- トルコ語を学んだ人の事例研究では、学習時間と伸びに中程度の正の相関がありました。
- 成人のアプリ比較では双方に伸びがあり、伸びの差は統計的に有意ではありませんでした。
- 学生の利用記録には、授業期間中の時間不足と休暇中の利用増加が表れていました。
- 研究をまとめた総説は、アプリの設計に注目が集まり、学習の過程や成果の研究が限られることを示しています。
仕事帰りの電車で語学アプリを続ける大人|アプリでの外国語学習の研究
仕事帰り、西武多摩川線のホームで乗車位置を確かめ、列が止まっている間にスマホの語学アプリを開きます。昼に残した問題の続きが出てきても、乗車の列が動けば画面を閉じることになります。帰宅してから机に向かう時間は取りにくく、発車の案内を待つ間に外国語に触れたいと思う人もいるでしょう。移動中のアプリだけで外国語は伸びるのか、そもそも続くのでしょうか。

画面に正解が並ぶと、学習が進んだ手応えがあります。その一方で、翌日に同じ表現を思い出そうとすると、選択肢がないと答えが出てこない場面も考えられます。ホームで開いた課題を乗車後も続けるなら、学習の成果を測った結果と、実際にアプリを使い続けた記録の両方が役に立ちます。スマホで取り組めるという手軽さの先に、学習時間を取れるか、教材に取り組む気持ちが続くかという問題が残ります。
アプリを用いた研究では外国語の測定成績に伸びが見られていますが、利用が低調だった学生の記録もあります。毎日同じホームに立っていても、学習まで自然に続くと期待するのは早計です。語学アプリには学習の伸びを示す結果があり、継続を考える際には実際の利用時間と取り組む課題を確かめることが大切です。
要点
- トルコ語を学んだ人の事例研究では、学習時間と伸びに中程度の正の相関がありました。
- 成人のアプリ比較では双方に伸びがあり、伸びの差は統計的に有意ではありませんでした。
- 学生の利用記録には、授業期間中の時間不足と休暇中の利用増加が表れていました。
- 研究をまとめた総説は、アプリの設計に注目が集まり、学習の過程や成果の研究が限られることを示しています。
学習時間と伸びが結びついた小規模な事例
「空いた時間に触れていれば身につく」という期待に近い問いを扱ったのが、Loewen ら(2019)の事例研究です。トルコ語をDuolingoで学ぶ9人について、1学期にわたる学習経験と成果を調べました。学期の終わりには外国語の力を測る指標で改善が見られ、使用時間と学習の伸びには中程度の正の相関がありました。相関とは、ここでは使った時間が長い人ほど伸びも大きい傾向があったという意味です。
この結果が示すのは、同じ参加者たちの時間と成果の結びつきです。Loewen ら(2019)が追ったのは9人の経験で、利用時間を増やす操作によってどれほど伸びるかを比べた結果としては扱えません。国や詳しい年齢は示されていないため、特定の年代の働く人の成績と読む根拠もありません。人数と学習した言語を添えることで、報告された伸びの範囲が明確になります。
自分の学習時間を知るには、週の終わりにアプリの利用記録を開き、何分使ったかを見ます。通勤中に開いたつもりでも、仕事の連絡を読むために中断した日と、帰宅後に課題を終えた日が混ざっていることがあります。学習の履歴とスマホ全体の使用時間が別に表示される場合は、語学の課題に取り組んだ時間を確認します。これは研究の伸びを再現する手順ではなく、自分が実際に使えた時間を把握するための作業です。
たとえば日曜の夜、画面の履歴を見ながら、平日の帰りに進めた課題をたどります。途中で閉じた課題が残っていれば、再開したときにどこまで取り組んだかも見ます。時間の合計に加え、完了した課題の中身までたどると、次に開くページを選びやすくなります。
アプリを替えれば伸びが大きくなるのか
使いにくさを感じると、別のアプリなら成果が出るのではないかと考えたくなります。Kessler ら(2025)は成人59人を対象に、Babbelを使う27人とDuolingoを使う32人のトルコ語学習を8週にわたって比較しました。両群とも進歩しましたが、学習の伸びに統計的に有意な差はありませんでした。有意な差がないとは、この比較で偶然の変動と区別できる差が示されなかったということであり、機能や使い心地まで同じだったという意味にはなりません。
