- 学校への徒歩・自転車の移動中には、中高強度の活動がまとまって生じています。
- 日本の小学生でも、通学中の歩きは日常の活動量の大きな部分を占めました。
- 通学中に動いた時間と、車などで通う子との差は、違う数字です。
- 総活動量や体重に差が出なかった研究もあり、徒歩を減量の手段に決めつけません。
- 行きと帰りの歩行時間、週の合計、疲れや安全面を同じ記録で見ます。
塾まで徒歩で通う子は体を動かす量が増えるか|徒歩・自転車通学の研究
「学校への徒歩での往復は、小学生の身体活動全体に大きく寄与した」。日本の小学生を追ったSasayama(2025)の結論を日本語に訳すと、こうなります。塾へ向かう途中の横断歩道で信号を待つ場面も、家と目的地を歩いて結ぶ時間の一部です。武蔵野市内で塾まで歩いて通わせることは、子どもの運動不足の足しになるのでしょうか。学校とは出かける時刻も通う頻度も異なるため、普段の活動とのつながりが気になるところです。
徒歩の通塾は体を動かす機会になりますが、学校への通学研究を読むと、移動中の活動、生活全体の活動、体重の変化は分けて考える必要があります。 歩いた時間を確保することと、そのぶんだけ普段より活動が増えることは別の問いです。通塾の前後に何をしているかや、歩く速さ、実際に歩けた日も一緒に見ると、家庭での判断が具体的になります。横断歩道で安全に待つ時間まで運動時間として数えず、まずは無理なく歩ける部分を捉えることが出発点です。
要点
- 学校への徒歩・自転車の移動中には、中高強度の活動がまとまって生じています。
- 日本の小学生でも、通学中の歩きは日常の活動量の大きな部分を占めました。
- 通学中に動いた時間と、車などで通う子との差は、違う数字です。
- 総活動量や体重に差が出なかった研究もあり、徒歩を減量の手段に決めつけません。
- 行きと帰りの歩行時間、週の合計、疲れや安全面を同じ記録で見ます。
通学中の活動時間は、歩いていた時間の全部ではない
徒歩で通えば運動になる、という考えには、移動の中で体を動かせるという意味があります。研究でよく測られるのは、中高強度の身体活動です。これは、安静時より呼吸や心拍が高まる程度から、それより強い活動までを指します。身体活動にはスポーツだけでなく、移動や遊びに伴う動きも含まれます。
Campos-Garzónら(2023)は、機器で測った活動量を扱う14研究、7127人、年齢6〜18歳をまとめました。系統的レビューは条件を決めて研究を集める方法で、メタ分析は複数の結果をまとめて計算する方法です。このレビューとメタ分析では、徒歩・自転車などで通う際の中高強度活動は、家から学校で8.98分、学校から家で20.07分でした。推定値の幅を示す95%信頼区間は、それぞれ5.33〜12.62分、13.62〜26.53分でした。
この数字が答えるのは、通学という時間帯の中で、どれほどの活動が測られたかという問いです。車で通う場合から歩きに替えたとき、生活全体でその時間が丸ごと増えたという意味ではありません。また、研究ごとの測定期間や通学環境をまとめた数字なので、家庭で歩く目標時間を決める際の基準値として扱うより、移動が活動の場になっているという読み方が適しています。行きと帰りを別々に記録する理由も、この区別にあります。
信号を待つ、立ち止まって荷物を直す、歩調を緩めるなど、通塾の途中には動きの変化があります。出発から到着までの所要時間をそのまま中高強度活動と呼ぶと、止まっていた時間まで含めてしまいます。家庭ではまず歩いていた時間を記録し、待ち時間は別の欄に残すと整理しやすくなります。研究と同じ強度を測ったつもりにならず、日常の歩行を把握する記録として使います。
徒歩通学が日常の活動に占める割合を読む
徒歩だけを取り出したMartinら(2016)のメタ分析では、欧米を中心とする12研究を検討しました。往復の歩きに伴う中高強度活動は、小学生の9標本、3422人で平均17分/日、高校生の4標本、2600人で13分/日でした。登校日の中高強度活動に占める割合は、小学生で23%、高校生で36%でした。歩いて通う子にとって、移動は活動のまとまった部分になっていました。
時間と割合は、どちらも役立つ情報ですが、答える問いが異なります。時間は通学中にどれだけ活動したかを示し、割合はその子の活動全体のうち通学がどれほどを占めるかを示します。ほかの時間帯によく動く子と、座っている時間が長い子では、同じ歩行でも全体に占める位置づけが変わります。割合の大きさだけで、活動の多さや健康状態の良さを順位づけることは避けます。
日本のSasayama(2025)は、小学生を追跡する観察研究で、開始時と追跡時の測定を終えた76人を調べました。開始時の平均年齢は9.6歳で、標準偏差という年齢のばらつきの指標は1.0歳でした。中高強度活動全体に占める徒歩通学の割合は、開始時39.6 ± 15.3%、追跡時49.1 ± 13.8%でした。通学の歩きが、日本の小学生の生活でも活動の大きな部分を担っていた結果です。
