- ヨガ直後に、不要な反応を抑える課題や、情報を一時的に保つ課題が良くなった実験があります。
- 続けた場合と、その場で行った場合では、検査の時期も参加者も違います。
- 記憶への効果が小さい結果や、短期の練習で改善がなかった研究もあります。
- 研究で測った検査成績と、仕事の速さ、すっきりした感覚を分けて考えます。
- 帰りの読書や翌朝の取りかかり方を比べる際は、内容の難しさや仕事量も一緒に見ます。
仕事帰りのヨガで頭の働きは変わるか|ヨガと注意・記憶の研究
仕事帰り、モノレールの駅でかばんの中の読みかけの本に手を伸ばしても、昼間の打ち合わせが頭に残り、同じ行を読み返してしまう夜があります。体を動かしてから帰れば、目の前の文章にも気持ちを向けやすくなるかもしれません。ヨガで感じるすっきりした気分は、注意を向ける力や覚える力の変化にもつながるのでしょうか。ヨガの後に注意や記憶の検査成績が良くなった試験はありますが、翌日の仕事がはかどるかは別に確かめる必要があります。
「頭が働く」という感覚の中には、気分の軽さ、反応の速さ、覚えた内容の正確さなどが混ざっています。本を気持ちよく読めたことと、内容を覚えていたことも同じではありません。研究を読むときは、どの働きを、何と比べ、運動からどのくらい後に測ったかを分けると、期待する範囲が見えてきます。帰りの時間に試す場合も、難しい課題を増やすより、いつもの読書や仕事の段取りに目を向けるほうが、負担を増やさず自分の様子を捉えやすくなります。
要点
- ヨガ直後に、不要な反応を抑える課題や、情報を一時的に保つ課題が良くなった実験があります。
- 続けた場合と、その場で行った場合では、検査の時期も参加者も違います。
- 記憶への効果が小さい結果や、短期の練習で改善がなかった研究もあります。
- 研究で測った検査成績と、仕事の速さ、すっきりした感覚を分けて考えます。
- 帰りの読書や翌朝の取りかかり方を比べる際は、内容の難しさや仕事量も一緒に見ます。
「頭がすっきり」を検査で測ると何になるか
ヨガの研究で扱う認知機能とは、情報に注意を向けたり、覚えたり、判断したりする頭の働きです。そのうち実行機能は、目的に合わせて反応を抑え、考え方や行動を切り替える働きを指します。作業記憶は、使っている情報を一時的に頭に置いておく働きです。たとえば、依頼の内容を覚えたまま必要な資料を選ぶ場面を思い浮かべると、仕事との接点を理解しやすくなります。
ただ、研究の課題は日常の仕事を丸ごと再現したものではありません。決まった合図に反応する速さや、示された情報に正しく答える割合など、特定の働きに絞って測ります。メールを読みながら急な依頼に対応する仕事では、知識、相手の説明、締め切りも絡みます。検査の改善を読む際には、まず測定の名前を確かめ、その結果が自分の困っている場面のどこに近いかを考えるとよいでしょう。
「速く答えた」と「正しく答えた」も分けて見る必要があります。急いで読み終えたものの、内容を取り違えていたなら、読書がうまく進んだとは評価しにくいからです。反対に、読み進む速さは同じでも、途中で別のことを考える場面が少なければ、本人にとっては変化を感じられます。自分の状態を言葉にするときは、「頭が良くなった」よりも、「話の筋を追えた」「読み直しが少なかった」と具体的にするほうが、後で比べやすくなります。
気分の変化にも、そのまま名前をつけておきます。落ち着いた、楽しかった、疲れが残ったという感想と、何を思い出せたかを別々に残せば、両方が一緒に変わる場合も、違う動きをする場合も拾えます。気持ちよく過ごせた夜に、さらに仕事の成果まで求める必要はありません。ヨガをする目的と、確かめたい頭の働きがずれていないかを見るところから始められます。
ヨガ直後の課題が良かった実験を読む
Gothe ら(2013)は、女子大学生の年代の女性30人を対象に、ヨガ、有酸素運動、基準となる測定の条件を比べました。同じ参加者がそれぞれの条件を経験し、経験する順番の影響が偏らないように組み合わせた実験です。ヨガの後は、有酸素運動の後と基準の条件よりも、抑制と作業記憶の課題で反応が速く、正確さも高い結果でした。抑制とは、出そうになった不要な反応を止めることで、目の前の課題に合う答えを選ぶ際に関わります。
この実験のよさは、ヨガをした人と普段から運動しない人を、別々に集めて比べただけではない点です。同じ人が条件を変えて取り組むため、もともとの課題の得意さが比較に入り込みにくくなります。一方、ヨガを終えて検査を始めるまでの間隔も結果を読むうえで重要です。Gothe ら(2013)自身も、運動終了から認知の測定までに経過した時間に注目しています。