さらにKessler ら(2025)では、Babbelの群で学習時間と学習後のテスト得点との相関が強く見られました。伸びの群間比較と、各群の中で時間と得点がどう結びついたかは、分析している関係が違います。群の平均的な伸びに差がない結果と、時間との関係が異なる結果は両立します。特定のアプリ名だけを取り出すと、この比較の内容を落としてしまいます。
アプリを替える場面を考えるなら、夕食後の机で、今使っている課題の画面を見直すところから始められます。音声を聞いて選ぶ問題なのか、文字を入力する問題なのか、説明を読んで理解する問題なのかを確かめます。正解しても説明に納得できない場合は、その課題の説明画面まで戻ります。研究の比較結果と、自分がつまずいている具体的な操作を混ぜずに検討するためです。
Loewen ら(2019)の参加者からは、学習意欲の揺れや教材への不満も表明されていました。学習の伸びがあったという報告の中にも、取り組みづらさは含まれています。スマホを開くたびに同じ説明で止まる人には、その課題を押し進める使い方が合わない場合があります。教材の説明を読み直す、取り組む内容を選び直すといった対応を考える際にも、不満が生じる画面を特定しておくと話が具体的になります。
続かない理由を利用記録で捉える
毎日の通勤に学習を組み込めば続きそうに見えますが、生活の中に時間があることと、アプリを使う時間を取れることは一致しない場合があります。García Botero ら(2019)は、高等教育で言語を学ぶ学生118人のアプリ内の活動を追跡しました。面接では、意欲の持続、自分の進み具合の確認、時間や学習の管理が十分にできないことが、低い利用状況に表れていました。利用記録からは、授業期間中には授業外のアプリ学習の時間が乏しく、休暇中には活動が増える様子が見られました。
この調査は学生の授業外学習を観察したもので、勤務日と休日の会社員を比較したものではありません。García Botero ら(2019)の結果で具体的なのは、学期中と休暇中という生活上の予定の違いが利用記録に表れた点です。「続けたい」という面接での言葉に加えて、実際に開いた記録も調べています。本人の意欲を聞く方法と、利用の状況を追う方法を組み合わせた調査でした。
仕事帰りに当てはめて考える場面としては、職場を出る前に予定外の連絡が入り、電車の中でも返信を続ける日があります。乗り換えの案内を確認したあと、語学の画面に戻らず降りる日もあるでしょう。こうしたときは、学習をしなかった場面を「忙しかった」で終えず、スマホ上で何をしていたかまで思い返せます。返信中だったのか、立って荷物を持っていたのかによって、取り組める課題の形も変わります。
また、帰宅後に履歴を開いたとき、空白の日を埋めるために長い課題を追加すると、予定していた就寝の準備と重なるかもしれません。自分の生活に合う使い方を考える場面では、学習以外に済ませる用事もその日の条件です。研究が捉えた利用の少なさを読むときにも、開かなかった本人を意欲のない人と決めつける必要はありません。帰宅後の食事や洗濯が残る夜には、アプリを閉じる時点も生活の予定に含めます。
研究が多いことと成果の証拠が多いこと
語学アプリについて論文がたくさんあれば、学習効果も十分に調べられているように感じるかもしれません。Shortt ら(2023)はDuolingoの文献を、条件を決めて集めて検討する体系的な総説を行いました。対象は2012年から2020年初めまでの文献で、最初に見つかった367件から35件が選ばれました。そこで指摘されたのは、アプリの設計への関心が目立ち、道具を使った学習の過程や成果への検討が限られることでした。
たとえば課題画面を押しやすく作る話と、その課題で学んだ言語をどう測るかという話では、調べる対象が変わります。Shortt ら(2023)の総説は、まさに研究の関心がどこに向いていたかを扱っています。論文数を、そのまま「効果を確かめた試験の数」と読むと、設計を検討した論文も成果の証拠に数えてしまいます。ここまでの研究を問いごとに置くと、次のようになります。
| アプリ学習への期待 | 伸びと継続に関する結果 | 学習者と調査の範囲 |
|---|---|---|
| 使う時間を増やすほど伸びる | 時間と伸びに中程度の正の相関があったLoewen ら(2019) | トルコ語学習の事例研究 |
| アプリを選び直せば成果が変わる | 比較した両群に伸びがあり、伸びの群間差は有意ではなかったKessler ら(2025) | 成人のトルコ語学習の比較 |
