- 水を追加した子どもで、渇きや目で探す注意課題に改善が出た試験があります。
- 視覚の記憶や注意の持続では、改善が出なかった課題もあります。
- 学校での水分状態と短期記憶の関連は、授業や入試の成績とは分けて読みます。
- 研究で用いた水の量を家庭の目標にせず、飲める機会と本人の渇きを確かめます。
- 水分量を医師から決められている子は、その指示を優先します。
駅から歩いて塾に着いた子は水を飲むと集中できるか|水分補給と子どもの注意の研究
田無駅のバス停から塾へ向かう子が、着いてから水を飲むと、授業に集中しやすくなるのでしょうか。バスを降りて歩き始めるとき、水筒はかばんに入っていても、本人が渇きを口にするとは限りません。バス停でかばんの口を開け、水筒をすぐ取り出せるか確かめると、移動の合間に飲む機会があるかも気になります。飲む機会を用意することと、勉強への効果を期待することを分けると、研究の読み方がはっきりします。
水を飲むと目で探す注意課題がよくなった試験はありますが、注意を持続する力まで一様によくなる結果ではありません。 同じ「集中」という言葉でも、文字を見つけること、合図を待ち続けること、聞いた数字を覚えておくことは、研究では別々に測られています。渇きが和らいだという本人の感覚も、課題の正答とは異なる大切な情報です。授業前の水を成績のための決まりにするより、子どもがどの場面で渇きを感じ、いつ飲めるかを確かめる方が、家庭での行動に結びつきます。
要点
- 水を追加した子どもで、渇きや目で探す注意課題に改善が出た試験があります。
- 視覚の記憶や注意の持続では、改善が出なかった課題もあります。
- 学校での水分状態と短期記憶の関連は、授業や入試の成績とは分けて読みます。
- 研究で用いた水の量を家庭の目標にせず、飲める機会と本人の渇きを確かめます。
- 水分量を医師から決められている子は、その指示を優先します。
「集中した」を、何が変わったかに分ける
水を飲んだあとに問題へ向かう姿を見ると、「集中力が戻った」と受け止めたくなります。ただ、その言葉には、机に向かう気分、問題を見落とさない注意、説明を聞き続けることなどが混ざっています。水の研究を読むときは、最初に何を測ったかを確かめる必要があります。見つける課題の改善を、授業の終わりまで気が散らないという意味に広げると、結果の受け取り方が変わってしまいます。
子どもを対象にした Edmonds ら(2009)の研究には、追加の水を飲む組と飲まない組を比べたものがあります。目で目的の文字を探して印をつけるような課題は、視覚的な注意、つまり目から入る情報の中で必要なものに注意を向ける働きを測ります。一方、Benton ら(2009)は、合図のあとに現れる光に反応する課題で、注意を保つ働きを調べています。見ている働きをそろえてから読むと、よい結果と差のない結果の両方を受け止めやすくなります。
家庭で授業後の様子を尋ねるなら、「集中できたか」だけで話を終えない方法があります。問題を読み始めやすかったのか、説明を聞く途中で気がそれたのか、渇きが気にならなくなったのかを、本人の言葉で聞きます。答えを誘導せず、変化を感じなかったという返事もそのまま受け取ります。こうすると、水を飲んだことへの評価と、授業中に起きたことを別々に話せます。
| 水を飲むことへの期待 | 注意・水分状態の知見 | 飲む条件をどう比べたか |
|---|---|---|
| 水を飲むと目の前の課題に向かいやすい | 視覚的な注意課題で改善が出ました | 子どもを水の追加あり・なしに分けた Edmonds ら(2009)の試験 |
| 水を飲むと注意が長く続く | 注意の持続に有意な差は出ませんでした | 同じ子どもの飲む日と水を提供しない日を比べた Benton ら(2009)の試験 |
| 水の効果はいつでも同じ | 水分状態や測定方法を考慮する必要があります | Perry ら(2015)の実験と Masento ら(2014)の総説 |
目で探す課題では改善が出た
追加の水を調べた Edmonds ら(2009)の試験では、7〜9歳の58人を、水を追加する組と追加しない組に無作為に分けました。無作為に分けるとは、くじ引きのような方法で所属する組を決めることです。水を飲んだ組は、比べた組より自分の渇きを弱く評価し、文字を探す課題や間違いを探す記憶課題の成績がよかったという結果でした。ここで見えたのは、飲んだあとの課題と渇きの評価の違いです。
