- 仕事から気持ちを離せることは、疲れの少なさや睡眠のよさと関連していました。
- 時間外メールの頻度は、本人が感じる回復だけでなく、機器で測った睡眠の質とも関連していました。
- 睡眠時間や生理的なストレスの指標では、同じ関連がそろっていたわけではありません。
- すぐに返信したいという気持ちや、仕事と家庭生活のぶつかりも、メールと消耗の関係に関わっていました。
立川駅から運動へ向かう車内で仕事のメールを見る|勤務時間外の連絡と心の切り替えの研究
38,124人の従業員を含む研究のまとめを読むと、中央線のホームで仕事のメールを開く行動にも、画面を見ている時間とは別の側面があると気づきます。Wendsche ら(2016)がまとめた研究では、仕事から気持ちを離せることが、疲れの少なさや眠りのよさと結びついていました。これから運動へ行くつもりでも、届いた依頼を読んだ途端に、返事の文面や翌日の段取りを考え始めることがあります。勤務時間外のメールは、その夜の疲れの回復や眠りにどのように関わるのでしょうか。
時間外の連絡は回復や睡眠の質と関連しており、読む回数とともに、読んだあとも仕事を考え続けているかに目を向けることが大切です。 仕事を終えた時刻と、頭の中で仕事が終わる時刻は同じとは限りません。スマホを閉じて運動の場所へ着いても、注意が仕事に戻ったままなら、自分では休んでいる実感が乏しいこともあります。ここで扱うのは勤務時間外の連絡と休息の研究であり、運動へ通う夜の時間の使い方を考えるために、その結果と日常の場面をつなぎます。
要点
- 仕事から気持ちを離せることは、疲れの少なさや睡眠のよさと関連していました。
- 時間外メールの頻度は、本人が感じる回復だけでなく、機器で測った睡眠の質とも関連していました。
- 睡眠時間や生理的なストレスの指標では、同じ関連がそろっていたわけではありません。
- すぐに返信したいという気持ちや、仕事と家庭生活のぶつかりも、メールと消耗の関係に関わっていました。
職場を出ることと、気持ちが離れること
「退勤したのだから、もう休めている」と考えたくなりますが、仕事に使っている注意は、勤務場所の外でも続きます。研究でいう心理的な距離、つまり仕事から気持ちを離すことは、職場を離れたあとに仕事の課題や要求から頭を休ませることを指します。電車に乗っている間も返事を練っていれば、体は移動していても、頭の中では仕事が続いている状態です。運動の予定が入っていることと、その間に仕事から離れられることも別々に考えられます。
Wendsche ら(2016)は、91の独立した集団を含む研究をメタ分析という、複数の研究の結果を統計的にまとめる方法で検討しました。仕事から気持ちを離せる人ほど、消耗や体の不快感が少なく、生活の満足や睡眠、回復の実感がよいという関連が示されました。こうした関連の大きさは、小さいものから中程度のものでした。また、勤務時間外に仕事に関わる活動をすることと、気持ちを離せることには、平均すると中程度の逆向きの関連がありました。
メールは短時間で読めるため、読む行為だけを見ると小さな用事に感じられます。しかし、返信を送っていなくても、依頼にどう対応するかを考え続けるなら、仕事に関わる活動としての広がりがあります。夕方の休息を考える際には、端末を操作した時間と、その内容が頭を占めた時間を同じものとして扱わないほうが状況を捉えやすくなります。問題になるのは、仕事を思い出した自分の意志の弱さではなく、休息の時間にも仕事の要求が入り込むことです。
一方、仕事のことを考える時間には、心配だけでなく、アイデアを楽しむ時間もあります。研究の「離れる」という言葉を、仕事への関心を失うことや、仕事を嫌いになることと読み替える必要はありません。勤務中の責任感を保つことと、勤務後に別のことへ注意を向けることは両立する課題です。休息を仕事に対する態度の良し悪しで採点すると、疲れを感じる本人に余計な負担を加えてしまいます。
睡眠は長さだけでなく、質にも分けて見る
時間外のメールについては、「寝る前の時間が削られるから疲れる」という説明が浮かびます。ところが、研究で測っているのは睡眠の長さだけではありません。眠っていた時間と、その眠りの質、起きたあとの回復感は、それぞれ違う結果として扱われています。睡眠時間が同じならメールの影響も同じ、と単純には整理しにくい理由がここにあります。
Kubo ら(2021)は、情報技術企業で日中に働く58人を対象に、1か月の観察研究を行いました。観察研究とは、研究者がメールの使い方を割り当てるのではなく、普段の行動と状態の関係を調べる研究です。時間外メールの頻度は、本人が答えた回復に関わる結果と、体の動きから推定する機器で測った睡眠の質に関連していました。一方、同じ機器で測った睡眠時間と、起床後の唾液コルチゾールの反応には、メール頻度との統計的にはっきりした関連がありませんでした。
