- 在宅勤務と出社を比べた研究では、歩数の少なさと座る時間の長さが報告されています。
- 東京圏でも関連は見られますが、働く場所の異なる人同士を比べた結果です。
- 朝の通勤時間帯は歩数が減りやすく、日中の合計だけでなく時間帯を見る意味があります。
- 軽い活動の減少と、強い運動や健康状態の変化は区別して読みます。
- 在宅の日に通勤代わりの歩行を試し、出社日と同じ測り方で記録します。
在宅勤務の日は駅まで歩かない|通勤のない日の歩数と身体活動の研究
駅へ向かう途中の商店街を通らず、自宅で仕事を始める日は、いつもの歩きをどこで補えばよいのでしょうか。国立市に住み、出社と在宅を組み合わせて働く人なら、移動の負担が減る一方、夕方まで靴を履かない日もあるかもしれません。在宅勤務では日常の歩数が少ない傾向があり、まず通勤で歩いていた時間帯を確かめ、無理のない歩行を予定に戻すことが実用的な出発点です。大きな運動計画を立てる前に、出社日には自然にあった移動を見つけると、補いたい行動が具体的になります。
ただし、歩数、運動の強さ、健康状態は、それぞれ別のものを測っています。研究を読む際も、家で働く人と会社へ行く人の比較なのか、同じ人の生活の変化なのかを分ける必要があります。通勤がなくなって空いた朝を家事に使う人も、仕事を早く始める人も、運動に使う人もいます。商店街への用事を歩いて済ませるなど、自分の日程に置ける行動を探すには、研究の平均値と手元の歩数記録を別々の役割で使うと考えやすくなります。
要点
- 在宅勤務と出社を比べた研究では、歩数の少なさと座る時間の長さが報告されています。
- 東京圏でも関連は見られますが、働く場所の異なる人同士を比べた結果です。
- 朝の通勤時間帯は歩数が減りやすく、日中の合計だけでなく時間帯を見る意味があります。
- 軽い活動の減少と、強い運動や健康状態の変化は区別して読みます。
- 在宅の日に通勤代わりの歩行を試し、出社日と同じ測り方で記録します。
在宅勤務で減るのは、運動よりも生活の移動かもしれない
「通勤をしなくなったから運動不足になった」という感覚を考えるには、運動と身体活動を分けると役立ちます。身体活動とは、スポーツだけでなく、移動や家事など体を動かす行動を含む言葉です。駅へ向かう歩行、職場の中の移動、帰宅途中の用事は、運動着に着替えなくても日々の活動に入ります。出社日は目的地へ着くために必要だった歩きが、在宅日には予定を作らないと生じなくなることがあります。
Schöneら(2025)は、働く人の在宅勤務と出社を比較した38研究、282,264人の結果をまとめています。メタ分析という、複数の研究結果をまとめて計算する方法では、歩数を扱った7研究で、在宅勤務の側が1日2564歩少ない結果でした。勤務中に座る時間も7研究で31分長くなっていました。歩数と座る時間は別々に集計されており、この数字は、各研究で在宅勤務と出社を比べた結果を統合した平均差です。
この比較から目を向けたいのは、通勤が担っていた日常の移動です。朝の外出がなくなっても夕方に買い物へ歩くなら、その時間帯に活動が移っている可能性があります。逆に、出社日と同じように夜の運動を続けていても、日中の短い歩きが減ることはあります。記録する際は「運動したか」という欄と「どこへ歩いたか」という欄を分けると、失われた機会を拾いやすくなります。
たとえば商店街へ出る用事を思い浮かべると、外出の理由と歩く行動を結びつけられます。買う物がない日は外へ出ないのか、用事がなくても短い往復ならできそうか、と予定を具体化します。歩数の平均差を埋めることより、通勤のない日に消えた行動を自分の生活から見つける順序が大切です。
東京圏の測定でも、在宅の頻度と歩数は関連した
Kitanoら(2024)は、東京圏に住む事務職などの会社員1133人を対象に、2022年4月から2023年3月に調査を行いました。体の動きを記録する加速度計で身体活動を測り、在宅勤務の頻度ごとに比較しています。週に1〜2日在宅で働く人でも、在宅勤務をしない人より身体活動が少なく、座るなどして過ごす時間が長いという関連が見られました。歩く速さなどの活動の強さを分けても、同様の方向が示されています。
Kitanoら(2024)では、在宅勤務をしない人と週5日以上在宅で働く人との差は、身体活動全体で約70分/日、歩数で約4000歩/日でした。これは横断研究という、ある時点の状態を調べて関連を見る方法による結果です。在宅勤務の頻度は本人の申告で、比較しているのは頻度の異なる人たちです。そのため、この差を在宅勤務が引き起こした量と断定することはできません。
この区別は、普段の通勤手段を思い浮かべると理解しやすくなります。駅まで歩く人と車で職場へ行く人では、出社日の歩行の内訳が異なりますし、仕事中の移動や家事の分担も違います。職種や家庭事情など、働く場所とは別の条件が結果に関わることを交絡と呼びます。東京圏の数字という身近さと、自分に同じ差が出るかという判断は、分けて持っておく必要があります。
