- 午前の軽食で記憶の低下が小さくなった試験でも、注意への影響は見られませんでした。
- 中学生に近い年齢で果物を比べた試験では、認知の成績への効果を示す結果は出ていません。
- 午後の軽食で食欲が下がった研究でも、気分と認知には食べ方による差が検出されませんでした。
- 男子大学生では夕方の軽食で改善した課題があり、年齢や課題によって結果が異なります。
- 給食の研究は、食事を受ける生活条件を含めて読む必要があります。
駅から塾へ空腹のまま向かう子|軽食と授業中の集中の研究
午後の軽食は青少年の食欲や満腹感、食事の質を改善するというのが、Leidy ら(2015)の結論です。ただし、同じ研究の結果欄では、気分と認知の成績に食べ方による差は検出されていません。お腹が落ち着くことと問題を解く力が上がることを、同じ意味で受け取ると、この結果を読み違えます。武蔵境駅南口から塾へ向かう子のかばんに軽食を入れるときにも、まず何を助けたいのかが判断の出発点になります。

授業の前に何か食べさせれば、集中は本当に上がるのでしょうか。昼食を終えてから何も口にしていない子を送り出すと、保護者は授業中のお腹の音や、帰宅まで食事を待つ負担が気になるものです。一方、本人が気にしているのは、空腹そのものかもしれませんし、教科書を読んでも内容を追いにくいことかもしれません。食べたあとの感じ方を確かめる際には、お腹の具合と授業で困った場面を具体的に扱えます。軽食は空腹への対応として試せますが、子どもの注意や認知の成績を一様に高める結果はそろっていません。
要点
- 午前の軽食で記憶の低下が小さくなった試験でも、注意への影響は見られませんでした。
- 中学生に近い年齢で果物を比べた試験では、認知の成績への効果を示す結果は出ていません。
- 午後の軽食で食欲が下がった研究でも、気分と認知には食べ方による差が検出されませんでした。
- 男子大学生では夕方の軽食で改善した課題があり、年齢や課題によって結果が異なります。
- 給食の研究は、食事を受ける生活条件を含めて読む必要があります。
記憶の低下が小さくなっても、注意には差がなかった
「お腹が空くと勉強が入らない」という言葉には、聞いたことを覚える力も、作業に注意を向け続ける力も含まれています。Muthayya ら(2007)は、7〜9歳の子どもを対象に、午前の軽食と認知の成績を調べました。社会経済的な状況が低い群は35人、高い群は34人で、同じ参加者が異なる条件を経験する交差試験でした。社会経済的な状況とは、家庭の経済面や社会的な生活条件を捉える区分です。
Muthayya ら(2007)では、軽食をとったとき、低い群で直後と時間を置いたあとの記憶の低下が小さくなりました。高い群ではその結果は見られず、注意を持続させる力と、刺激に応じて動作する速さには、どちらの群でも軽食の影響がありませんでした。したがって、得られたのは特定の群の記憶についての結果です。「軽食で集中がよくなった」とひとまとめにすると、変化のなかった検査まで改善したように聞こえてしまいます。
たとえば、英単語を見てから思い出す課題と、並んだ記号から決まったものを探し続ける課題では、求められる作業が違います。前者を思い浮かべながら記憶の結果を読み、後者を思い浮かべながら注意の結果を読むと、同じ軽食の試験に異なる結果が並ぶ意味がつかめます。授業中の「集中」という日常語も、板書を写す、説明を聞く、覚えた語を取り出すといった場面にほどくと、何に困っているのかを表しやすくなります。この試験の対象の国は示されておらず、家庭の暮らしぶりを外から見て子どもをいずれかの群に当てはめる使い方も避けたいところです。
果物を食べた中学生に近い年齢の試験
中学生にとっては、小学生の記憶の結果よりも、自分に近い年齢で行われた比較が気になります。Ingwersen ら(2008)には、12〜13歳の30人がバナナ、りんご、軽食なしの条件を経験した比較と、同じ年齢帯の38人を対象にした記載があります。午前の軽食を扱ったこの報告では、いずれの検査時点でも、軽食が認知の成績に影響したことを示す結果はありませんでした。果物を用意すれば問題を解く成績が上がる、という期待を支える内容にはなっていません。
ここまでの試験を、年齢と測った内容に沿って並べると、軽食の効果がどの部分に出たのかを追えます。表の「成績」は検査で測った成績を指します。学校の通知表や塾の模試の点数を表しているわけではありません。