この研究は、同じ子どもの通学と日常の動きを追った点に特徴があります。家の周辺での歩きも、学校内の活動や遊びと並べて捉えると、普段の生活の見え方が変わります。塾へ歩く計画を考える場合も、学校への往復ですでに歩いていることを含めて眺めると、通塾だけを過大に期待せずに済みます。普段の活動の土台に何を足すのかを、先に把握しておきます。
車などで通う子との差は、通学中の活動時間より小さい
Denstelら(2015)は、12か国の9〜11歳、6224人を調べた観察研究です。徒歩・自転車などで通う子は、そうでない子に比べ、平日の中高強度活動が6.0分多いという関連がありました。95%信頼区間は4.7〜7.3分で、調査地域による違いも示唆されました。これは通学時間内の活動を数えた値ではなく、通い方の異なる集団どうしを比べた差です。
ここで大切なのは、比較する相手をそろえて研究を読むことです。徒歩通学中にまとまった活動があっても、車で通う子が放課後によく遊んでいれば、日常の差は小さくなります。もともと活発な子が徒歩や自転車を選ぶことも考えられます。このように、通い方と活動量の両方に関係する別の条件を、交絡と呼びます。
| 歩く通塾で期待する変化 | 学校への通学で見られた結果 | 子どもの集団と測定方法 |
|---|---|---|
| 歩いている間は運動になる | 通学中に中高強度活動が測られている | Campos-Garzónら(2023)、子ども・青年の研究をまとめたメタ分析 |
| 歩く子は日常でもよく動く | 徒歩・自転車の通学と平日の活動量に正の関連があった | Denstelら(2015)、複数国の子どもの観察研究 |
| 通い方を変えれば総活動量も増える | 総活動量に明確な差が出ない集団もあった | Zhangら(2020)、スコットランドの小学生の横断研究 |
| 歩く子は体重が軽い | 体重との関連を示した研究は少なかった | Faulknerら(2009)、子ども・青年の系統的レビュー |
家庭で比較するときは、通塾のあった日だけを切り出すより、学校や遊びも含む普段の流れと照らします。体育や外遊びがあった日、家で過ごす時間が長かった日という違いを短く添えます。行きだけ歩いた日と往復歩いた日も分ければ、続けやすい組み合わせが見えてきます。歩くことを追加の課題にする前に、日常の中で動いている場面を拾う方法です。
総活動量や体重に差が出ない研究もある
Zhangら(2020)は、スコットランド北東部の小学校に通う432人を対象に、ある時点で条件を比べる横断研究を行いました。徒歩・自転車などの通学と、車などの通学を比べたところ、日常の総活動量には統計的に明確な差がありませんでした。体格を年齢などに照らして評価する指標、血圧、肺機能についても、明確な差は示されませんでした。通学という部分で動くことと、生活全体や体の指標に差が出ることが一致しない例です。
Faulknerら(2009)の系統的レビューは、子ども・青年を扱う13研究を含んでいました。このうち9研究では、徒歩・自転車で通う子の活動量が多い結果でした。一方、体重を検討した10研究で、体を動かして通う子の体重が軽かったのは1研究でした。活動量についての結果と、体重についての結果には違いがありました。
体重だけを通い方の成績表にすると、歩いているのに変化がないという不満につながります。子どもの体は成長の途中にあり、通塾の方法を選ぶ場面では、移動の負担や生活のゆとりも大事な観察点です。まず見るのは歩く機会が実際に増えたか、移動が負担になっていないか、ほかの活動を圧迫していないかです。体重の変化を約束して徒歩を勧めるより、続けられる移動を整える方が判断を誤りにくくなります。
「歩いて通う子がよく動いていた」という比較には、その子が暮らす環境も含まれています。歩きやすい道があること、家が目的地に近いこと、家族が付き添えることなどは、家庭で確認できる条件です。同じ通い方という名前でも、実際の歩行時間や本人の負担は異なります。ほかの家庭の移動方法をそのまま正解とせず、自分の家庭で続けたときの記録を材料にします。
歩く日を増やす工夫は、安全と疲れを先に確かめる
Villa-Gonzálezら(2018)は、徒歩・自転車通学を促す23の介入をまとめました。介入とは、通い方を変えるための働きかけを行って、その後の変化を見る取り組みです。通学行動への効果は14/23で小さく、研究の質も21/23で弱いと評価されました。勧めることと実際に通い方が変わることの間には隔たりがあり、家庭でも続く条件を整える工夫が要ります。
塾への行き帰りを考えるときは、先に横断歩道とその前後を親子で見ます。車の出入り、見通し、立ち止まれる場所を、実際に使う時間帯に確認します。歩く時間を増やすために危ない道を選んだり、信号に間に合わせようと走ったりする計画は避けます。活動の量を増やす目的が、道路を落ち着いて通るための余裕を奪わないようにします。