実際に記録するなら、自分の出社日を比較相手にする方法があります。勤務の長さが似ている日を選び、会議の多さや帰宅後の用事も添えておきます。別の人の平均を達成目標にするより、朝の移動がある日とない日で、自分の記録のどこが違うかを見る材料になります。
朝の通勤時間帯に注目すると、補う場所が見える
Weilenmannら(2026)は、スウェーデンの1,529人について、2019年3月から2021年3月にスマートフォンで集めた歩数を追跡しました。同じ対象を時間を追って調べる縦断研究で、遠隔勤務の期間は前年より日々の歩数が16.2%少なく、減少は平日と朝に目立ちました。週末の活動には小さな増加が見られ、著者らは一部を補っていると解釈しています。平日に減った歩きと休日の活動をまとめて眺めると、曜日による違いが隠れやすくなります。
Matsumotoら(2026)による日本の縦断研究も、時刻別の変化を示しています。身体活動を促すスマートフォンアプリの利用者を調べ、日ごとの歩数は3,480人、時間ごとの歩数は3,402人を分析しました。2019年を基準にすると、緊急事態宣言中の4月は1日あたり1,115歩減り、その後の7月にも496歩少ない状態でした。平日の朝の通勤時間帯と夜に、歩数の減少が見られています。
ここで日本のアプリ利用者の変化は、在宅勤務だけを切り出した比較とは分けて読みます。新型コロナウイルス流行期には、出勤以外の外出や生活時間も同時に変わっていました。とはいえ、日々の合計を時刻ごとに見直すという読み方は、自分の記録にも使えます。朝の記録だけが低くなっていれば、始業前に置ける短い歩きを検討する理由になります。
朝に歩く案は、空いた通勤の時間へ歩行を戻しやすいという予定上の工夫です。朝は家族の世話で手が離せない人なら、仕事が終わってからの用事とつなげてもよいでしょう。どの時刻に歩くかを先に決めつけず、消えた時間帯と実際に空いている時間帯を見比べます。外出の準備から帰宅までを仕事の予定に収められる形にすることが、試す際の条件です。
歩数が少ない結果と、活動全体に差がない結果を並べる
Polspoelら(2025)は、流行期の在宅勤務と出社を比較した12の観察研究、9,059人をまとめました。観察研究は、研究者が働き方を割り振るのではなく、実際の生活を調べる方法です。このうち10研究は質問票、2研究は加速度計を使っており、軽い身体活動は有意に少ない一方、総身体活動、中高強度の活動、座る行動には有意な差がありませんでした。有意とは、偶然のばらつきだけでは説明しにくいと統計上判断された、という意味です。
歩数の結果と食い違うように見えても、測っている対象には違いがあります。質問票で思い出して答える運動と、機器が拾う細かな移動では、記録に入りやすい行動が異なります。歩数は歩いた量を見るのに向きますが、自転車や体を支える運動なども含めた活動の全体像とは別です。比べる指標を揃えると、次のように結果を読み分けられます。
| 在宅日の活動への見方 | 歩数と健康指標の結果 | 勤務形態と測り方 |
|---|---|---|
| 在宅では日常の歩きが減る | 歩数が少なく、勤務中の座る時間が長い傾向 | Schöneら(2025)、働く人の研究を統合 |
| 家なら立つ機会も減る | 歩数は少ない一方、座位から立つ回数は多い関連 | Sauterら(2025)、机で働く人の加速度計による横断比較 |
| 歩数が減れば運動全体も減る | 軽い活動は少ないが、総活動と中高強度には有意差なし | Polspoelら(2025)、流行期の観察研究を統合 |
| 出社を増やせば活動も増える | 在宅勤務を減らした人で不活動が多い弱い関連 | Razaら(2025)、スウェーデンの働く人の調査 |
Sauterら(2025)は102人の従業員について、在宅を含む異なる仕事環境で加速度計の記録を比べています。在宅勤務には座る時間の長さと歩数の少なさが関連した一方、座った状態から立つ回数は多くなっていました。立つ、歩く、一定の強さで体を動かすという行動は、同じ方向に変わるとは限りません。自宅でよく立っている感覚がある人も、外へ歩きに出る機会は別に記録すると、日々の動き方が見えます。
出社を増やす判断と、健康の評価は分けて考える
Razaら(2025)は、スウェーデンの労働者の追跡調査のうち、2022年の8195人のデータを使って、在宅勤務の変化と健康行動を調べました。在宅勤務の量を変えなかった人に比べ、減らした人では身体的に不活動であるオッズが17%高いという結果でした。オッズは、その状態にある見込みを比較する指標で、著者らは関連が弱いとしています。「家を出て会社へ行く回数を増やす」という変更と、生活全体で活動するようになることは、同じ判断ではありません。
Altwicker-Hámoriら(2026)は、スイスの18〜79歳の住民3,381人を含む縦断調査を用い、高等教育を受けた従業員の在宅勤務への移行を検討しました。同じ人に固有の変わりにくい特徴を考慮する分析では、調べた健康指標に移行による影響を示す証拠は見られませんでした。歩数に注目する研究と健康指標に注目する研究は、答える問いが異なります。働き方を選ぶ際は、歩ける機会に加えて、通勤の負担や家庭の予定も含めて考えることになります。