| 自主的な学習は自然に続く | 利用が少なく、授業期間と休暇で活動の違いがあったGarcía Botero ら(2019) | 高等教育の学生の利用追跡と面接 |
| 論文が多ければ成果の証拠も厚い | 設計への関心が目立ち、過程と成果の検討が限られていたShortt ら(2023) | アプリ関連の文献を集めた総説 |
武蔵野の英会話とアプリを比べる前に
対面で相手に伝わるように話したいのか、移動中に文字や意味の問題に取り組みたいのかで、必要な課題を具体的に考えられます。たとえば旅行先で注文したいなら、自分で言葉を組み立てて声にする場面を想像します。仕事の文書を読みたいなら、文章を読み進め、意味が取れない箇所に戻る場面になります。教室やアプリの名前を並べる前に、実際にしたいことを言葉にしておくと、練習内容を確認しやすくなります。
ただし、ここで取り上げた研究には対面の英会話との直接比較がなく、東京の通勤電車内の学習を調べたものもありません。Kessler ら(2025)が比較したのはトルコ語を学ぶ成人のアプリ間の成果であり、その結果を英語の対話練習との優劣に広げることはできません。研究で示された学習の伸びと、これから自分が取り組みたい言語や課題との間には、この範囲の違いがあります。
自分のアプリで話す練習が含まれているかは、自宅で課題一覧を開いて確かめられます。音声を聞く課題がある場合も、返答を声にする場面があるか、画面上の選択で終わるかまで見ます。発声する課題を電車で飛ばしているなら、自宅で使う際にその課題を開くという使い分けも考えられます。これは練習内容の確認であり、声を出せばどの程度伸びるかという数値の提案ではありません。
近いうちに人前で話す予定がある人は、その場で必要になる動作まで試してみます。たとえば机の上のスマホを伏せ、自己紹介の出だしを口にしてみる方法です。途中で語が出ないのか、文の組み立てで止まるのかがわかれば、次に開く課題を探す材料になります。画面の正解表示に加え、予定している場面で自分が何をできるかを確かめる作業になります。
帰りの乗車区間に小さな課題を置く
立川から帰る電車で取り組むなら、乗車してから立川を出るまでを、アプリを開く区間の候補にします。乗る前に自宅や職場で課題の入口を確認し、どの画面から始めるかを探しておきます。降りる支度と重なる長い課題を選んでしまう場合は、途中で閉じた位置が残るかも見ておきます。区間を決める提案は、帰り道に実行する動作を小さく具体化するためのものです。
車内で荷物を支えながら立つ日や、案内表示を確認する必要があるときは、画面に集中する使い方が合いません。人の出入りがあるドア付近で答えを急ぐと、降りる人に気づくのが遅れる場面も考えられます。乗車中は周囲を見られる状態を保ち、乗降の動きが始まったらスマホをしまいます。利用時間を確保することに気を取られて、降りる準備を後回しにしないための扱いです。
取り組む内容は、そのときの車内で扱える操作から選びます。音を出せない場面では文字を読んで答える課題を開き、入力が難しければ無理に進めず閉じます。予定していた課題がその場に合うかは、実際に表示される問題を見て判断します。画面に答えが並んでいても、問題文を読み終える前に選ばず、何を尋ねられているかまで読みます。
帰宅後に再開する場合は、最後に取り組んだ画面の問題文を読み、どこで止めたかを確かめてから続きを開きます。解き終えた課題なら、解説に出た表現の意味も読みます。次の帰りに同じ入口から始められるよう、課題の位置を画面で確かめます。帰りの電車に乗ったら、立川を出るまでアプリの1課だけ開いて声に出さずに答えます。
よくある質問
1日何分やれば伸びますか
効果が出る毎日の分数は、取り上げた研究からは決められません。Loewen ら(2019)が示したのは、使用時間と伸びの中程度の正の相関であり、毎日の分数ごとに成果を比較した基準ではありません。学習時間を増やす計画を立てる際には、この結果を「長く使えば決まった量だけ伸びる」という計算式にせず、今の生活で確保できる時間の範囲で計画します。
どのアプリを選ぶのがよいですか
学習の伸びを理由に、比較されたアプリの一方を選ぶ根拠は示されませんでした。Kessler ら(2025)では、成人のトルコ語学習で双方に進歩があり、伸びの群間差は有意ではありませんでした。比較した言語と条件を踏まえたうえで、自分のスマホで説明を読めるか、必要な課題を開けるかという使用上の条件を選択の材料にできます。
続かないのは意志が弱いからですか