コルチゾールは、体のストレス反応を捉える際にも使われるホルモンです。Kubo ら(2021)では、仕事から離れている時間が短い場合に、長い場合より起床後のコルチゾール反応が大きいという結果もありました。ここでは、メールの頻度と、仕事をしていない時間の長さが、それぞれ別の条件として扱われています。メールの回数だけに注目して、夜の自由な時間そのものがどれほど残っているかを見落とさない読み方が必要です。
自分の夜を振り返るときは、メールを見たあとから寝つくまでに、仕事を考えていた時間があったかを思い出してみます。布団に入ったあとも依頼の内容を組み直していたのか、それとも別の用事や楽しみに注意が移っていたのかが、その振り返りの中身です。眠った長さだけを成績のように扱うより、夜のどこで仕事が続いていたのかを言葉にします。これは睡眠の病気を判定するための方法ではなく、自分の過ごし方を捉えるための作業です。
同じメールでも「すぐ返したい」が違う
届いたメールの件数が同じでも、受け取り方が同じとは限りません。読むだけで済む知らせもあれば、返答が遅れることを気にして、何度も受信画面へ戻る依頼もあります。「早く片づければ気楽になる」という気持ちが、次の連絡を待つ状態につながることも考えられます。メールと休息の関係を読む際には、件数に表れない返信への気持ちも含めて扱う必要があります。
Tedone(2022)は、感染症の流行中に在宅勤務を求められた米国の従業員について、時間外の仕事メールと心の消耗の関係を調べました。仕事から気持ちを離せることと、仕事と家庭の要求がぶつかることが、その関係に重要な役割を持つという結果でした。さらに、仕事のメールへすぐ返信したいという切迫した気持ちの強さが、メール利用と気持ちの離れ方の関連を左右していました。単に端末の使用時間だけを減らすという話より、何が返信を急がせているかという話につながる結果です。
自分で確かめるなら、過去の一か月に届いた時間外メールのうち、その場ですぐ返す必要があったものを数えてみます。これは、新しく毎日の記録を始める作業ではなく、すでにある履歴から実際の用件を振り返る方法です。到着した時刻と、内容に示された期限や事情を見て、すぐの対応が求められた用件を拾います。数の多い少ないで自分を評価するのではなく、返信を急いだ場面がどんな用件だったかを読むことに意味があります。
仕事の性質上、勤務時間外でもすぐに返す必要がある人にとって、連絡を一律に止める方法は向きません。必要な対応まで止めれば、仕事上の支障が出たり、かえって気がかりが増えたりする可能性があります。ここでの振り返りは、職場の規則や上司への返答の仕方を変える提案ではありません。すぐ返す必要があるという事実と、すぐ返さなければ落ち着かないという感覚を、自分の中で取り違えないための整理です。
回復のよさと、あらゆる成果のよさは同じではない
気持ちを仕事から離せる人ほど回復の状態がよいと聞くと、仕事にも体にも、すべてよい結果が出るように感じられます。しかし、Wendsche ら(2016)のまとめでは、生理的なストレスの指標や仕事への意欲との平均的な関連は、統計的にはっきりしていませんでした。創造性との関連は、むしろ逆向きでした。休息の実感がよいことを、そのまま仕事のあらゆる能力が高まることへ広げるのは、結果の読み違いになります。
メールが多い夜には、仕事量そのものも多かったかもしれません。締め切りへの心配が、時間外の確認と休みにくさの両方に関わることも考えられます。こうした別の要因が関係に混ざることを交絡といい、観察された関連をメールだけの作用とする際の問題になります。これらの結果から、メールをやめた分だけ回復するという因果関係や、ホットヨガでその影響を打ち消せるという効果は言えません。
研究ごとの問いをそろえずに読むと、本人の疲労感を測った結果と、体の指標を測った結果が混ざってしまいます。たとえば、「仕事から離れられた」と感じることと、睡眠の機器の値が変わることは、異なる測り方です。次の表は、同じ夜についての問いでも、何を測るかによって答えが異なることを示しています。
| 仕事の連絡への見方 | 休息・睡眠との結びつき | 勤務者の研究と測定 |
|---|---|---|
| 仕事を考えないほど全般的に調子がよくなる | 疲れや睡眠とのよい関連がある一方、創造性とは逆向きの関連でした | 従業員の研究をまとめたWendsche ら(2016) |