また、Gothe ら(2013)では、有酸素運動の後と基準の条件との間に明確な成績差がありませんでした。これは、この実験の条件での比較結果です。有酸素運動とヨガのどちらが生活全体で優れているかを競う材料にするより、「どの運動の、どの時点の検査か」を読むほうが実用的です。仕事の前に行う運動を選ぶ話と、仕事を終えた後の過ごし方を選ぶ話でも、求めるものが違います。
帰りの電車で座れて余裕があるなら、その日に行った仕事の段取りを三つ思い出してみる方法があります。作業の名前だけでなく、何から始め、何を確かめ、どこで終えたかを頭の中でたどります。思い出した内容は、後で手帳などと照らし合わせると、単に思い出せた気がする状態と区別しやすくなります。周囲への注意が必要な移動中は課題を続けず、落ち着いて振り返れる場面に限ります。
続けたヨガとその場の変化は分けて見る
Gothe ら(2014)は、地域で暮らす高齢者118人、平均年齢62.0歳を、ハタヨガの組と、ストレッチや筋力を高める運動の組に分けました。分け方は無作為化と呼ばれるもので、参加者の希望や研究者の選び方による偏りを避けるため、偶然に任せて割り付けます。8週の練習後、ヨガの組は比較の組より、作業記憶や考え方の切り替えの検査で良い成績を示しました。何もせずに待つ人との比較ではなく、別の運動に取り組んだ人との比較である点が、この試験を読む際の特徴です。
Gothe ら(2015)は、複数の研究結果をまとめて効果の大きさを見るメタ分析を行いました。対象になったのは、無作為化試験15本と、単回のヨガへの反応を調べた研究7本です。無作為化試験全体の効果量は0.33で、著者らは中程度の改善と捉えています。効果量は、異なる検査の差を共通の尺度に置き直した値で、記憶できる量や仕事の速さの割合を表す数字ではありません。
Gothe ら(2015)では、単回の研究をまとめた効果量は0.56でした。続けた場合の分析より大きな値ですが、同じ参加者を同じ検査で比べた数字ではありません。「その場だけ行うほうが、続けるよりよい」という選び方には結びつけず、測る時点で結果の見え方が違うことに注目します。研究ごとの期間や検査を整理すると、次のように読み分けられます。
| ヨガと頭の働きへの期待 | 注意・記憶の検査結果 | 参加者と比較した運動 |
|---|---|---|
| ヨガをすると直後に頭が働く | 抑制と作業記憶の課題の反応速度と正確さが良かった | Gothe ら(2013):女子大学生の年代の女性で、ヨガ・有酸素運動・基準の条件を比較 |
| 続ければ切り替えがうまくなる | 作業記憶と考え方の切り替えの検査が改善した | Gothe ら(2014):高齢者のヨガとストレッチ・筋力を高める運動を比較 |
| 記憶も注意も同じくらい良くなる | 続ける試験では記憶の効果は小さかった | Gothe ら(2015):認知機能を扱った試験を統合 |
| 短期でも効果がそろう | 改善がなかった短期介入も含まれた | Luu ら(2016):ハタヨガと実行機能の実験研究を検討 |
記憶への小さい効果と、改善しなかった研究
Gothe ら(2015)の無作為化試験の分析では、注意と情報を処理する速さの効果量が0.29、実行機能が0.27、記憶が0.18でした。記憶の結果のp値は0.051で、明確な改善と扱うには慎重さが必要です。p値は、差がないと仮定した場合に、得られた結果ほど極端な結果が出る確率を表します。全体の成績が良い方向でも、記憶だけを見ると効果が小さいという読み分けが大切です。
Luu ら(2016)は、ハタヨガと実行機能を調べた実験研究11本を集め、対象者ごとに結果を検討しました。健康な成人の研究3本のうち、単回のヨガを扱う2本は改善を示唆しましたが、短期の介入を扱う1本では改善がありませんでした。著者らは可能性を認めつつ、質のよい研究をさらに増やす必要があると結論づけています。効いた結果だけを取り出すと、このような違いが見えなくなります。
研究の本数と、独立した確かめ方の多さにも目を向けます。ここで中心に挙げたGothe ら(2013)、Gothe ら(2014)、Gothe ら(2015)は第一著者が共通しており、個別の実験と研究をまとめた分析が並んでいます。それぞれの役割は違いますが、別々の研究者が同じ結果を繰り返し確かめたものとして数えるのは適切ではありません。著者名が共通することを知っておくと、文献の多さだけから確信を強めるのを避けられます。
