと、駅までの帰り道をできるだけ短くしたい人
- 向く人: 通勤や通学の途中の駅で、乗り換えを増やさずに通いたい人
- 向かない人: 駅から離れた場所へ、車の送り迎えで通うことを前提にしたい人
- 向かない人: 移動をせず、自宅だけで学びや運動を済ませたい人
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通学が長い子どもには、近い塾を選ぶべきですか
朝の通学が長い場合は、塾から戻った後にどれほど用事が残るかを先に確かめます。近さに加え、授業が終わる時刻、帰宅から就床までの流れ、翌朝の起床を並べると比較しやすくなります。候補を検討する段階で、子ども自身にも無理なく帰れそうかを聞きます。学びたい内容と睡眠を保てる予定を両方満たすかという視点で、通う曜日も含めて選びます。
帰宅が早いのに寝る時刻が変わらないときは、何を見ますか
家に着いた後、食事、入浴、明日の準備などがどの順番で進んでいるかを見ます。帰宅時刻だけを記録していた場合は、寝床に入った時刻と、直前まで何をしていたかも添えます。予定のどこかで待っている時間があるなら、家族が先に準備できることを探します。早く帰る工夫が眠る余裕につながっているかを、翌朝の起きやすさと合わせて確かめます。
記録は保護者と子どものどちらがつけるとよいですか
帰宅時刻など外から見えることは保護者が、眠気や寝つきの感覚は子どもが記す形にすると分担しやすくなります。親が見た様子と本人の感じ方が違っても、両方をそのまま残します。空欄を責めず、続けやすい項目に絞ることも大切です。見直すときには子どもの希望を先に聞き、通う時間帯や帰宅後の予定をどう調整するかを一緒に考えます。