- 英国の試験では、成績を落とした組に鼻炎の症状や眠くなる薬の使用が多く見られました。
- 花粉が多い日の点数低下を示す研究と、認知検査で全体の関連が見られなかった研究があります。
- 鼻炎の有無、試験当日の症状、薬による眠気は、分けて考える必要があります。
- 模試の答案に症状を添え、薬の説明書と照らして相談する質問を用意します。
花粉の季節に駅まで歩いて通塾する受験生|花粉症と試験の成績の研究
試験の時期に鼻炎の症状があることや鼻炎の薬を使うことは、夏の試験で予想外に成績を落とすことと関連していました。英国の受験生を調べた Walker ら(2007)は、そのように結論づけています。武蔵境駅南口まで歩く途中で鼻をかみ、塾に着いてからも問題文を読む手が止まるなら、勉強の進み具合とともに体調も気になります。花粉症の症状や薬による眠気は、本番の試験の成績にどれほど響くのでしょうか。
鼻炎の症状や眠くなる薬の使用と成績低下が結びついた研究はあり、受験前には症状と眠気を分けて確かめ、医師や薬剤師に相談する準備が役立ちます。 一方、花粉との関連が全体では見られなかった認知検査や、鼻炎を申告した生徒のほうが成績のよかった調査もあります。注目したいのは、病名だけで学力を判断することより、問題を解くその日に何が起きているかです。答案を見直すときに、鼻をかんで中断した場面と、眠くて読み直した場面を本人の言葉で添えると、学習上のつまずきとの区別を話し合いやすくなります。
要点
- 英国の試験では、成績を落とした組に鼻炎の症状や眠くなる薬の使用が多く見られました。
- 花粉が多い日の点数低下を示す研究と、認知検査で全体の関連が見られなかった研究があります。
- 鼻炎の有無、試験当日の症状、薬による眠気は、分けて考える必要があります。
- 模試の答案に症状を添え、薬の説明書と照らして相談する質問を用意します。
試験当日の鼻炎と成績を結びつけた英国の調査
「鼻水くらいなら、問題を解く力には関係しない」という見方には、試験を受ける間の負担が抜けています。鼻をかむために手を止めたのか、眠気で問題文を追えなかったのかによって、本人の困り方は違います。親が答案だけを見て「もっと練習すればよかった」と考える前に、試験中の様子を聞く余地があります。その点で、実際の試験の成績を扱った研究は、家庭で何に目を向けるかを考える出発点になります。
Walker ら(2007)の対象は、英国で全国的な試験を受けた15〜17歳の1,834人です。成績を落とした662人と対照の1,172人を比べ、試験期間中の鼻炎症状や薬の使用との関連を調べました。これは症例対照研究と呼ばれ、結果の違う組を出発点に、それぞれにどんな条件があったかを比べる方法です。症状のある生徒に薬を割り当てて成績の変化を試した研究とは、調べ方が異なります。
Walker ら(2007)では、ほかの要因を調整した後も、成績を落とした組では鼻炎症状があったオッズ比が1.4、95%信頼区間が1.1〜1.8でした。オッズ比は組の間である条件の現れやすさを比べる指標で、信頼区間はその推定に伴う幅を示します。この値を、鼻炎のある子の得点が一定割合で減るという意味で読むのは誤りです。比べているのは得点の量ではなく、成績低下と症状の結びつきです。
この調査を家庭に引き寄せるなら、返ってきた答案に症状の話を重ねるところから始められます。解けなかった設問について、考え方が浮かばなかったのか、途中で集中が切れたのかを本人に聞きます。鼻の症状が軽かった回の答案も並べると、不調の日だけを取り上げずに振り返れます。症状への相談と、苦手な単元の学び直しは、同時に進められる準備です。
花粉の多い日の点数と、頭の働きの検査は同じではない
花粉症の影響を考える研究には、試験の点数を見るものと、決まった課題への反応を見るものがあります。前者には試験までの学習や当日の出来が含まれ、後者は限られた働きを繰り返し測ります。どちらも参考になりますが、測っているものを区別すると、結果の違いを読み取りやすくなります。「集中力が下がる」という言葉だけで両方をまとめないことが大切です。
Bensnes(2016)は、ノルウェーの行政データを用いて、高校の重要な試験と花粉の関係を分析しました。同じ生徒に固有の違いを考慮する方法を使い、周囲の花粉が多い条件で試験の点数が小さく下がる結果を報告しています。アレルギーのある生徒では影響がより大きい可能性にも触れています。生徒間の比較だけでなく、同じ生徒の違いに目を向けた分析として読むと、研究の狙いがつかめます。
対して Corpening ら(2025)は、花粉の季節に392人を10日間調べ、日々の認知検査の成績を測りました。そのうち299人に花粉アレルギーがありましたが、全体としては花粉への接触や本人が感じる症状と、認知機能の変化との関連は見られませんでした。言語的な推論の反応時間には小さな差があったものの、著者らは、多くの条件と結果を調べた中で偶然現れた可能性を挙げています。