Gothe ら(2015)も、各研究の人数、対象者の特徴、ヨガの練習量、検査の種類の違いを課題に挙げています。たとえば、情報を保つ検査と、注意を切り替える検査では、問われる働きが異なります。自分の困りごとが資料の読み直しなのに、別の検査の良い数字だけを見ても、期待の置き場所がずれます。仕事で使う場面に近い評価を探すことが、研究の数字を生活へ持ち込む前の作業になります。
難しいポーズより、無理なく終えられる内容を選ぶ
認知機能の改善を期待すると、きつい内容ほど頭にも効くのではないかと考えがちです。しかし、今回の研究は、難しいポーズを達成した程度と頭の働きの改善を対応させたものではありません。クラスを選ぶ際は、呼吸がゆっくりになる場面や休める場面があるかを見て、終えた後の疲れ方を確かめます。これは自分に合う負担を探すための選び方で、呼吸の遅さに認知機能の効果を保証するものではありません。
まず内容の説明を読み、動きを続ける時間が中心なのか、姿勢を保ちながら落ち着く時間が多いのかを確かめます。慣れない場合は、難しい形を完成させることより、途中で休めるか、姿勢を簡単な形に変えられるかを講師に聞くと具体的です。膝や腰などに痛みが出たら、その形を無理に続けないようにします。持病やけがのために動きの制限がある人は、始める前に医師へ相談します。
頭の働きを試したい夜でも、めまいや強い疲労がある日に負荷を加える必要はありません。運動中に気分が悪くなった場合は練習を中断し、不調が続く場合は医療機関に相談します。帰りに本を開く余裕がなくなるほど消耗したなら、読み進めなかったことより、その日の負担の大きさを振り返ります。注意や記憶のために体の不調を押して続けるという順序にならないようにします。
また、ここで取り上げた注意・記憶の研究は、温度の高い部屋のヨガの効果を調べたものではありません。汗の量や室内の暑さを、頭の働きが変わった目印には使わないようにします。選んだ内容と、終わった後に落ち着いて過ごせるかを組み合わせて見るほうが、本人の目的に沿っています。帰宅後にさらに作業を詰め込む予定まで増やさず、普段の夜の中で様子を見ます。
翌朝の取りかかりと、帰りの読書を比べる
翌朝の変化に関心があるなら、最初の仕事に取りかかるまでの時間を見る方法があります。席に着いてから資料を開くまでなのか、実際に書き始めるまでなのか、見る区切りをそろえます。ヨガのあった翌朝と、なかった翌朝で同じ区切りを使い、その日の予定も横に置きます。始業直後に会議がある日と、静かに作業できる日を同列に扱わないことが大切です。
自分で比べる場合、ヨガへ行けた日には、もともと仕事量が少なく余裕があった可能性があります。このように、見たい要因以外の事情が結果に重なることを交絡といいます。前夜の休み方や翌朝の依頼の多さも一緒に見れば、「ヨガの有無」だけで結果を説明する読み方を避けられます。変化が見えない日もそのまま残し、良かった日の印象だけを集めないようにします。
取りかかりの速さと、その後の仕事の質も分けて考えます。早く着手しても修正が多かったなら、開始が早いという記録だけで終わらせず、何につまずいたかを振り返ります。反対に、着手まで時間がかかっても、準備が整ってから落ち着いて進められた日もあるはずです。本人が困っているのが始めるまでの迷いなのか、途中の注意のそれやすさなのかを、普段の仕事の言葉で捉えます。
帰りの電車では、本や資料の中から難しさの近い箇所を同じ量だけ選び、ヨガの日とない日で読み進み方を比べてみます。座れたか、途中で中断があったかも添え、読み返した箇所に印をつけます。同じ文章を繰り返して覚えてしまうのを避け、読み終えたところで内容を短く言い直せるかも確かめます。しおりには読み終えた位置と、内容を追えた感触を一緒に残すと、速さだけに偏らず読書の変化を見比べられます。
よくある質問
ヨガの後にすっきりすれば、記憶も良くなっていますか
すっきりした感覚と記憶の検査成績は、別の項目として見ます。気持ちよく読めた場合も、後で内容を思い出せるかを確かめると、気分と覚えた内容の違いが見えてきます。反対に、気分の変化が目立たなくても、段取りを落ち着いてたどれたということはあり得ます。感想を消して検査のように採点するより、感想と具体的な行動を並べて、自分が求めていた変化に近いかを振り返ります。
続ける期間は研究に合わせたほうがよいですか
