- 安全と感じる人ほど身体活動が多いという集計結果がある一方、関連が見られない研究も多くあります。
- 同じ人を追った研究では、安全の感じ方の変化と歩行の変化は結びつきませんでした。
- 歩く目的地の多さが、犯罪と歩行の見かけ上の関連に関わる場合があります。
- 不安の強い道を我慢して通らず、帰路、クラスの終了時刻、帰宅時刻の共有方法を別々に確かめます。
夜道が不安で運動に通えない|治安の感じ方と身体活動の研究
国立の家から夜のヨガへ向かう横断歩道で、帰りにこの先を歩くのが不安になったら、それは運動に通う量にも関係するのでしょうか。青になるのを待つ間に、向こう側の通りにどれだけ人がいるかを見渡します。今は開いている店も練習を終える頃には閉まっているかもしれず、開始時刻の様子だけでは帰る際の安心感まで見通せません。安全と感じる人ほど身体活動が多い傾向はありますが、不安を減らせば運動が増えると一律には言えず、帰路と帰る時刻を具体的に見直すことが出発点になります。
「運動する気が足りない」と自分を責める前に、何が通う障害になっているかを切り分けたいところです。暗い区間が気になるのか、人通りが途切れるのか、帰宅が遅くなること自体が負担なのかで、変えられる条件は違います。研究でも、犯罪への不安、記録された犯罪、日常の歩行は別々に扱われており、結果はそろっていません。ヨガはここでは夜に通う運動の一例で、取り上げるのは治安の感じ方と身体活動を調べた研究です。
要点
- 安全と感じる人ほど身体活動が多いという集計結果がある一方、関連が見られない研究も多くあります。
- 同じ人を追った研究では、安全の感じ方の変化と歩行の変化は結びつきませんでした。
- 歩く目的地の多さが、犯罪と歩行の見かけ上の関連に関わる場合があります。
- 不安の強い道を我慢して通らず、帰路、クラスの終了時刻、帰宅時刻の共有方法を別々に確かめます。
安全だと感じる人ほど活動量が多いという結果
「夜道が怖いと外に出る機会が減る」という考えは、日常の実感に沿っています。研究でいう身体活動は、教室での練習だけでなく、移動や余暇に体を動かすことも含む広い言葉です。通う道で感じる不安と、通った先で運動したい気持ちは、同時に存在していても不思議ではありません。まずは、安全の感じ方と活動量を同じ時点で比べた結果から見ていきます。
Rees-Punia ら(2018)は、横断研究という、ある時点の状態どうしを比べる調査を16本集めました。複数の研究の結果を統計的にまとめるメタ分析では、犯罪から安全だと感じる人は、そうでない人より身体活動が多い状態にあるオッズが27%高い結果でした。オッズは、ある状態になる場合とならない場合の比で、ここでは活動量が何割増えたかを表すものではありません。安全と答えた人の運動時間が27%長かった、という読み方とは違います。
同じRees-Punia ら(2018)の集計では、客観的に測った犯罪が多い地域に住む人は、身体活動が多い状態にあるオッズが28%低くなっていました。一方、安全の感じ方に関する結果には研究間で大きなばらつきがありました。著者らは、犯罪から安全でないという感覚が活動を制限する可能性を踏まえ、その関連を左右する条件をさらに調べる必要があるとしています。全体の傾向と、場所や人による違いを合わせて読む結果です。
この結果を通う予定に照らすなら、運動そのものと往復の道を分けて考えると整理しやすくなります。練習はしたいのに帰りだけ気になるなら、検討する対象は練習内容より帰宅までの移動です。反対に、明るい時間にも通う気が進まないなら、道以外の負担も振り返れます。本人が止まってしまう場面を言葉にすることで、予定のどこを動かすかが見えてきます。
関連が見られない研究も多い
安全の感じ方と活動量の関係は、どの調査でも同じように現れるわけではありません。da Silva ら(2016)は、成人を対象とする500人以上の調査を含め、89本の論文を集めた系統的レビューを行いました。系統的レビューは、条件を定めて研究を集めて吟味する方法です。そのうち42.7%では安全と身体活動が期待された方向で関連し、47.2%では統計的に有意な関連、つまり偶然の変動だけでは説明しにくい関連が見られませんでした。
da Silva ら(2016)では、期待と逆方向の関連を報告した論文も10.1%ありました。さらに、論文の84.3%が高所得国の研究で、先に状態を測ってから追跡する論文は3本でした。著者らは、主に横断研究からなる証拠全体では、身体活動と犯罪からの安全との関連を支持しないと結論づけています。肯定的な研究だけを選ぶと、全体像を取り違えます。