飲む前後の変化を調べた別の Edmonds ら(2009)の試験は、6〜7歳の23人が対象でした。水を飲む条件と飲まない条件を比べると、飲む組では渇きや幸福感の評価、視覚的な注意、視覚探索に改善が出ました。視覚探索は、目で見たものの中から目的のものを探す働きです。一方、視覚の記憶や、見た情報に合わせて手などを動かす働きには改善が出ませんでした。
この結果の特徴は、同じ試験の中にも変わった項目と変わらなかった項目があることです。注意と記憶を一括りにして「頭がよく働く」と表すより、目で探す課題で差が出たと読む方が正確です。渇きが和らぐこと自体にも意味がありますが、それを覚えた内容が長く残ることと同じ扱いにはしません。子どもの返事が「飲んで楽になった」なら、まずはその感覚を受け止めればよいのです。
授業の準備に置き換えるなら、水筒を持っているかだけでなく、取り出して飲める流れになっているかを見ます。かばんの奥にしまい、教材を出したあとには触らなくなるなら、準備の順番について本人と相談します。水を飲むたびに学習への変化を尋ねる必要はなく、渇いたときに飲めたかを確かめる程度で十分です。研究の課題を家庭で再現することより、本人が水を飲める場面を見つけることが先になります。
短期記憶との関連は、課題によって向きが違う
Fadda ら(2012)は、暑い気候の南イタリア・サルデーニャで暮らす9〜11歳の168人について、学校で追加の水を飲むことと認知課題を調べました。認知課題とは、覚える、考える、注意を向けるといった働きを測る課題です。学校の始まりに、研究上の基準で軽い脱水状態だった子は84%でした。脱水状態は尿を採取して判定しており、保護者が顔つきや水筒の残りから判断した数字ではありません。
Fadda ら(2012)は、脱水の程度と、聞いた数字をどれだけ覚えておけるかという課題との間に、負の相関を報告しています。負の相関とは、一方が大きいほど他方が小さくなる関係です。著者らは、学校で追加の水を飲むことが短期記憶に役立つことを示すと結論づけています。一方で、言葉の関係から答えを考える類推課題では、脱水との関連が逆向きに出ていました。
短期記憶は、情報を短い間とどめておく働きです。聞いた数字の課題と、言葉の関係を考える課題では、求められる作業が異なります。この研究を読むときも、学校で水を追加したという条件と、尿の指標と課題成績が関連したという結果を区別します。相関は結果どうしの結びつきを示すもので、ある子の成績の変化を水だけが引き起こしたと決める材料とは別です。
学校の始まりに体の水分を調べた点は、塾へ着いた瞬間だけに目を向けないための手掛かりになります。家を出る前に飲めたか、移動中に水筒を開ける機会があったか、授業の休みに飲めるかという流れで考えます。ただし、サルデーニャで調べた子どもの割合を、田無駅から通う子どもの割合として用いることはできません。家庭では集団の数字を当てはめるより、その日の本人の渇きと飲む機会を見ます。
注意が続くかは別の試験で確かめられている
Benton ら(2009)は、平均年齢8歳7か月の40人を、午後に300 mlの水を飲んだ日と、水を提供しなかった別の日に調べました。同じ子どもが異なる条件で課題を行う比較です。注意の持続は、音の予告のあとに現れる光へ反応する課題で測りました。結論では、水を飲んだかどうかによる持続的な注意への有意な影響は認められませんでした。
有意な差とは、統計上、偶然のばらつきだけでは説明しにくいと判断された差を指します。Benton ら(2009)の結果は、飲むだけで注意が続くという期待に歯止めをかけます。一方、目で探す課題を測った Edmonds ら(2009)の結果と並べると、「注意」という名前の中にも測り方の違いが見えます。家庭で気になるのが説明を聞き続けることなら、文字探しの結果だけに期待を寄せない読み方が必要です。
Perry ら(2015)は、9〜12歳の52人を異なる実験条件で調べ、体の水分状態が飲水の効果を左右する点を扱いました。水を飲む実験では、標準的な朝食に200 mlの水を添え、最初の測定後、2時間をかけて750 mlを飲み、その後に再び測定しました。著者らは、時間を通じて適切な水分状態を保つことが、認知機能の改善に重要かもしれないと結論づけています。これは、水の量だけを切り出すより、飲む前から測定までの条件を合わせて読むべき研究です。
Masento ら(2014)の総説は、複数の研究を読み合わせ、認知の測り方の不統一や、水分状態を客観的に測る指標の不足を指摘しています。総説は、ひとつの試験の成績を示すものではなく、研究の全体像と方法上の課題を検討するものです。家庭で水を飲んだ日によい手応えがあっても、問題の難しさや眠さ、授業前の気分などを一緒に振り返る余地があります。飲んだ量を増やす前に、何をもって「集中した」と判断したかを確かめる方が、話を進めやすくなります。