Gothe ら(2014)の高齢者の試験は8週ですが、この期間は、その対象と練習内容で結果を測った時点です。個人が通う期間の合格基準として扱う必要はありません。生活に組み込める内容か、終えた後の体調はどうかを見ながら、無理のない続け方を考えます。認知機能の変化を急いで求めて回数を増やすより、同じような状況で振り返れる機会を持つほうが、本人にとっての変化を捉えやすくなります。
頭が働かない日も、ヨガをして試すべきですか
体調が悪い日に、比較の記録をそろえるために参加する必要はありません。痛みやめまいがあるなら練習を優先せず、不調が続く場合は医療機関へ相談します。参加しなかった日はその理由も添えれば、ヨガのない日をすべて同じ条件として扱わずに済みます。頭の働きが気になるときほど、試すこと自体が負担になっていないかも見て、休む余地を残しておきます。
この記事の限界
対象は女子大学生の年代の女性や地域で暮らす高齢者などで、検査も注意の速さ、作業記憶、考え方の切り替えと異なっており、共通の仕事課題を用いた比較ではありません。取り上げた研究の範囲では、仕事帰りの疲労がある状態でのヨガや、翌日の業務の出来を直接測った試験は見つからなかったため、日常での読み進み方は本人の状況と合わせて扱う必要があります。
研究の多くは女子大学生や高齢者の数十〜百人規模の検査を土台にしており、参加者や練習内容を変えた追試が求められています。仕事帰りに疲れた会社員が、ヨガを終えて電車に乗り、その後どう注意を使うかは、これから確かめる研究の課題として残っています。
参考文献
- Gothe ほか. Yoga and Cognition: A Meta-Analysis of Chronic and Acute Effects. Psychosom Med. 2015;77(7):784-797.
- Gothe ほか. The acute effects of yoga on executive function. J Phys Act Health. 2013;10(4):488-495.
- Gothe ほか. The effects of an 8-week Hatha yoga intervention on executive function in older adults. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2014;69(9):1109-1116.
- Luu ほか. Hatha Yoga and Executive Function: A Systematic Review. J Altern Complement Med. 2016;22(2):125-133.
改札を出てから扉に着くまでの数分が、続くかどうかを決める。
- 向く人: 授業や練習のあと、駅までの帰り道をできるだけ短くしたい人
- 向く人: 通勤や通学の途中の駅で、乗り換えを増やさずに通いたい人
- 向かない人: 駅から離れた場所へ、車の送り迎えで通うことを前提にしたい人
- 向かない人: 移動をせず、自宅だけで学びや運動を済ませたい人
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ヨガの後にすっきりすれば、記憶も良くなっていますか
すっきりした感覚と記憶の検査成績は、別の項目として見ます。気持ちよく読めた場合も、後で内容を思い出せるかを確かめると、気分と覚えた内容の違いが見えてきます。反対に、気分の変化が目立たなくても、段取りを落ち着いてたどれたということはあり得ます。感想を消して検査のように採点するより、感想と具体的な行動を並べて、自分が求めていた変化に近いかを振り返ります。
続ける期間は研究に合わせたほうがよいですか
Gothe ら(2014)の高齢者の試験は8週ですが、この期間は、その対象と練習内容で結果を測った時点です。個人が通う期間の合格基準として扱う必要はありません。生活に組み込める内容か、終えた後の体調はどうかを見ながら、無理のない続け方を考えます。認知機能の変化を急いで求めて回数を増やすより、同じような状況で振り返れる機会を持つほうが、本人にとっての変化を捉えやすくなります。
頭が働かない日も、ヨガをして試すべきですか
体調が悪い日に、比較の記録をそろえるために参加する必要はありません。痛みやめまいがあるなら練習を優先せず、不調が続く場合は医療機関へ相談します。参加しなかった日はその理由も添えれば、ヨガのない日をすべて同じ条件として扱わずに済みます。頭の働きが気になるときほど、試すこと自体が負担になっていないかも見て、休む余地を残しておきます。