| 軽食に期待すること | 記憶・注意・食欲の結果 | 年齢と食べた時間帯 |
|---|---|---|
| 軽食で注意が続く | Muthayya ら(2007)では注意への影響なし。低い社会経済的状況の群で記憶の低下が小さかった | 7〜9歳、35人と34人の群、午前の交差試験 |
| 果物なら認知の成績が上がる | Ingwersen ら(2008)では効果を示す結果なし | 12〜13歳、果物や軽食なしを比べた試験 |
| 空腹が減れば認知もよくなる | Leidy ら(2015)では食欲は下がったが認知の差は検出されず | 健康な青少年、午後の軽食条件の比較 |
バナナやりんごは、机に置けば食べたものがはっきりする比較です。家庭で食事を考える際にも、「何か食べた」という情報だけでは、食べたものや量が曖昧なまま残ります。果物を持たせるなら、持ち帰った容器や包みも、実際に口にしたかを知る手掛かりになります。用意した食べ物がそのまま残っていた日は、食べた日の感想と混ぜずに扱えます。
午後の軽食で食欲は下がったが、認知の差は検出されず
夕方の通塾を考えるうえでは、午後に軽食をとった研究が時間帯の近い例になります。Leidy ら(2015)の対象は、健康な青少年31人で、年齢は17 ± 1歳でした。比べた軽食はどちらも、軽食なしに比べて食欲を下げました。高たんぱくの大豆食品を含む比較であり、家にあるお菓子や主食すべてを調べた試験ではありません。
Leidy ら(2015)で食欲が下がった比較のp値は0.001未満でした。p値は、差がないと仮定したときに、観測したような差以上がどれほど生じにくいかを表す値です。一方、気分と認知には条件による効果が検出されず、高たんぱくの軽食で混乱した気分を減らす傾向はp値0.07、考え方を切り替える力を高める傾向はp値0.09でした。これらの結果を「気分も認知も改善した」と強く言い切る扱いはしません。
教室に着いてから机の中の食べ物が気になってしまう場合、空腹への対応を考えることには生活上の目的があります。帰宅まで食事を待つのがつらい、授業前に何か口にしたい、といった困り方なら、食欲を測った結果がその相談に近づきます。対して、計算の手順を途中で忘れる、説明の途中からついていけないという困り方を、食べ物だけで解決しようとすると、授業内容や課題の難しさが話から抜けてしまいます。軽食を準備する相談では、食べる場所の机と授業で使う問題集を思い浮かべ、それぞれで起きていることを言葉にできます。
男子大学生では、夕方に改善した課題もある
軽食で認知の成績が変わらない結果ばかりがあるわけではありません。Kanarek ら(1990)は男子大学生を対象に、夕方遅い時間に軽食をとった場合の認知の成績を調べました。エネルギーを含む軽食をとった条件では、ダイエット清涼飲料をとった条件に比べて、数字を逆順に思い出す課題で多くの数字を再生し、注意の課題にも速く反応しました。別の実験では、ヨーグルトの条件で多くの算数の問題を解いたという結果でした。
数字を逆順に答える課題は、聞いた順番をそのまま繰り返す課題とは手順が異なります。与えられた情報を頭に保ち、並びを操作してから答える作業が入ります。注意の課題では反応する速さ、算数では解いた問題の数が取り上げられており、同じ研究の中でも見ている成績は複数あります。子どもの宿題で計算の途中式が止まる場面を思い浮かべると、こうした課題の種類を読めますが、研究の参加者はあくまで男子大学生です。
夕方に食べるという条件が近いと、この研究を塾の前の軽食選びに使いたくなります。しかし、子どもに対する軽食の順位を決めるには、年齢に加えて食べ物と比べた相手もそろえる必要があります。ヨーグルトを冷蔵庫から取り出してすぐ食べる場合と、朝からかばんに入れて持ち歩く場合では、家庭で準備する手順も違います。試験で使われた食品をそのまま買いそろえる前に、教室での飲食の扱いや保管場所を確かめることが、実際の準備になります。
給食の結果には、毎日の食事の条件が含まれる
学校で食事をとる研究には、軽食の比較より人数の多いものがあります。Metwally ら(2020)は、エジプトの学校給食を受ける小学5年生903人と、比較対象の886人を扱いました。研究の型は準実験で、介入を評価するものの、参加者を無作為に振り分ける試験とは異なる設計です。給食を受ける群と受けない群の比較として読む研究です。