自分の記録でも、歩数が低い日を失敗として扱う必要はありません。仕事の都合で外出できない日と、歩く予定を置かなかった日は、次に変えられる条件が違います。逆に、多く歩けた日にも、足の痛みや強い疲れが残ったなら、その行程は調整の対象です。数字だけを上げるために、帰宅時刻を気にして急いだり、混んだ場所を縫って歩いたりすると、安全に歩くという目的から離れます。
朝の歩行が向かないのは、歩く余地を作ることで睡眠や必要な世話の時間を削ってしまう場合です。歩行中の痛みがある人や体調が悪い日は、距離を延ばして帳尻を合わせず、試す予定を変更します。運動について医療者から指示を受けている人は、その指示に沿った範囲で行います。こうした条件も記録しておくと、歩ける日を無理なく増やす判断に役立ちます。
通勤代わりの歩きを、同じ測り方で試す
まずは普段どおりに働く週の歩数を残し、次に在宅勤務の朝へ短い歩行を入れてみます。試行の区切りは1週間程度とし、出社日と在宅日が混じる普段の予定を使います。これは自分の予定に合う方法を探すための手順です。研究で示された平均差を埋める課題にせず、どの行動なら仕事や家事と両立したかを確かめます。
最初に、普段使っているスマートフォンか歩数計を選び、出社日も在宅日も同じように持ちます。家では机に置いたまま、外ではポケットに入れるという違いがあると、家の中の移動を拾う条件が変わります。持たなかった時間がある日は、その事実も書き添えます。数字が低い理由を、行動の少なさと測定条件の違いに分けて考えるためです。
次に、歩く時刻と折り返す場所を決めます。商店街への用事とつなぐなら、買い物の荷物を持って帰ることまで含めて、短く戻れる範囲にします。始業が迫って速足になる予定や、雨で足元が不安な日の外出は調整します。記録のために出かけるより、安全に歩いて予定どおり戻れる行程を選びます。
その後は、朝の歩数とその日の合計に加え、外へ出た理由、天候、足の痛みや疲れを記します。休日に長く歩いた記録は、勤務日の記録とは分けて眺めます。朝に歩いたものの夕方の外出をやめた日があれば、合計の中で行動が入れ替わったと読めます。予定した歩きを続けやすかった日には、会議や家事との並びも残しておくと、次の週に再現する手掛かりになります。
見直すときは、歩数の最大値より、普段の在宅日に歩く機会を置けたかを見ます。朝の用事に組み込む形が合う人も、終業後に外へ出る形が合う人もいます。在宅日の歩きを戻す計画は、通勤の代わりに置ける用事と、自分の歩数記録をもとに組み立てます。
よくある質問
研究で少なかった分の歩数を、そのまま目標にしてよいですか
研究の平均差は、自分の出社日と在宅日の違いを調べるきっかけとして使います。通勤手段や仕事中の移動、家事、余暇の運動が違えば、日々の歩きの内訳も変わります。まず手元の記録で朝と終業後の動きを見て、安全に追加できる行動を選びます。歩けた量と同時に痛みや疲れ、仕事に間に合ったかも残すと、無理のある目標を続けずに調整できます。
家事や自宅での運動をしていれば、歩数は見なくてもよいですか
家事や運動も身体活動に含まれますが、歩数と活動全体は異なる指標です。歩数だけを見て自宅での活動をすべて低く評価することも、運動をしたので日中の移動は同じだと考えることも避けます。運動した内容を歩数の横へ記録すれば、歩行以外に体を動かした日を区別できます。通勤で減った歩きと、それ以外の活動を並べて、自分の暮らしの変化を捉えます。
朝に歩けない日は、試行をやめた方がよいですか
朝に家族の世話や仕事がある日は、歩行を別の時間へ移す方法があります。朝に注目するのは通勤の歩きがなくなりやすいからで、予定を無理に押し込むためではありません。外へ出られなかった事情を記録しておけば、実行しやすい時間帯を探す材料になります。次の在宅日には、短く戻れる用事や終業後の外出など、生活に合った形で試せます。
この記事の限界
比較の中心には流行期の在宅勤務と出社があり、外出制限や職場の変化が重なった時期の結果を、現在の国立市で働く人の歩数へそのまま当てはめることには限界があります。東京圏の加速度計研究も人同士の横断比較であり、流行後の平時の東京で、同じ人の在宅日と出社日を長く追った研究は今回扱った文献には含まれていません。
歩数を測った機器、勤務中だけか終日かという測定範囲、質問票で尋ねた活動の内容にも違いがあります。朝の歩行を予定に入れる手順は生活の中で実行可能性を確かめる提案で、これらの研究によって体重や長期的な健康への効果が確定した方法ではありません。
参考文献
- Schöne ほか. The impact of working from home on sedentary behaviour and physical activity compared to onsite work in the working population: a systematic review and meta-analysis. BMC public health. 2025;25(1):3963.