| 安心感と運動への見方 | 身体活動・歩行との関連 | 横断調査と追跡の違い |
|---|---|---|
| 安心できる地域なら活動量が多い | 平均するとその方向の関連があったが、研究による差が大きかった | Rees-Punia ら(2018)、横断研究のメタ分析 |
| 安全と感じれば多くの人がよく動く | 期待された関連、逆方向、関連なしの報告が混在した | da Silva ら(2016)、成人の研究を集めたレビュー |
| 安心感が増せば歩く量も増える | 安全の感じ方の変化と歩行の変化に関連はなかった | Kerr ら(2015)、成人の追跡研究 |
同じ人を追うと、歩行の変化は結びつかなかった
安全に感じる人と不安を感じる人を比べる方法では、もともとの生活の違いが結果に重なります。歩く用事の多さや外出のしやすさが違えば、同じ地域に住んでいても活動量は違ってきます。通う計画に近いのは、「本人の感じ方が変わったとき、歩く量も変わるか」という見方です。その問いに関わる追跡研究があります。
Kerr ら(2015)は、成人796人を10年にわたって調べ、安全の感じ方の変化と、移動のための歩行、余暇の歩行の変化を比べました。どちらの歩行でも、安全の感じ方の変化との関連は見られませんでした。警察に記録された犯罪も調べており、殺人が増えた地域に住むことは移動のための歩行の減少と関連しましたが、その他の関連は見られませんでした。安心感の変化と歩行の変化が、そのまま並んで進む結果ではなかったのです。
この読み方は、不安を感じる本人の判断を否定するものとは別です。集団で関連が出なかったことと、ある人が帰り道を理由に予定を取りやめることは両立します。本人の予定を考える場面では、「安心できるようになるまで気持ちを変える」より、帰る時間帯や通りの選択を検討するほうが具体的です。道を変えた後も通いにくさが残ったら、仕事の終わりとの兼ね合いや帰宅後の予定も同じ紙に並べられます。
試す前には、何を比べたいかを絞っておくと振り返りやすくなります。帰り道の違いを見たいなら、クラスの内容を同時に変えず、通った後にどの区間でためらったかを思い出します。帰る時間帯の違いを見たいなら、道筋はなるべく同じ条件にします。出席できたかだけでなく、出発前の迷いと帰宅までの負担を分けて見れば、自分に合う変更を探しやすくなります。
歩く目的地の多さが、結果を複雑にする
犯罪の多さと歩行の多さを単純に反対の関係と考えると、逆方向の結果は奇妙に見えます。けれども、歩いて行く目的地が多い地域では、歩く用事が生まれる一方で、犯罪が起きる機会も変わります。安全の指標だけを見ると、その背景が抜け落ちます。街の構造を一緒に調べた研究は、この問題を考える助けになります。
Foster ら(2014)は、西オーストラリアの健康と生活に関する調査に答えた25〜65歳の成人3,487人について、近隣の犯罪と歩く頻度を調べました。当初は犯罪と歩行頻度に正の関連、つまり一方が多いほど他方も多い関係がありましたが、地域の目的地の存在を分析に加えると、その関連は弱まりました。著者らは、目的地が歩行を促すとともに犯罪も引き寄せるという、歩きやすい環境の性質が結果に関わっていると解釈しています。犯罪が歩行を増やすという意味で読むのではなく、両方に関わる環境を見る研究です。
Foster ら(2008)も、安全と身体活動の研究では、何を測ったかが曖昧な場合があると指摘しています。「安全」という質問に犯罪の心配を暗に含めたり、異なる事柄をまとめて点数にしたりすると、どの不安を捉えたのかが見えにくくなります。また、近隣の犯罪が関わりやすい活動として、地元の屋外で行う活動に目を向けています。運動全体の量と、近所を歩く量を区別する視点が必要です。
帰路でも、「人が多いから安心」「明るいから平気」と一語で済ませず、実際に通る区間を見ます。たとえば、明るい通りへ出るまでに人通りの少ない区間が残るなら、その部分も含めて道を比べます。店の灯りを目印にするなら、行きに開いているかより、帰る時間にどうなっているかを確かめます。通り全体の印象を、曲がり角や横断する場所ごとの条件へ置き換える見方です。
危険を避ける自信と、無理に歩くことは別
Roman ら(2024)は、米国の都市圏で、思春期の人から高齢者まで2,302人を調査しました。この横断研究では、自宅の近隣に犯罪への心配がある人ほど、余暇の歩行を近隣の外で行うことが多くなっていました。また、危険を避けたり対処したりできるという本人の感覚は、近隣の内外どちらの余暇の歩行とも強く関連していました。場所を変える行動と、自分で対処できるという感覚の両方に目を向けた結果です。
