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公開:2026年9月11日/最終更新:2026年9月11日

駅の人混みや電車の音がつらい子の通塾|感覚の過敏さと不安の研究

16%の親が、子どもは少なくとも4種類の触覚や音の刺激を嫌がると答えています。Ben-Sasson ら(2009)が、乳児期から追っていた7〜11歳の925人を調べた結果です。感覚の過敏さとは、音や肌に触れるものなどの刺激を強く不快に感じることを指します。この数字は、駅の音が苦手な子だけを数えた割合ではなく、日常のさまざまな刺激について親が答えたものです。

  • 音や触覚への過敏さは、特定の診断がある子だけに見られるものではありません。
  • 過敏さの強い子では、不安や行動上の困りごとが多いという関連が報告されています。
  • 幼児期からの追跡では、その後の不安との関連もありましたが、過敏さから不安への因果関係が確定したわけではありません。
  • 耳を覆う道具の研究では、目標の達成度や注意に変化があっても、騒音の中の聞き取りには改善が見られない結果がありました。

駅の人混みや電車の音がつらい子の通塾|感覚の過敏さと不安の研究

16%の親が、子どもは少なくとも4種類の触覚や音の刺激を嫌がると答えています。Ben-Sasson ら(2009)が、乳児期から追っていた7〜11歳の925人を調べた結果です。感覚の過敏さとは、音や肌に触れるものなどの刺激を強く不快に感じることを指します。この数字は、駅の音が苦手な子だけを数えた割合ではなく、日常のさまざまな刺激について親が答えたものです。

乗換通路で足が止まる、電車の音に耳を押さえる、すれ違う人に触れられて顔をこわばらせるといった様子は、通う前の負担を考えるきっかけになります。授業には参加したい子でも、そこへ行くまでの道がつらいことはあるでしょう。人混みや音のつらさは、子どもの不安とどう結びつき、通塾の仕方を考える際に何を手掛かりにすればよいのでしょうか。

感覚の過敏さは不安や生活上の困りごとと関連しますが、それだけで診断名を決めず、通う途中の負担として扱うことが大切です。 親が平気な音でも、子どもにとってのつらさまで同じとは限りません。研究で測った過敏さ、不安、道具を使ったときの変化をたどり、通塾の場面に持ち帰れる考え方を探ります。

要点

  • 音や触覚への過敏さは、特定の診断がある子だけに見られるものではありません。
  • 過敏さの強い子では、不安や行動上の困りごとが多いという関連が報告されています。
  • 幼児期からの追跡では、その後の不安との関連もありましたが、過敏さから不安への因果関係が確定したわけではありません。
  • 耳を覆う道具の研究では、目標の達成度や注意に変化があっても、騒音の中の聞き取りには改善が見られない結果がありました。

苦手な刺激があることと、診断がつくことは別です

「音に敏感なのだから、何かの診断がつくはずだ」と考えると、日々の困りごとより病名を探すことが先になりがちです。逆に、診断を受けていないから配慮はいらない、と考えるのも早計です。研究が数えているのは、刺激への反応の強さと、一定の基準に照らした精神医学的な状態であり、この両者は同じ範囲を指していません。

Carter ら(2011)は、乳児期から追っていた集団のうち、7〜10歳の子ども338人と親を詳しく調べました。過敏さが強かった子は21.2%で、そのうち精神医学の診断基準を満たしたのは24.3%でした。著者らは、ほかの精神医学的な状態がなくても強い過敏さは生じ、家庭生活の支障とも結びつくと結論づけています。過敏さの点数と診断基準を同一視しないために役立つ結果です。

Ben-Sasson ら(2009)でも、嫌がる子の多い刺激と、嫌がる子が比較的少ない刺激がありました。したがって、音が苦手という言葉だけで、すべての音が同じようにつらいと受け取る必要はありません。たとえば通路で響く放送と、背後から急に聞こえる物音では、本人が困る内容も別でしょう。何を嫌がるかを細かく表せるほうが、「敏感な子」というひと言より通う場面を考えやすくなります。

家庭で整理するときは、つらい音や場所を本人に3つ挙げてもらい、避けられるものと避けにくいものに分けてみます。「駅全部」から先の説明が難しければ、本人が使った言葉をそのまま残して構いません。これは診断のための質問票ではなく、家族が困りごとの内容を共有するための作業です。うまく説明することを、つらさを認める条件にしないようにします。