意志の弱さだけで説明するのは適切ではありません。García Botero ら(2019)の学生の調査では、意欲の持続や自己管理の難しさに加え、授業期間中の時間不足が利用記録に表れていました。たとえば帰りの車内で仕事の返信をしていた日を振り返るときには、本人の気持ちへの評価だけで終えず、その時間帯に学習へ手をつけられる状態だったかを検討できます。
この記事の限界
対象はトルコ語を学ぶ人や高等教育の学生を含み、各研究の成果はそれぞれの課題と測定の範囲で読む必要があります。仕事で交渉する、初対面の相手の返答を理解するといった個々の目的を、ここに挙げた学習成果の記述から細かく評価することには限りがあります。また、学期の終わりや学習後のテストで得た成果が、アプリを使わなくなったあとまでどれほど残るかという時間的な持続も、ここで紹介した結果とは測定する時点が異なります。学生や少人数の学習を扱った結果を仕事帰りに生かす際には、自分の週の利用記録と取り組んだ課題を照らし、車内での学習の進み具合を追います。
参考文献
- Loewen S, et al. Mobile-Assisted Language Learning: A Duolingo Case Study. ReCALL. 2019.
- Kessler M, et al. Mobile-assisted language learning with Babbel and Duolingo: comparing L2 learning gains and user experience. Computer Assisted Language Learning. 2025;38(4):690-714.
- García Botero G, et al. Self-directed language learning in a mobile-assisted, out-of-class context: do students walk the talk? Computer Assisted Language Learning. 2019;32(1-2):71-97.
- Shortt M, et al. Gamification in mobile-assisted language learning: a systematic review of Duolingo literature from public release of 2012 to early 2020. Computer Assisted Language Learning. 2023;36(3):517-554.
改札を出てから扉に着くまでの数分が、続くかどうかを決める。
- 向く人: 授業や練習のあと、駅までの帰り道をできるだけ短くしたい人
- 向く人: 通勤や通学の途中の駅で、乗り換えを増やさずに通いたい人
- 向かない人: 駅から離れた場所へ、車の送り迎えで通うことを前提にしたい人
- 向かない人: 移動をせず、自宅だけで学びや運動を済ませたい人
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1日何分やれば伸びますか
効果が出る毎日の分数は、取り上げた研究からは決められません。Loewen ら(2019)が示したのは、使用時間と伸びの中程度の正の相関であり、毎日の分数ごとに成果を比較した基準ではありません。学習時間を増やす計画を立てる際には、この結果を「長く使えば決まった量だけ伸びる」という計算式にせず、今の生活で確保できる時間の範囲で計画します。
どのアプリを選ぶのがよいですか
学習の伸びを理由に、比較されたアプリの一方を選ぶ根拠は示されませんでした。Kessler ら(2025)では、成人のトルコ語学習で双方に進歩があり、伸びの群間差は有意ではありませんでした。比較した言語と条件を踏まえたうえで、自分のスマホで説明を読めるか、必要な課題を開けるかという使用上の条件を選択の材料にできます。
続かないのは意志が弱いからですか
意志の弱さだけで説明するのは適切ではありません。García Botero ら(2019)の学生の調査では、意欲の持続や自己管理の難しさに加え、授業期間中の時間不足が利用記録に表れていました。たとえば帰りの車内で仕事の返信をしていた日を振り返るときには、本人の気持ちへの評価だけで終えず、その時間帯に学習へ手をつけられる状態だったかを検討できます。