この「対処できる」という感覚を、怖さに耐えて歩く力と読み替えると、通う計画を誤ります。通りを変更する、早い時間に帰る、夜の往復が生じない予定にすることも、自分で選べる対応です。危険を感じる道へ慣れるために繰り返し入る必要はありません。家族や周囲の人も、「自分は気にならない」という理由で本人の判断を押し切らず、通れる条件を一緒に探すほうが話を進めやすくなります。
道の比較を試す場合も、怖い区間へ単独で入り、不安の強さを測り切ろうとしないことが大切です。すでに避けたい具体的な事情がある道は候補から外し、昼間の下見や同行を頼む形で検討します。遠回りにしたために疲れが増えたり、帰宅を急いで横断時の確認がおろそかになったりするなら、その道も見直す対象です。歩く量を増やすことより、無理なく帰れる条件を優先します。
帰宅の見込みを家族に知らせる場合は、出発時に知らせるのか、教室を出た時点で知らせるのかを具体的にします。毎回の操作が負担にならない方法を選び、道や時刻が変わったときに共有する内容も合わせます。つきまといなど具体的な危険について困っている場合は警察への相談につなぎ、個人の工夫だけで抱え込まないようにします。不安への対応は性別で一括りにせず、その人が気になる状況に合わせて考えます。
帰路と終了時刻を、実際の通い方に合わせる
最初の比較は、普段考えている最短の道と、明るい通りを選ぶ道です。安全に試せる範囲でそれぞれ一度歩き、帰宅後に「足が止まりそうになった場所」「落ち着いて歩けた場所」を地図へ書き込みます。距離の短さだけで選んでいたときには見えていなかった違いを、道筋として残せます。歩いている最中に記録へ集中する必要はなく、周囲を見ることを優先します。
次に、帰りの時刻を早められるクラスがあるなら、その場合の往復を考えます。同じ道でも、終了時刻が違えば店の開閉や人通りの様子が変わるため、行きに見た景色だけでは比較が終わりません。早いクラスへ向かうために仕事の後で急ぐことになるなら、その負担も書き添えます。夜道の不安が軽くなったかと、予定全体が窮屈になったかを別々に見れば、続けやすい時間帯を選びやすくなります。
帰宅時刻を共有する方法も、道と時間帯の変更に合わせて試します。知らせたことで本人の気持ちが落ち着くのか、操作が増えて煩わしくなるのかを振り返ります。道を変えること、早いクラスを選ぶこと、帰る見込みを共有することのうち、自分の負担が軽くなるものを残せます。いずれも実生活での比較として行い、怖いまま通い続けることを達成目標にしない姿勢が大切です。
最後に地図を開き、街灯と帰る時間にも開いている店の多い通りをつないで、家までの道筋を引き直します。途中で暗い区間へ戻る箇所がないかを見て、下見や同行も使いながら、歩ける条件のときにその帰路を一度たどります。横断歩道の信号待ちも含めて玄関に着いた時刻を確かめ、選んだクラスの終了時刻と並べます。地図上で選んだ道が帰宅までの予定に収まるかを、実際の到着時刻で確かめられます。
よくある質問
夜道を怖がるのは、運動する意欲が低いからですか
練習をしたい気持ちと、帰りに不安を感じることは分けて考えられます。活動量の多い人と安全だと感じる人の関連を調べた研究も、個人の意欲を採点しているわけではありません。帰りのどの場面でためらうかを言葉にし、道や時刻を変えた場合を比べるほうが、通う予定の調整につながります。周囲の人が平気だと感じる道でも、本人の不安を小さく扱う必要はありません。
明るい通りに変えれば、安全と考えてよいですか
明るさは道を選ぶ際の確認項目ですが、それだけを合格の印にしないようにします。帰る時間の人通り、店の開閉、途中で暗い区間へ入る箇所、横断する場所まで含めて見ます。明るい道へ遠回りした結果、帰宅が遅くなり急ぎたくなるなら、終了時刻との組み合わせも見直せます。危険を感じる区間が残るときは、その道を試し続けることより別の帰り方を検討します。
不安が残る日は、夜の教室を休んでもよいですか
夜の往復を避ける日があっても、運動への関心まで失ったと捉える必要はありません。早く終わるクラスや明るい時間の予定など、帰り道の条件が違う選択肢を検討できます。試した道が合わなかった場合も、本人の努力不足に戻さず、どの区間や時間帯が負担だったかを見ます。通えるかどうかの判断には、練習の魅力と同じように、帰宅までの負担を含めてよいのです。