飲む量を競わせず、飲める時間を整える
研究で示された量は、その実験の手順の一部です。Benton ら(2009)の午後の比較と Perry ら(2015)の朝食から始まる実験では、飲むまでの流れも測定の仕方も異なります。そこで使われた量を、授業前に飲み切る家庭の目標に置き換えないようにします。どれだけ飲んだかを子どもの努力の評価にせず、渇きを伝えて飲めることを目標にします。
授業前に慌ただしく水を飲ませるより、教材を準備する流れの中に飲む機会を置く方法があります。席に着く前に飲めるのか、水筒をどこに置けるのか、休み時間には飲めるのかを教室の決まりに沿って確かめます。水筒を用意していても、取り出すのが面倒、授業に遅れそう、トイレに行きにくいと感じる子も想定して話を聞きます。親が量を決める前に、飲むのをためらう理由があるかを知ることが大切です。
腎臓や心臓の病気で水分の量を決められている子は、主治医の指示に従います。学習のために追加で飲ませるという判断で、その指示を変更しないようにします。水筒をどの程度持たせるか、授業前後の飲み方をどう扱うかが気になる場合は、通塾の予定とともに主治医へ相談します。家庭と教室で異なる対応にならないよう、必要な範囲で決まった飲み方を共有します。
害への配慮としては、飲むことを強制しない運用も欠かせません。飲むと苦しい、気持ちが悪いと本人が伝えたら、集中させるために飲み続けさせるのをやめ、保護者や教室の大人に知らせるようにします。体調への心配が続く場合は、医療機関に相談する事柄として扱います。授業を頑張るための水が、本人にとって我慢を求められる課題にならないようにします。
渇き、水筒、本人の観察をつなげる
まず、家を出る前、塾に着いたとき、授業の休みに、のどの渇きを同じ言葉で聞く方法があります。「渇いていない」「少し渇いた」「かなり渇いた」のように段階を決めておくと、本人も答えやすくなります。これは家庭で話すための目安で、研究用の測定や診断ではありません。離れている時間は保護者へ逐一報告させず、本人が気づける言葉を用意する程度から始めます。
次に、帰宅後に水筒の残りを見て、その日どの場面で飲んだかを聞きます。出発時の入れ方を把握しておけば、残りは飲んだ量のおおまかな目安になります。途中で水を足したり、こぼしたりした場合は、その出来事も合わせて考えます。空になったことを褒める競争にはせず、渇いたのに飲めなかった場面があれば、次の通塾で変えられる手順を探します。
尿の色については、トイレに行った本人が普段との違いに気づく習慣として扱います。親が毎回見せるよう求めたり、色からその日の学習の出来を判定したりする使い方は避けます。Fadda ら(2012)が用いたのは尿を採取して調べる方法であり、家庭で色を見る行為とは測り方が異なります。気になる変化や体調の訴えは、本人から大人へ伝えるきっかけとして受け止めます。
次の通塾までに具体的に決めておきたいのは、水筒を忘れたときに誰へ伝えるかです。教室に着いてから気づいた場合の相談相手を、子どもと保護者で確認しておきます。忘れたことを叱られると思って渇きを隠すことのないよう、まず伝えればよいという約束にします。荷物の点検と合わせて、困ったときに声をかける相手の名前まで本人が言える状態にしておきます。
よくある質問
水を飲めば、学校や塾の成績もよくなりますか
ここで扱った試験の測定項目は、目で探す注意、注意の持続、記憶などの課題です。授業で習った単元の理解や入試の結果を測ったものとは区別します。目で探す課題の改善と、学校や塾で理解が深まることの間には、測っている内容の違いがあります。水を飲む機会を設けるときは、点数の上昇を約束にするより、渇いたときに飲めたか、飲むのに困る場面がなかったかを本人と話すとよいでしょう。
授業の直前に、まとめて飲ませた方がよいですか
Perry ら(2015)の実験は朝食から始め、その後も時間をかけて水を飲む流れでした。授業の直前にまとめて飲むという家庭の手順とは異なります。水筒を用意することと、飲む時間を確保することを合わせて考えます。研究の量や時刻を再現しようとするより、出発前、到着後、休み時間に飲める場所と機会を確かめ、本人が飲みにくいと感じる場面を減らすことから考えます。
水筒がたくさん残っていたら、飲ませるべきですか
残りだけで決める前に、本人がどこで飲んだか、渇きはどうだったかを聞きます。別の場所で水を飲んだことや、飲みたいのに機会がなかったことなど、同じ残量でも事情は異なります。飲んだ量の多さを、その日の過ごし方の良し悪しの基準にする必要もありません。持ち帰った水を帳尻合わせで飲ませるのではなく、飲めなかった理由があるなら、次に水筒を取り出せるタイミングを本人と決めます。