Metwally ら(2020)では、午後の注意と作業記憶の検査の値は8.20 ± 2.21と7.75 ± 3.05で、p値は0.001未満でした。作業記憶とは、作業に使う情報を一時的に保っておく働きです。一方、子どもの栄養状態の変化には、両群の間で統計的な差が検出されませんでした。著者らは給食が学業の達成を改善すると結論づけていますが、注意の検査と栄養状態には同じ結果が並んでいるわけではありません。
給食は、学校生活の中で食事を受ける仕組みです。家で昼食や夕食をとる子が、通塾の途中で小さな軽食を足す場面とは、食事を置く位置が違います。たとえば、帰宅後に食卓に並ぶ主菜や副菜を残すほど軽食を食べれば、家庭で気にする点は授業中の空腹だけにとどまりません。栄養状態の異なる生活条件を含む給食の結果を、日本の塾の前に食べる量の目安として当てはめることはできません。
帰宅後の夕食では、軽食を持たせた日に、ごはんやおかずの量が減っていないかを家で見ます。普段は食べる皿に手が伸びない、主食を残すなど、食卓にあるものを通じて確かめます。夕食を食べにくくなる子に、集中のためという理由で軽食を増やし続ける方法は向きません。食物アレルギーや食事についての個別の指示がある子は、その条件に合う食品を選ぶことを優先します。
昼食から授業までの間隔を、通う日の予定で確かめる
授業のある日に、昼食を終える時刻と授業が始まる時刻を、学校の予定表と教室の時間割で見比べます。放課後に家へ戻る日なら台所で食べる機会があり、学校から直接向かう日なら食べ物を持って出る準備が要ります。時刻の間に、食事をとれる場所と落ち着いて食べられる時間があるかをたどります。単に通塾日というまとまりで扱うより、当日の食事がどこに入るかを具体的に捉えられます。
そのうえで、おにぎりを1つ食べた日と食べなかった日について、本人の感想を聞きます。「集中できたか」とまとめて尋ねるだけで終えず、授業の途中でお腹が気になったか、説明を聞いているときに困ったことがあったかを尋ねると、返事の内容をつかみやすくなります。眠さ、疲れ、問題の難しさについて返事があれば、それもその日の授業の事情として受け止めます。本人が変化を感じなかったという答えも、そのまま扱います。
準備するおにぎりは、食べるまでの保管方法を確かめたうえで、つぶれにくい容器や包みに収めます。朝から持ち歩く予定なら、持ち出すときの状態と食べるまでの時間を踏まえ、必要な保冷も整えます。移動しながら急いで食べる予定にせず、飲食できる場所で包みを開けられるようにします。軽食を荷物の奥に押し込むと取り出す手間が増えるため、教材を全部出さずに手が届く場所を使います。
おにぎりを用意するのは、研究で効果が確定した食品だからではなく、家庭で試す食べ物を具体的にするためです。大きな夕食を追加するような準備にせず、本人が食べられる小さなものを選びます。包みを置く場所まで準備できたら、授業のある日の朝、かばんの外ポケットに小さなおにぎりを1つ入れます。
よくある質問
甘い物でもよいのですか
甘い物を一律に除く結果ではありませんが、甘さで食品の優劣を決める比較にもなっていません。Kanarek ら(1990)は菓子とヨーグルトを扱い、エネルギーのある軽食をとった条件で、飲料の条件に比べて改善した課題を報告しています。菓子とヨーグルトのどちらが中学生の授業に適するかという順位は、この比較からは言えません。食品を選ぶ際には、甘いかどうかに加え、持ち運びや食べる場所も候補ごとに確かめます。
中学生にも効果がありますか
中学生に近い年齢の試験では、認知の成績への効果は示されていません。Ingwersen ら(2008)が扱った12〜13歳では、午前にバナナやりんごを食べる条件などを比べても、いずれの検査時点でも効果を示す結果は出ませんでした。これは果物を食べること自体を否定する結果ではありません。家から果物を持って出る目的が、食事の間の空腹への対応なら、認知の検査の点数とは異なる目的として扱えます。
食べると眠くなりませんか
ここで取り上げた研究には、軽食によって眠気がどの程度変わるかを答える比較がなく、眠くなる量や食品は示せません。Leidy ら(2015)の気分と認知の結果も、眠気を測った結果として読むことはできません。授業中に目を閉じてしまうことや、机に伏せることが気になっているなら、その具体的な場面を軽食の話に添えます。食欲が下がったという結果を、眠気への対策として説明しないことが大切です。