この記事の限界
比較されているのは、安全の感じ方が異なる人や地域の活動量であり、帰路を明るい道へ変えた人と変えなかった人を割り付けて試した結果ではありません。犯罪の記録、本人の不安、移動と余暇それぞれの歩行など、測った内容が研究ごとに異なるため、夜の教室へ通う回数との関係を一つの数値で示すことはできません。
道を歩き比べて得られるのは、本人がその時刻の通りをどう感じ、何時に帰宅したかという、その場の条件に結びついた記録です。根拠の大半を占める海外の横断研究から、日本の駅前を夜に歩いて運動へ通う際の不安と活動量を理解するには、地域と時間帯に即した調査が必要です。
参考文献
- Rees-Punia ほか. Crime, perceived safety, and physical activity: A meta-analysis. Prev Med. 2018;111:307-313.
- da Silva ほか. Physical Activity and Safety From Crime Among Adults: A Systematic Review. J Phys Act Health. 2016;13(6):663-670.
- Kerr ほか. Changes in walking associated with perceived neighborhood safety and police-recorded crime: The multi-ethnic study of atherosclerosis. Prev Med. 2015;73:88-93.
- Foster ほか. The built environment, neighborhood crime and constrained physical activity: an exploration of inconsistent findings. Prev Med. 2008;47(3):241-251.
- Foster ほか. Does walkable neighbourhood design influence the association between objective crime and walking? Int J Behav Nutr Phys Act. 2014;11:100.
- Roman ほか. Crime-related perceptions and walking for recreation inside and outside one’s home neighborhood. Health Place. 2024;89:103316.
改札を出てから扉に着くまでの数分が、続くかどうかを決める。
- 向く人: 授業や練習のあと、駅までの帰り道をできるだけ短くしたい人
- 向く人: 通勤や通学の途中の駅で、乗り換えを増やさずに通いたい人
- 向かない人: 駅から離れた場所へ、車の送り迎えで通うことを前提にしたい人
- 向かない人: 移動をせず、自宅だけで学びや運動を済ませたい人
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夜道を怖がるのは、運動する意欲が低いからですか
練習をしたい気持ちと、帰りに不安を感じることは分けて考えられます。活動量の多い人と安全だと感じる人の関連を調べた研究も、個人の意欲を採点しているわけではありません。帰りのどの場面でためらうかを言葉にし、道や時刻を変えた場合を比べるほうが、通う予定の調整につながります。周囲の人が平気だと感じる道でも、本人の不安を小さく扱う必要はありません。
明るい通りに変えれば、安全と考えてよいですか
明るさは道を選ぶ際の確認項目ですが、それだけを合格の印にしないようにします。帰る時間の人通り、店の開閉、途中で暗い区間へ入る箇所、横断する場所まで含めて見ます。明るい道へ遠回りした結果、帰宅が遅くなり急ぎたくなるなら、終了時刻との組み合わせも見直せます。危険を感じる区間が残るときは、その道を試し続けることより別の帰り方を検討します。
不安が残る日は、夜の教室を休んでもよいですか
夜の往復を避ける日があっても、運動への関心まで失ったと捉える必要はありません。早く終わるクラスや明るい時間の予定など、帰り道の条件が違う選択肢を検討できます。試した道が合わなかった場合も、本人の努力不足に戻さず、どの区間や時間帯が負担だったかを見ます。通えるかどうかの判断には、練習の魅力と同じように、帰宅までの負担を含めてよいのです。