| 時間外メールが多いと睡眠時間が短くなる | 睡眠の質とは関連し、睡眠時間との関連ははっきりしませんでした | 日中の勤務者を観察したKubo ら(2021) |
| メールの負担は件数だけで決まる | すぐ返信したい気持ちが、仕事からの気持ちの離れ方との関係を左右しました | 在宅勤務を求められた米国の従業員を調べたTedone(2022) |
運動へ向かう夜に、注意の移り方を見る
運動の予定を入れると、仕事以外のことに時間を使う場面ができます。ただし、予定どおりその場所に着いたことだけでは、気持ちが切り替わったかまでは捉えられません。体を動かしている最中に、次の返信を考えていることもあるためです。ホットヨガはここでは仕事帰りに通う運動の一つとしての場面であり、メール研究で試された回復の方法ではありません。
Karabinski ら(2021)は、仕事から気持ちを離すための取り組みを扱った研究のまとめで、仕事のストレスが高いときほど、回復が必要でも気持ちを離すことが難しくなると述べています。この見方は、忙しい夜に切り替えられないことを、本人の努力の不足として扱わないために役立ちます。休めなかった夜に、運動まで上手にこなそうとして新しい課題を増やすと、余暇も達成すべき仕事のように感じられます。切り替えの様子を見ることと、切り替えを自分に強制することは区別したいところです。
車内でメールを開いた日と開かなかった日を思い出し、運動の最初の10分に仕事を考えていたかを振り返ってみます。見るのは動きの上手さや汗の量ではなく、その時間に何へ注意を向けていたかです。思い出せる範囲で、返事を考えていた、説明を聞いていた、体の動きを追っていた、と言葉にします。どちらの日がよかったかを無理に決めず、運動へ移ってからも仕事が続いていた場面を捉える作業にします。
勤務時間外に連絡を止めても差し支えない夜なら、メールを開く区切りを立川駅の改札を出るまでに置く方法があります。改札を出て通行の妨げにならない場所で立ち止まり、仕事のメール通知を切る操作を一度行います。その操作を、運動へ向かう時間の始まりにします。
よくある質問
休日のメールも、平日の仕事帰りと同じですか
研究では勤務時間外という枠で連絡を扱っているため、まず休日にも仕事の用件が入り得る点は共通します。Blake ら(2024)の研究のまとめも、勤務時間外の仕事用スマホ利用と、本人が感じる仕事と生活のぶつかりを調べることを目的にしています。休日には家族との予定や外出など平日の夜とは異なる活動があり、考えたいのは曜日の名前より、どの活動に仕事の連絡が入り込んでいるかです。
楽しい仕事のアイデアが浮かんでも、消したほうがよいですか
仕事を考える内容まで、すべて同じ負担として扱う必要はありません。Wendsche ら(2016)では、仕事から気持ちを離すことと創造性の関連は逆向きで、離れるほど全方面によいという単純な結果ではありませんでした。楽しみながら浮かぶアイデアと、不安のために同じ用件を繰り返し考える状態では、本人にとっての意味が違います。頭から仕事を追い出すこと自体を、休日の新たな義務にしなくてもよいのです。
家族と過ごしている間の短い返信は、何を気にすればよいですか
返信にかかった時間に加えて、途中で止まった会話や家族との用事があるかが、生活側から見た論点です。Tedone(2022)では、仕事と家庭の要求のぶつかりが、時間外メールと心の消耗の関係に役割を持っていました。短い返事だったという本人の感覚と、一緒にいる人の話が中断されたという出来事は、同時に起こり得ます。返信の速さだけで済ませず、余暇の中で何が中断されたかにも目を向ける読み方ができます。
この記事の限界
測定には本人が感じた回復や仕事からの気持ちの離れ方への回答が多く使われており、機器で測った睡眠やホルモンの反応まで同じ方向にそろった結果ではありません。メールを扱った研究の対象には情報技術企業の日中の勤務者や、感染症の流行中に在宅勤務を求められた米国の従業員がおり、働き方の条件もそれぞれ異なります。
また、引用した研究は東京の駅や電車で運動へ向かう途中の連絡を直接調べておらず、ここで挙げた移動中の工夫は日常への応用案です。本人の回答を中心とするメールと回復の関連は示されていますが、運動前に連絡を断つ場合と断たない場合を比べた試験は、ここで扱った研究には含まれていません。
参考文献
- Wendsche J, et al. A Meta-Analysis on Antecedents and Outcomes of Detachment from Work. Front Psychol. 2016;7:2072.