- Kitano ほか. Associations of Working From Home Frequency With Accelerometer-Measured Physical Activity and Sedentary Behavior in Japanese White-Collar Workers: A Cross-Sectional Analysis of the Meiji Yasuda LifeStyle Study. Journal of physical activity & health. 2024;21(11):1150-1157.
- Weilenmann ほか. Temporal patterns of everyday movement while working from home: a longitudinal study of step counts in Sweden during COVID-19. BMC public health. 2026;26(1):1219.
- Matsumoto ほか. Longitudinal Study of Changes in Daily and Hourly Steps During the COVID-19 Pandemic in Japan. Journal of epidemiology. 2026;36(6):179-187.
- Polspoel ほか. Comparison of physical activity and sedentary behavior between telework and office work in a working population during the COVID-19 pandemic: a systematic review and meta-analysis of observational studies. BMC public health. 2025;25(1):1805.
- Sauter ほか. Comparison of sedentary time, number of steps and sit-to-stand-transitions of desk-based workers in different office environments including working from home: analysis of quantitative accelerometer data from the cross-sectional part of the SITFLEX Study. Scandinavian journal of work, environment & health. 2025;51(4):333-343.
- Raza ほか. Impacts of changing work from home patterns on health behaviours and obesity: insights from the late COVID-19 pandemic. BMC public health. 2025;25(1):3970.
- Altwicker-Hámori ほか. Shaping Workspaces, Shaping Lives: Health Implications of Working From Home for Employees With Tertiary Education in Switzerland. International journal of public health. 2026;71:1608002.
改札を出てから扉に着くまでの数分が、続くかどうかを決める。
- 向く人: 授業や練習のあと、駅までの帰り道をできるだけ短くしたい人
- 向く人: 通勤や通学の途中の駅で、乗り換えを増やさずに通いたい人
- 向かない人: 駅から離れた場所へ、車の送り迎えで通うことを前提にしたい人
- 向かない人: 移動をせず、自宅だけで学びや運動を済ませたい人
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研究で少なかった分の歩数を、そのまま目標にしてよいですか
研究の平均差は、自分の出社日と在宅日の違いを調べるきっかけとして使います。通勤手段や仕事中の移動、家事、余暇の運動が違えば、日々の歩きの内訳も変わります。まず手元の記録で朝と終業後の動きを見て、安全に追加できる行動を選びます。歩けた量と同時に痛みや疲れ、仕事に間に合ったかも残すと、無理のある目標を続けずに調整できます。
家事や自宅での運動をしていれば、歩数は見なくてもよいですか
家事や運動も身体活動に含まれますが、歩数と活動全体は異なる指標です。歩数だけを見て自宅での活動をすべて低く評価することも、運動をしたので日中の移動は同じだと考えることも避けます。運動した内容を歩数の横へ記録すれば、歩行以外に体を動かした日を区別できます。通勤で減った歩きと、それ以外の活動を並べて、自分の暮らしの変化を捉えます。
朝に歩けない日は、試行をやめた方がよいですか
朝に家族の世話や仕事がある日は、歩行を別の時間へ移す方法があります。朝に注目するのは通勤の歩きがなくなりやすいからで、予定を無理に押し込むためではありません。外へ出られなかった事情を記録しておけば、実行しやすい時間帯を探す材料になります。次の在宅日には、短く戻れる用事や終業後の外出など、生活に合った形で試せます。