研究を並べる際は、支持する結果だけでなく、関連が現れなかった検査も残します。以下の表は、よくある理解と実際に測ったものを対応させたものです。試験当日の症状を扱う調査と、鼻炎の申告や短い課題を扱う調査の違いに注目すると、本人の成績を一律に予測しない読み方になります。
| 鼻炎と成績についての疑問 | 試験・認知検査での結果 | 生徒などの対象と比較方法 |
|---|---|---|
| 鼻炎があると試験で成績を落とす | 成績低下と当日の症状に関連があった | Walker ら(2007)、英国の受験生の症例対照研究 |
| 花粉が多い日は試験に不利になる | 点数の小さな低下が見られた | Bensnes(2016)、ノルウェーの行政データの分析 |
| 花粉で頭の働き全体が落ちる | 認知検査では全体の関連は見られなかった | Corpening ら(2025)、日々の検査による観察 |
| 鼻炎を持つ生徒は普段の成績も低い | 成績のよい組ほど鼻炎の申告が多かった | Kim ら(2017)、韓国の生徒の質問調査 |
鼻炎を申告した生徒の成績がよかった研究をどう読むか
Kim ら(2017)は、韓国の7〜12学年の299,695人が参加した質問調査を分析しました。鼻炎などの病歴と学校の成績を調べると、成績がよい組ほどアレルギー性鼻炎の申告が多い結果でした。鼻炎があればいつも成績が低い、という単純な図式とは異なる結果です。ここで問われたのは、英国の研究のような試験当日の症状と成績低下だけではなく、病歴と学校の成績の関係でした。
病気があると答えることと、試験中に症状で困っていることは同じではありません。症状が落ち着いた状態でも病歴を申告することはあり、成績の自己申告にも本人の捉え方が入ります。医療を利用しやすい家庭かどうかや学習環境が、病歴の把握と成績の両方に関わる可能性もあります。こうした背景が関連に入り込む交絡には注意が必要で、鼻炎が勉強によいという因果関係を示した結果ではありません。
家庭でも、「花粉症の子」というひとまとめの見方から離れると、聞くことが具体的になります。朝は困らなかったのに問題を解く頃には鼻水が増えたのか、症状は少ないのに眠かったのかを分けて尋ねます。反対に、症状があっても落ち着いて解けた回があるなら、その回の様子も聞きます。よかった答案を含めて見ることで、不調の説明だけを集める偏りを避けやすくなります。
成績を話す場面で、症状を訴えるたびに結果と結びつけられると、本人が話しづらくなることも考えられます。鼻のつらさを聞く時間と、答案の間違いを検討する時間を少し分ける方法があります。まずどこで困ったかを聞き、その後に見直す設問を選ぶ流れなら、体調の話を責める材料にせずに済みます。症状がなかった回にも同じように話を聞くと、本人の説明を比べやすくなります。
眠くなる薬への心配は、点数より先に相談の言葉にする
鼻の症状を抑えたい一方で、眠くなることが心配という悩みは、受験前には切実です。抗ヒスタミン薬はアレルギー症状に使われる薬の一種で、眠気の出方には薬による違いがあります。症状が軽くなったかと、問題を読むとき眠かったかは、別々に確認したい項目です。成績の数字だけを薬の良し悪しの判定に使わず、医師や薬剤師に困り方を伝えます。
Walker ら(2007)では、成績を落とした組で眠くなる抗ヒスタミン薬を使っていたオッズ比が1.7、95%信頼区間が1.1〜2.8でした。薬の使用と症状の重さは重なり得るため、薬の影響だけを切り離すことはできません。Vuurman ら(1993)の子どもの学習課題の研究では、鼻炎のある組は鼻炎のない対照より学習成績が低く、薬によって結果も異なりました。著者らは、眠くなる薬で学習への悪影響が強まったと結論づけています。
薬の種類ごとの学業への影響を検討した Jáuregui ら(2009)の総説は、具体的な研究が不足する領域を挙げています。学業への影響という観点でも、すべての薬が同じ程度に調べられているわけではありません。家庭で用意したいのは、薬の説明書と、実際に困った場面の短い説明です。「鼻水は落ち着いたが、問題文を読み直すほど眠かった」といった言葉なら、症状と眠気を一緒に相談できます。
説明書を読む際には、眠気に関する記載を探し、意味がつかみにくい部分に印をつけます。薬を使った時刻と眠くなった場面も添え、「試験のある日に、この眠気をどう相談すればよいか」という質問を用意します。強い眠気で勉強が続かない子に、答案の比較を頑張らせる方法は向きません。点数を取るために無理を重ねる前に、症状や眠気で日常生活に支障があることを医師や薬剤師に伝えます。