この記事の限界
比較の条件は、水を追加する組としない組、同じ子どもの異なる日、飲む前後などで異なり、注意の課題も文字を探すものから合図に反応するものまで幅があります。体の水分状態の測定にも不ぞろいがあるため、これらをひとつの効果としてまとめ、授業前の適量や効果が続く時間を決めることはできません。
田無駅から歩いて塾に着いた直後の子どもを調べた試験は、この研究群にはなく、紹介したのは別の環境で行われた課題の結果です。家庭で提案した渇きの聞き方、水筒の残り、尿の色の確認は、本人の様子と飲む機会を話し合う手段であり、研究上の検査や学習効果の測定に代わるものではありません。
参考文献
- Edmonds CJ, et al. Should children drink more water?: the effects of drinking water on cognition in children. Appetite. 2009;52(3):776-779.
- Edmonds CJ, et al. Does having a drink help you think? 6-7-Year-old children show improvements in cognitive performance from baseline to test after having a drink of water. Appetite. 2009;53(3):469-472.
- Fadda R, et al. Effects of drinking supplementary water at school on cognitive performance in children. Appetite. 2012;59(3):730-737.
- Benton D, et al. The effect of the consumption of water on the memory and attention of children. Appetite. 2009;53(1):143-146.
- Perry CS, et al. Hydration status moderates the effects of drinking water on children’s cognitive performance. Appetite. 2015;95:520-527.
- Masento NA, et al. Effects of hydration status on cognitive performance and mood. Br J Nutr. 2014;111(10):1841-1852.
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- 向く人: 通勤や通学の途中の駅で、乗り換えを増やさずに通いたい人
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水を飲めば、学校や塾の成績もよくなりますか
ここで扱った試験の測定項目は、目で探す注意、注意の持続、記憶などの課題です。授業で習った単元の理解や入試の結果を測ったものとは区別します。目で探す課題の改善と、学校や塾で理解が深まることの間には、測っている内容の違いがあります。水を飲む機会を設けるときは、点数の上昇を約束にするより、渇いたときに飲めたか、飲むのに困る場面がなかったかを本人と話すとよいでしょう。
授業の直前に、まとめて飲ませた方がよいですか
Perry ら(2015)の実験は朝食から始め、その後も時間をかけて水を飲む流れでした。授業の直前にまとめて飲むという家庭の手順とは異なります。水筒を用意することと、飲む時間を確保することを合わせて考えます。研究の量や時刻を再現しようとするより、出発前、到着後、休み時間に飲める場所と機会を確かめ、本人が飲みにくいと感じる場面を減らすことから考えます。
水筒がたくさん残っていたら、飲ませるべきですか
残りだけで決める前に、本人がどこで飲んだか、渇きはどうだったかを聞きます。別の場所で水を飲んだことや、飲みたいのに機会がなかったことなど、同じ残量でも事情は異なります。飲んだ量の多さを、その日の過ごし方の良し悪しの基準にする必要もありません。持ち帰った水を帳尻合わせで飲ませるのではなく、飲めなかった理由があるなら、次に水筒を取り出せるタイミングを本人と決めます。