不安との関連は、その子の将来を決める予告ではありません

刺激に強く反応している子を見ると、「このまま不安が強くなるのでは」と心配になるかもしれません。研究では、過敏さと不安が同時に見られる関係だけでなく、幼い頃の過敏さと後の不安との関係も調べられています。ただし、集団の中で関連があるという結果は、目の前の子の将来を言い当てる予告とは違います。

Carpenter ら(2019)は、地域の子ども917人を2〜5歳で評価し、そのうち191人を6歳で再び評価しました。幼児期に感覚の過敏さがあった子の43%には、その時点で生活に支障を伴う不安障害もありました。また、幼児期の過敏さの症状は、6歳時点の不安の症状を予測していました。これは、同じ子どもを後から再び調べる追跡研究の結果で、通う環境を変える試験ではありません。

ここでいう「予測」は、後の不安と統計的な結びつきがあったという意味です。音のつらさを減らせば将来の不安が防げる、という効果を測った言葉ではありません。もともとの不安の強さや日常生活の事情などが、刺激への反応と重なっている可能性もあります。家庭では、将来の診断を先回りして心配するより、今どの活動が妨げられているかを言葉にするほうが扱いやすいでしょう。

Ben-Sasson ら(2009)では、過敏さが強い子の親は、そうでない子の親より、不安など内面の問題や行動・感情の調整の問題を多く報告していました。人と関わる適応的な行動も低めに報告されており、研究が捉えたのは耳だけの反応にとどまりません。子どもが通塾を楽しみにしている気持ちと、移動で困っている事実は、両方あるものとして受け止められます。勉強への意欲を確かめるために、人混みに耐えられるかを試す必要はありません。

耳を覆う道具は、何が変わったかで読む必要があります

耳当てやヘッドホンは、苦手な音を和らげる工夫として思い浮かびやすい道具です。しかし、使った後に落ち着いたこと、話を聞き取れたこと、課題に注意を向けられたことは、それぞれ異なる変化です。道具の名前だけを見て効果をひとまとめにせず、研究で何を評価したかを押さえると、期待する役割もはっきりします。

Ikuta ら(2016)は、自閉スペクトラム症のある4〜16歳の21人で、何も着けない2週間の後、耳当てとノイズキャンセリングのヘッドホンをそれぞれ2週間、無作為の順で使う試験を行いました。無作為とは、使う順番を偶然に任せる方法です。ノイズキャンセリングは周囲の騒音を減らす機能を指し、耳当ては耳を覆う道具です。耳当ての期間には、事前に設定した目標にどれだけ近づいたかを表す評価が、何も着けない期間より高くなりました。

同じIkuta ら(2016)の試験で、ノイズキャンセリングのヘッドホンの期間と何も着けない期間の差は、統計的にははっきりしませんでした。耳当てとヘッドホンの間にも明確な差はありませんでした。「耳当てでは差があり、ヘッドホンでは差がなかった」という組み合わせだけから、耳当てのほうが優れていると順位をつけるのは適切ではありません。

Zanin ら(2024)は、自閉スペクトラム症と診断された6〜13歳の13人で、騒音を減らすイヤホン型の道具を調べました。定型発達の同年代の子に比べて低かった騒音中の言葉の聞き取りは、使用しても変わりませんでした。一方で、使用時の音への注意は改善し、2週間使った後には教室での聞く行動や意思疎通にも改善が報告されました。結果を整理すると、次のようになります。

音の苦手さについての見方 過敏さと道具の研究結果 子どもの対象と評価方法
耳を覆えば日常の困りごとは一様に軽くなる Ikuta ら(2016)では耳当ての期間に目標達成の評価が上昇し、ヘッドホンの期間の差は明確ではなかった 自閉スペクトラム症の子が道具を使う小規模な試験
注意が向けば、騒音の中の言葉も聞き取れる Zanin ら(2024)では注意は改善したが、騒音中の言葉の聞き取りは変わらなかった 自閉スペクトラム症の子がイヤホン型の道具を使う研究

道具を使う場所の安全と、相談する理由を分けます

道具で不快な音が軽くなることを期待しても、駅まで歩く間には周囲の音を捉える必要があります。耳をふさいで歩くと、電車の接近や自転車などの音が聞こえにくくなる危険があります。装着して本人が落ち着いて見えるかだけでなく、その場所で何を聞く必要があるかも、使い方を考える材料になります。