答案の端と通塾の道から、本人の困り方を拾う
模試や過去問を解いた日は、鼻の症状を「気にならない」「気になる」「解く手が止まる」という段階で、答案の端に添えてみます。点数と別の手帳に書くより、その回の問題と並べて読めるのが利点です。鼻水や鼻づまりのどちらがつらかったかも短く書くと、後で様子を思い出しやすくなります。細かい記録が負担なら、本人が選んだ言葉だけを残す形で十分です。
答案を比べる際は、合計点の上下だけでなく、どこで手が止まったかに印をつけます。解き直したら進められた問題と、解説を読んでも難しかった問題を分けると、学習の復習にもつながります。問題の難しさや習った範囲が違う回を並べる場合は、その違いも横に書きます。症状の強かった答案だけを選ぶより、調子のよかった回も残したほうが、相談の場で説明する材料が増えます。
通塾の道については、症状が強くなる場所と時刻を本人に聞いてみます。家を出た直後からなのか、駅に着く頃なのか、教室で座ってから気になったのかという順に振り返ります。道の途中で立ち止まって書かせず、着いてから思い出す形で構いません。本人が場所を言い表しにくければ、道筋を紙に描き、気になった辺りを指してもらう方法もあります。
地域の花粉の状況は自治体の最新の花粉情報で確かめ、本人の感覚とは別に見ます。場所と時刻を聞く目的は、通った道の原因を家庭で特定することより、症状が始まる流れを医療者に説明しやすくすることです。歩いた区間の話と、着いてから解いた問題の話をつなぐと、「外ではつらかったが教室では落ち着いた」といった違いも残せます。記録を増やすほどよいと考えず、本人が話しやすい形を使います。
本番に近い時刻で、過去問を読むときの眠気を確かめる
受験前の準備は、鼻炎の有無を確かめて終わりではありません。問題を解く時間帯にどんな状態で過ごせるかを、普段の学習の中で見ておくと相談が具体的になります。鼻の症状、眠気、解き進められた箇所をまとめて眺めると、本人が負担に感じる場面が見えてきます。その際、点数がよかったかだけを聞くと、途中でつらかった時間が埋もれるので、解いていた間の話も聞きます。
家での過去問と模試では、緊張や問題への慣れが異なります。比べる条件をそろえたい場合は、すでに答えを覚えた問題ばかりを選ばず、取り組む範囲や開始時刻をノートに添えます。途中で読み直した箇所には、難しかったのか眠かったのか、本人が覚えている範囲で書きます。できなかった理由をすべて分類しようとする必要はなく、特にはっきり覚えている場面を残せば話の入口になります。
薬については、本番に向けた扱いを医師や薬剤師に相談し、その説明を踏まえて日常の様子を確かめます。家庭で症状を強めるために外を歩いたり、服用の条件を変えて点数を比較したりする方法は取りません。症状がつらい日に過去問を解き続けることも、準備の目的から外れます。本人が落ち着いて取り組める状態で、いつ眠く感じたかを言葉にすることを優先します。
本番の数週間前には、模試と同じ時刻に過去問へ取り組む機会を設けます。本番で使う予定の薬について医師や薬剤師に相談した内容に沿い、普段どおりに過ごした日の眠気を本人が確かめます。解答を始めた直後は読めたのに後半で眠くなったなら、その箇所を答案に残します。相談に持っていく答案には、点数の横に「眠気が出たのは問題を解いていたどの辺りか」が見える印が加わります。
よくある質問
花粉症があると、高校入試の成績は下がりますか
症状と成績低下が関連した研究はありますが、鼻炎を持つ生徒の成績が一律に低いという結果ではありません。英国の試験を調べた Walker ら(2007)と、韓国の学校成績を調べた Kim ら(2017)では、比べたものも結果も異なります。本人については病名だけで予測するより、模試当日に鼻の症状や眠気でどんな中断があったかを聞き、答案の見直しと合わせて考えるほうが具体的です。
薬で眠くなるのが心配なとき、何を準備して相談しますか
今使っている薬の説明書と、眠くなって困った場面を用意します。「授業中に眠い」だけでなく、いつ使い、どの場面で読み進めにくくなったかを伝えると、相談の内容が具体的になります。鼻の症状が軽くなったかどうかも別に添え、受験の日程や試験の時間帯と一緒に医師や薬剤師に相談します。家庭では薬の変更を点数の比較で判断せず、本人の困り方を伝える準備を進めます。
答案に症状を書くのを子どもが嫌がる場合はどうしますか
症状を書き込むことが負担なら、答案を返すときに「途中で鼻や眠気が気になった場面はあったか」と聞く形でも構いません。答えたくない日まで説明を求めず、本人が話したことを保護者が短く控える方法があります。点数の低さを説明するためだけに聞くのではなく、調子よく解けたときも同じように様子を聞きます。相談時には、本人が伝えたい場面を選んで持っていけます。