転倒や車との接触を避ける配慮は、歩行時間とは別の欄で評価します。荷物で足元が見にくい、靴が合わず歩きづらい、帰りは強く疲れているといった日は、歩く範囲を縮める判断ができます。歩くと痛む子、移動に支援を要する子、帰路で安全を確保しにくい子には、往復を徒歩に固定する計画は向きません。本人がつらさを伝えたら、予定の達成より、その日の移動を楽にすることを優先します。
行きは歩き、帰りは別の方法にするなど、往復を分けて考える余地があります。付き添える日だけ歩く、歩道が使いやすい区間だけ歩くという組み方もあります。休んだ日に埋め合わせの遠回りを設けず、次の通塾で使える条件に戻します。家庭の運用としては、歩いた日を増やすことと、困ったときに方法を替えられることを両立させます。
往復の分数を記録し、週の合計と生活を見比べる
歩く計画を試す前に、今の通塾で何分歩いているかを記録します。家から塾まで全部を歩く場合だけでなく、駅まで、降りてから目的地までの歩きも対象にします。行きと帰りの欄を分け、実際に歩いた分数と、信号などで止まったことを残します。新しい機器をそろえることより、同じ数え方を続ける方が比較しやすくなります。
記録では次の項目を使うと、時間の長短だけに偏りません。歩くことができた日を後からまとめて思い出すより、帰宅後に短く書く形が扱いやすいでしょう。本人の言葉を残せば、保護者からは見えにくい疲れも判断材料になります。書く量を増やしすぎず、続けられる欄だけに絞ります。
- 行きと帰りで、それぞれ実際に歩いた分数を記す。
- 徒歩以外の移動を使った区間と、切り替えた理由を添える。
- 体育や外遊びなど、通塾以外によく動いた場面を書く。
- 足の痛み、疲れ、急いだ場面、道で困った点を残す。
- 週の終わりに歩行時間を合計し、本人の負担と並べて見る。
合計を比べるときは、通塾のあった日数も一緒に見ます。予定が多かった週は歩く機会も増えるため、合計の増減だけでは通い方の改善を評価しにくいからです。同じ曜日の行きや帰りを見比べると、歩ける条件を探しやすくなります。家庭で足した分数は家庭の記録として扱い、研究の中高強度活動の数字とは区別します。
振り返りでは、歩いた後もいつもの生活が送れた日と、負担が残った日を分けます。疲れて外遊びをやめた日や、帰宅後の支度を急いだ日が続いたら、歩く区間や帰りの方法を見直します。反対に、余裕を持って通えた組み合わせは、その家庭の続けやすい選択肢として残します。徒歩の通塾は、研究の平均値を目標に追いかけるより、安全に続いた歩きを生活の中に積み重ねる方法として考えます。
よくある質問
短い距離しか歩けなくても記録する意味はありますか
意味があります。もともと歩いている区間も含めて記録すると、行きと帰りのどこに徒歩を組み込めるかを具体的に考えられます。途中で立ち止まった時間や、荷物の負担も併記すれば、同じ経路でも日によって歩きやすさが違うことを把握できます。長くすることを先に決めず、今の歩きが無理なく続くかを見る記録として使い、行き帰りの組み合わせを選びます。
徒歩と自転車のどちらを選べばよいですか
この題目で扱う研究には、徒歩と自転車をまとめて車などと比較したものと、徒歩だけを取り出したものがあります。研究を読む際は、結果がどの移動方法についてのものかを確認します。家庭では、自転車なら扱いや駐輪を含む負担、徒歩なら歩ける経路と疲れを見て、実際の移動に必要な条件を比べます。活動量を理由に移動方法を先に固定するより、子どもが安全に通える選択肢から検討します。
歩いて通っても体重が変わらなければ、効果がないのでしょうか
体重だけで徒歩の意味を判定する必要はありません。Faulknerら(2009)のレビューでも、活動量との関連に比べ、体重との関連を示した研究は少ないという結果でした。通塾の記録では、体重の増減を目標にせず、無理なく体を動かす機会が生活に残ったかを見ます。歩くことが負担になった日も記しておくと、続ける範囲を決めやすくなります。
この記事の限界
適用範囲は主に学校への登下校であり、夕方から夜に週数回通う塾への往復や、東京の子どもの通塾距離と活動量を直接調べた研究は、ここで扱った文献には見つかりませんでした。日本の小学生の追跡結果も、通塾の曜日、夜道、荷物の条件を評価したものではないため、家庭の記録でその違いを補って考える必要があります。
徒歩通学の研究には観察研究が多く、通い方そのものによる変化と、もともとの活発さや家庭環境による違いが混ざります。また、通学中の活動を測った結果は、夜の経路の安全性やけがの少なさを示す指標ではなく、歩く計画には活動量とは別に道と疲れの確認を組み込みます。
参考文献