耳に物が触れること自体を嫌がる子には、耳を覆う対策が別の負担になる場合もあります。音を嫌がるのだから耳当てを使うはずだ、と装着を押しつけると、音と接触の両方に耐える場面になってしまいます。道具を嫌がって外す反応も、その子に合う使い方を考えるうえで意味があります。つらい音を我慢して通ることと、道具を我慢して着けることを、努力の優劣に置き換えないようにします。

Ikuta ら(2016)とZanin ら(2024)の対象はいずれも自閉スペクトラム症の子で、一般の子に同じ効果があるとそのまま当てはめることはできません。商品を比べた順位表としてではなく、特定の対象で、特定の行動に変化があった研究として読むのが適切です。購入を急ぐ前に、必要なのが音のつらさへの対応なのか、話の聞き取りへの対応なのかを整理すると、期待が広がりすぎるのを防げます。

不安が強く通うことが難しい、生活のほかの場面にも支障が続くときは、小児科や学校の相談窓口に状況を伝える目安になります。その際は「音に敏感です」だけでなく、出発前、移動中、到着後のどこで生活が止まるのかを伝えると、困りごとの輪郭を共有しやすくなります。特定の診断名を予想してから相談する必要はなく、家族が対応に迷っていることも話題にできます。道具を使いこなせるかと、相談するほど困っているかは、別々に考えてよい事柄です。

通う途中の負担を、道の区間と時刻に戻して考えます

教室に着いた時点では静かに座れていても、その前にどんな移動をしてきたかは見えにくいものです。到着できたという事実だけで道中の負担まで小さかったと判断すると、通い方を変える余地を逃してしまいます。通塾を続けるかどうかという大きな判断の前に、移動のどの部分で負担が膨らむのかを扱う方法があります。

親が一度いっしょに歩き、本人の表情や足どりが変わる場所を見てみます。人の流れに入ったところで歩く速さが変わるのか、音が響いたところで立ち止まるのか、見えた行動を場所に沿って残します。「怖がった」「機嫌が悪くなった」と気持ちを推測するだけの書き方より、「口数が減った」「耳に手を当てた」という記述のほうが、後から状況を思い出しやすいでしょう。同行する間ずっと反応を尋ね続けるより、歩くことに使う余裕も残します。

時刻を調整する余地があるなら、混む時刻と空く時刻で塾に着いたときの疲れ方を本人に聞きます。そこで比べるのは、授業の成績や我慢した長さではなく、移動を終えた時点の疲れ方です。同じ道でも出発前から疲れていた日などは、その事情も一緒に受け止めます。これは研究で効果の大きさが示された対策を再現する作業ではなく、その家庭で選べる時間帯を考えるための方法です。

教室側に移動の負担を伝える場合は、授業に入るまでの過ごし方も話題にできます。着席を急がせる必要があるのか、荷物を置いて落ち着く間を取れるのかなど、通う先で調整する内容は運営によって異なります。環境を変える相談では、苦手さを詳しく説明することに加え、本人が授業で取り組みたいことを添えると、移動と学習をつなげて考えやすくなります。

さらに、つらいと言った場所から一つだけ選び、そこを通らずに済む別の出口や一本裏の道を本人と地図で探します。新しい道の明るさや車との交差にも目を向け、次の通塾の日に親子で一度だけ通ってみます。地図には、本人がつらいと伝えた区間を避けて、同じ目的地へ続く別の線が加わります。

よくある質問

きょうだいが平気な音でも、対応を変えてよいのでしょうか

きょうだいの反応を、つらさを認めるための基準にしなくてよいでしょう。Ben-Sasson ら(2009)では、嫌がられやすい刺激とそうでない刺激があり、刺激への反応には違いが見られました。家族が同じ予定で動く場合も、全員が同じ程度に苦手だと想定する必要はありません。きょうだいを説得役にしたり、平気なほうを模範として示したりせず、各自の負担として扱う考え方が合います。

中高生になれば自然に気にならなくなりますか

Carpenter ら(2019)が追跡して評価した不安は6歳時点のもので、中高生になるまでの変化を示した結果ではありません。年齢だけを理由に我慢を求めるより、その年齢で増える移動の予定や、ひとりで行動する場面に合わせて配慮を考えるほうが実際的です。成長して説明の仕方が変わることと、刺激がつらくなくなることは別に扱えます。本人が自分の予定を組む場面でも、苦手な状況を予定に織り込める余地を残します。