この記事の限界
適用範囲は、学校での午前の軽食、青少年の午後の軽食、男子大学生の夕方の課題、学校給食という異なる場面にまたがり、武蔵境から通塾する子の個別の授業を直接測ったものではありません。検査の成績を主に扱うため、先生の説明を理解して自力で解き直すまでの学習過程や、受験に向けた長い期間の成果については扱う範囲が限られます。また、食品の持ち歩き方や授業前に食べるための休憩時間は、研究で比べた効果とは別に家庭と教室で整える条件です。夕方の個別授業の前に食べる条件を直接比べた試験は含まれず、子どもの学習について参照できる範囲は、近い年齢で別の時間帯に行った検査に限られます。
参考文献
- Muthayya S, et al. Consumption of a mid-morning snack improves memory but not attention in school children. Physiology & Behavior. 2007;90(1):142-150.
- Ingwersen J, et al. The effect of a mid-morning snack on children’s cognitive performance. Appetite. 2008;50(2-3):560.
- Leidy H, et al. Consuming High-Protein Soy Snacks Affects Appetite Control, Satiety, and Diet Quality in Young People and Influences Select Aspects of Mood and Cognition. J Nutr. 2015;145(7):1614-1622.
- Kanarek R, Swinney D. Effects of food snacks on cognitive performance in male college students. Appetite. 1990;14(1):15-27.
- Metwally A, et al. Impact of National Egyptian school feeding program on growth, development, and school achievement of school children. World Journal of Pediatrics. 2020;16(4):393-400.
改札を出てから扉に着くまでの数分が、続くかどうかを決める。
- 向く人: 授業や練習のあと、駅までの帰り道をできるだけ短くしたい人
- 向く人: 通勤や通学の途中の駅で、乗り換えを増やさずに通いたい人
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甘い物でもよいのですか
甘い物を一律に除く結果ではありませんが、甘さで食品の優劣を決める比較にもなっていません。Kanarek ら(1990)は菓子とヨーグルトを扱い、エネルギーのある軽食をとった条件で、飲料の条件に比べて改善した課題を報告しています。菓子とヨーグルトのどちらが中学生の授業に適するかという順位は、この比較からは言えません。食品を選ぶ際には、甘いかどうかに加え、持ち運びや食べる場所も候補ごとに確かめます。
中学生にも効果がありますか
中学生に近い年齢の試験では、認知の成績への効果は示されていません。Ingwersen ら(2008)が扱った12〜13歳では、午前にバナナやりんごを食べる条件などを比べても、いずれの検査時点でも効果を示す結果は出ませんでした。これは果物を食べること自体を否定する結果ではありません。家から果物を持って出る目的が、食事の間の空腹への対応なら、認知の検査の点数とは異なる目的として扱えます。
食べると眠くなりませんか
ここで取り上げた研究には、軽食によって眠気がどの程度変わるかを答える比較がなく、眠くなる量や食品は示せません。Leidy ら(2015)の気分と認知の結果も、眠気を測った結果として読むことはできません。授業中に目を閉じてしまうことや、机に伏せることが気になっているなら、その具体的な場面を軽食の話に添えます。食欲が下がったという結果を、眠気への対策として説明しないことが大切です。