- Campos-Garzón P, et al. Contribution of active commuting to and from school to device-measured physical activity levels in young people: A systematic review and meta-analysis. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. 2023;33(11):2110-2124.
- Martin A, et al. Contribution of Walking to School to Individual and Population Moderate-Vigorous Intensity Physical Activity: Systematic Review and Meta-Analysis. Pediatric Exercise Science. 2016;28(3):353-363.
- Sasayama K. Contribution of walking to and from school on overall physical activity: a one-year follow up study. PLoS One. 2025;20(3):e0318355.
- Denstel KD, et al. Active school transport and weekday physical activity in 9-11-year-old children from 12 countries. International Journal of Obesity Supplements. 2015;5(Suppl 2):S100-6.
- Faulkner GE, et al. Active school transport, physical activity levels and body weight of children and youth: a systematic review. Preventive Medicine. 2009;48(1):3-8.
- Zhang X, et al. Active travelling to school is not associated with increased total daily physical activity levels, or reduced obesity and cardiovascular/pulmonary health parameters in 10–12-year olds: a cross-sectional cohort study. International Journal of Obesity. 2020;44(7):1452-1466.
- Villa-González E, et al. Systematic review of interventions for promoting active school transport. Preventive Medicine. 2018;111:115-134.
改札を出てから扉に着くまでの数分が、続くかどうかを決める。
- 向く人: 授業や練習のあと、駅までの帰り道をできるだけ短くしたい人
- 向く人: 通勤や通学の途中の駅で、乗り換えを増やさずに通いたい人
- 向かない人: 駅から離れた場所へ、車の送り迎えで通うことを前提にしたい人
- 向かない人: 移動をせず、自宅だけで学びや運動を済ませたい人
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短い距離しか歩けなくても記録する意味はありますか
意味があります。もともと歩いている区間も含めて記録すると、行きと帰りのどこに徒歩を組み込めるかを具体的に考えられます。途中で立ち止まった時間や、荷物の負担も併記すれば、同じ経路でも日によって歩きやすさが違うことを把握できます。長くすることを先に決めず、今の歩きが無理なく続くかを見る記録として使い、行き帰りの組み合わせを選びます。
徒歩と自転車のどちらを選べばよいですか
この題目で扱う研究には、徒歩と自転車をまとめて車などと比較したものと、徒歩だけを取り出したものがあります。研究を読む際は、結果がどの移動方法についてのものかを確認します。家庭では、自転車なら扱いや駐輪を含む負担、徒歩なら歩ける経路と疲れを見て、実際の移動に必要な条件を比べます。活動量を理由に移動方法を先に固定するより、子どもが安全に通える選択肢から検討します。
歩いて通っても体重が変わらなければ、効果がないのでしょうか
体重だけで徒歩の意味を判定する必要はありません。Faulknerら(2009)のレビューでも、活動量との関連に比べ、体重との関連を示した研究は少ないという結果でした。通塾の記録では、体重の増減を目標にせず、無理なく体を動かす機会が生活に残ったかを見ます。歩くことが負担になった日も記しておくと、続ける範囲を決めやすくなります。