音の苦手さと、寝つきやいら立ちも関係しますか

Carpenter ら(2019)では、幼児期の過敏さと学齢期のいら立ち・睡眠の問題との関連を、不安の症状が仲立ちする関係が報告されました。音への反応だけでなく、生活の様子も研究の対象になっているということです。家庭で寝つきやいら立ちが気になる場合、それらを性格や態度だけの話にしない視点になります。通塾の場面とは別に起きている困りごとも、生活の中に位置づけて扱います。

この記事の限界

測定の中心は、親が質問票などで答えた子どもの反応や生活上の困りごとであり、本人が感じた音の強さや通塾中の疲れを直接測ったものではありません。耳を覆う道具の試験も小規模で、目標への達成度、注意、聞き取りという異なる結果を扱っており、通塾全体の負担の変化とは測る範囲が異なります。

ここで取り上げた研究には、東京の駅や電車の音、人混みそのものと子どもの不安を調べたものは見つかりませんでした。家庭で道や時刻を考える際の出発点になったのは、駅での騒音の測定値ではなく、主として親の答えを通して捉えた日常の感覚への反応です。

参考文献

  1. Ben-Sasson A, et al. Sensory over-responsivity in elementary school: prevalence and social-emotional correlates. J Abnorm Child Psychol. 2009;37(5):705-716.
  2. Carter AS, et al. Sensory over-responsivity, psychopathology, and family impairment in school-aged children. J Am Acad Child Adolesc Psychiatry. 2011;50(12):1210-1219.
  3. Carpenter KLH, et al. Sensory Over-Responsivity: An Early Risk Factor for Anxiety and Behavioral Challenges in Young Children. J Abnorm Child Psychol. 2019;47(6):1075-1088.
  4. Ikuta N, et al. Effectiveness of Earmuffs and Noise-cancelling Headphones for Coping with Hyper-reactivity to Auditory Stimuli in Children with Autism Spectrum Disorder: A Preliminary Study. Hong Kong J Occup Ther. 2016;28(1):24-32.
  5. Zanin J, et al. Effectiveness of Noise Cancelling Earbuds in Reducing Hearing and Auditory Attention Deficits in Children with Autism. J Clin Med. 2024;13(16):4786.

改札を出てから扉に着くまでの数分が、続くかどうかを決める。

  • 向く人: 授業や練習のあと、駅までの帰り道をできるだけ短くしたい人
  • 向く人: 通勤や通学の途中の駅で、乗り換えを増やさずに通いたい人
  • 向かない人: 駅から離れた場所へ、車の送り迎えで通うことを前提にしたい人
  • 向かない人: 移動をせず、自宅だけで学びや運動を済ませたい人

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きょうだいが平気な音でも、対応を変えてよいのでしょうか

きょうだいの反応を、つらさを認めるための基準にしなくてよいでしょう。Ben-Sasson ら(2009)では、嫌がられやすい刺激とそうでない刺激があり、刺激への反応には違いが見られました。家族が同じ予定で動く場合も、全員が同じ程度に苦手だと想定する必要はありません。きょうだいを説得役にしたり、平気なほうを模範として示したりせず、各自の負担として扱う考え方が合います。

中高生になれば自然に気にならなくなりますか

Carpenter ら(2019)が追跡して評価した不安は6歳時点のもので、中高生になるまでの変化を示した結果ではありません。年齢だけを理由に我慢を求めるより、その年齢で増える移動の予定や、ひとりで行動する場面に合わせて配慮を考えるほうが実際的です。成長して説明の仕方が変わることと、刺激がつらくなくなることは別に扱えます。本人が自分の予定を組む場面でも、苦手な状況を予定に織り込める余地を残します。

音の苦手さと、寝つきやいら立ちも関係しますか

Carpenter ら(2019)では、幼児期の過敏さと学齢期のいら立ち・睡眠の問題との関連を、不安の症状が仲立ちする関係が報告されました。音への反応だけでなく、生活の様子も研究の対象になっているということです。家庭で寝つきやいら立ちが気になる場合、それらを性格や態度だけの話にしない視点になります。通塾の場面とは別に起きている困りごとも、生活の中に位置づけて扱います。