- Kubo T, et al. Work e-mail after hours and off-job duration and their association with psychological detachment, actigraphic sleep, and saliva cortisol: A 1-month observational study for information technology employees. J Occup Health. 2021;63(1):e12300.
- Tedone AM. Keeping Up With Work Email After Hours and Employee Wellbeing: Examining Relationships During and Prior to the COVID-19 Pandemic. Occup Health Sci. 2022;6(1):51-72.
- Karabinski T, et al. Interventions for improving psychological detachment from work: A meta-analysis. J Occup Health Psychol. 2021;26(3):224-242.
- Blake H, et al. Work-related smartphone use during off-job hours and work-life conflict: A scoping review. PLOS Digit Health. 2024;3(7):e0000554.
改札を出てから扉に着くまでの数分が、続くかどうかを決める。
- 向く人: 授業や練習のあと、駅までの帰り道をできるだけ短くしたい人
- 向く人: 通勤や通学の途中の駅で、乗り換えを増やさずに通いたい人
- 向かない人: 駅から離れた場所へ、車の送り迎えで通うことを前提にしたい人
- 向かない人: 移動をせず、自宅だけで学びや運動を済ませたい人
このサイトは武蔵野個別指導塾とオンザショア立川店の運営者が制作しています。武蔵野個別指導塾は駅から徒歩30秒の完全1対1、オンザショア立川店は駅から徒歩1分で、床は溶岩プレートです。
休日のメールも、平日の仕事帰りと同じですか
研究では勤務時間外という枠で連絡を扱っているため、まず休日にも仕事の用件が入り得る点は共通します。Blake ら(2024)の研究のまとめも、勤務時間外の仕事用スマホ利用と、本人が感じる仕事と生活のぶつかりを調べることを目的にしています。休日には家族との予定や外出など平日の夜とは異なる活動があり、考えたいのは曜日の名前より、どの活動に仕事の連絡が入り込んでいるかです。
楽しい仕事のアイデアが浮かんでも、消したほうがよいですか
仕事を考える内容まで、すべて同じ負担として扱う必要はありません。Wendsche ら(2016)では、仕事から気持ちを離すことと創造性の関連は逆向きで、離れるほど全方面によいという単純な結果ではありませんでした。楽しみながら浮かぶアイデアと、不安のために同じ用件を繰り返し考える状態では、本人にとっての意味が違います。頭から仕事を追い出すこと自体を、休日の新たな義務にしなくてもよいのです。
家族と過ごしている間の短い返信は、何を気にすればよいですか
返信にかかった時間に加えて、途中で止まった会話や家族との用事があるかが、生活側から見た論点です。Tedone(2022)では、仕事と家庭の要求のぶつかりが、時間外メールと心の消耗の関係に役割を持っていました。短い返事だったという本人の感覚と、一緒にいる人の話が中断されたという出来事は、同時に起こり得ます。返信の速さだけで済ませず、余暇の中で何が中断されたかにも目を向ける読み方ができます。