この記事の限界
適用範囲は、海外の試験や学校成績、学習課題、日々の認知検査を扱った研究であり、駅まで歩いて通塾する日本の受験生の得点変化を直接測ったものではありません。病歴の申告と試験当日の症状では捉える状態が異なり、薬の使用には症状の重さも関わるため、成績との関連の読み方に違いが生じます。
家庭で答案と症状を並べても、問題の難しさ、学習の進み具合、当日の緊張などが重なり、花粉だけの影響を切り出すことは困難です。日本のスギ・ヒノキの季節と入試の時期を組み合わせて調べた研究はここで扱った文献に含まれず、海外の夏の試験の結果をそのまま日本の入試に当てはめることはできません。
参考文献
- Walker ほか. Seasonal allergic rhinitis is associated with a detrimental effect on examination performance in United Kingdom teenagers: case-control study. J Allergy Clin Immunol. 2007;120(2):381-387.
- Bensnes. You sneeze, you lose:: The impact of pollen exposure on cognitive performance during high-stakes high school exams. J Health Econ. 2016;49:1-13.
- Vuurman ほか. Seasonal allergic rhinitis and antihistamine effects on children’s learning. Ann Allergy. 1993;71(2):121-126.
- Kim ほか. Allergic rhinitis, atopic dermatitis, and asthma are associated with differences in school performance among Korean adolescents. PLoS One. 2017;12(2):e0171394.
- Corpening ほか. Associations between ambient pollen exposure and measures of cognitive performance. Environ Epidemiol. 2025;9(2):e374.
- Jáuregui ほか. Allergic rhinitis and school performance. J Investig Allergol Clin Immunol. 2009;19 Suppl 1:32-39.
改札を出てから扉に着くまでの数分が、続くかどうかを決める。
- 向く人: 授業や練習のあと、駅までの帰り道をできるだけ短くしたい人
- 向く人: 通勤や通学の途中の駅で、乗り換えを増やさずに通いたい人
- 向かない人: 駅から離れた場所へ、車の送り迎えで通うことを前提にしたい人
- 向かない人: 移動をせず、自宅だけで学びや運動を済ませたい人
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花粉症があると、高校入試の成績は下がりますか
症状と成績低下が関連した研究はありますが、鼻炎を持つ生徒の成績が一律に低いという結果ではありません。英国の試験を調べた Walker ら(2007)と、韓国の学校成績を調べた Kim ら(2017)では、比べたものも結果も異なります。本人については病名だけで予測するより、模試当日に鼻の症状や眠気でどんな中断があったかを聞き、答案の見直しと合わせて考えるほうが具体的です。
薬で眠くなるのが心配なとき、何を準備して相談しますか
今使っている薬の説明書と、眠くなって困った場面を用意します。「授業中に眠い」だけでなく、いつ使い、どの場面で読み進めにくくなったかを伝えると、相談の内容が具体的になります。鼻の症状が軽くなったかどうかも別に添え、受験の日程や試験の時間帯と一緒に医師や薬剤師に相談します。家庭では薬の変更を点数の比較で判断せず、本人の困り方を伝える準備を進めます。
答案に症状を書くのを子どもが嫌がる場合はどうしますか
症状を書き込むことが負担なら、答案を返すときに「途中で鼻や眠気が気になった場面はあったか」と聞く形でも構いません。答えたくない日まで説明を求めず、本人が話したことを保護者が短く控える方法があります。点数の低さを説明するためだけに聞くのではなく、調子よく解けたときも同じように様子を聞きます。相談時には、本人が伝えたい場面を選んで持っていけます。