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公開:2026年9月11日/最終更新:2026年9月11日

同じように夜の運動に通っても体力が伸びない人|運動の効果の個人差の研究

夜のバスで座席に腰を下ろすと、運動用の着替えを入れた鞄が膝にのります。同じ日に運動を始めた同僚は、最近は帰り道が楽になったと話していました。自分は通う日を増やさず休まず続けているのに、足取りが軽くなった実感が乏しく、その話だけが帰宅途中まで気になります。同じように通っても伸びないのは、運動が効きにくい体質だからなのでしょうか。

  • 家族を対象にした持久運動の研究では、最大酸素摂取量の変化に大きなばらつきがありました。
  • 測定時の揺れを考慮した総説は、目に見える変化の差と、運動そのものへの反応の差を区別しています。
  • 運動量を変えた試験では、最初に伸びが認められなかった参加者も、その後に判定が変わりました。
  • 個人のデータをまとめた分析では、運動群のほうが比較群より、意味のある改善に達する割合が大きいと推定されました。

同じように夜の運動に通っても体力が伸びない人|運動の効果の個人差の研究

夜のバスで座席に腰を下ろすと、運動用の着替えを入れた鞄が膝にのります。同じ日に運動を始めた同僚は、最近は帰り道が楽になったと話していました。自分は通う日を増やさず休まず続けているのに、足取りが軽くなった実感が乏しく、その話だけが帰宅途中まで気になります。同じように通っても伸びないのは、運動が効きにくい体質だからなのでしょうか。

測った伸びが小さいことと、生まれつき運動に反応しにくいことは別で、運動量や測定の揺れを確かめる余地があります。 運動の研究には、参加者の変化が大きくばらついた報告も、そのばらつきの読み方を問い直す報告もあります。体力という言葉で何を測り、どんな相手と比べたのかをたどると、両者の違いを読み解けます。仕事帰りの運動についても、同僚の明るい感想と自分の検査結果をそのまま競わせるより、比べているものを明らかにするほうが、今の疑問に近づけます。

要点

  • 家族を対象にした持久運動の研究では、最大酸素摂取量の変化に大きなばらつきがありました。
  • 測定時の揺れを考慮した総説は、目に見える変化の差と、運動そのものへの反応の差を区別しています。
  • 運動量を変えた試験では、最初に伸びが認められなかった参加者も、その後に判定が変わりました。
  • 個人のデータをまとめた分析では、運動群のほうが比較群より、意味のある改善に達する割合が大きいと推定されました。

平均が伸びても、全員が同じ幅で伸びるわけではない

Bouchard ら(1999)は、座りがちな白人成人481人、親子2世代の98家族を対象に、20週の運動訓練を行いました。測ったのは最大酸素摂取量で、強い運動中に体が取り込んで利用する酸素の量の上限を表す、持久力の指標です。自転車型の測定装置を使い、訓練の前と後にそれぞれ2回測っています。家族が同じ研究に参加することで、親子を含む家族内と家族間の違いも調べられる設計でした。

Bouchard ら(1999)の結果では、増加量の平均は約400ミリリットル/分でした。一方、ほとんど増えない人や増加が見られない人もいれば、1.0リットル/分を超えて増えた人もいました。平均値は参加者全体の変化を短く示しますが、その値の近くに全員が集まっていたわけではありません。運動した人の結果を読む際には、平均の伸びと個々の伸びの広がりが別の情報だとわかります。

さらにBouchard ら(1999)は、変化のばらつきを表す分散が、家族内より家族間で2.5倍大きかったと報告しています。ここでいう分散の比較は、ある人の伸びが別の人の伸びの何倍だったという意味とは異なります。親子で似た傾向があるのかを調べるため、まとまりごとの広がりを比べた数字です。家族どうしの比較という研究の目的を押さえると、同僚どうしの競争のような読み方から離れられます。

また、運動を始める前の体力と、始めてからの増加量も別のものです。もともと楽に歩ける人がさらに大きく伸びたのか、歩くのがつらかった人が少し楽になったのかでは、日常の受け止め方も違います。研究が示したのは訓練前後の測定値の変化であり、終了時の順位を並べただけの結果ではありません。同僚が今どれほど元気かという話を聞いたときも、それが出発点の話か、そこからの変化の話かに注目すると読み違いを減らせます。

数値の差に混ざる「測るたびの揺れ」

Atkinson ら(2015)の方法論の総説は、同じ人を測っても値が揺れることが、個人差の図に入り込む問題を取り上げています。研究者が計算で作った血圧のデータでは、本当の反応の大きさを全員同じに設定しても、図や分析の仕方によって大きな個人差があるように見えました。これは参加者が努力を怠ったという説明ではなく、変化を測る仕組みそのものの問題です。前と後の値を引くだけで、運動の効き方をそのまま取り出せるわけではありません。

同じ総説が扱う「平均への回帰」とは、たまたま極端だった値が、次にはふだんの水準に近づく現象です。最初の測定が偶然とても低ければ、次の値との差は大きく見えます。反対に、最初が偶然高ければ、実際には改善していても差が小さく見えることがあります。Atkinson ら(2015)は、この影響と同じ人の中で生じる偶然の変動が、反応の大小を描いた図を紛らわしくすると指摘しました。

そこで重要になるのが、対象の運動を行わないなどの比較条件に置かれた対照群です。運動群だけで変化が広がっているのか、対照群でも同じくらい広がるのかを見れば、運動以外から生じる揺れを考慮できます。Atkinson ら(2015)は、両群の変化の標準偏差、つまり値の散らばりの大きさを比べることを重視しています。運動をした側の平均が上がるかという問いと、伸びやすさが人によって違うかという問いでは、注目する部分が違うのです。

日常で数値を見直すなら、一度だけ測り直して結論を出す代わりに、同じ条件で2回測った平均を見る方法があります。比較する前後の時点で、使う機器、測定の手順、時間帯をそろえると、何を比べているかが明確になります。良かったほうの値だけを選ぶと、前後の選び方によって印象まで変わります。測定を担当する人がいる場合には、結果の良し悪しを聞く前に、前回と同じ手順だったかを尋ねると話を進めやすくなります。

比較群を置くと、個人差の解釈が変わる

Williamson ら(2017)は、最大酸素摂取量の反応を扱った研究を批判的に検討した総説です。家族研究に先立つ関連研究を6件取り上げ、その中の研究を、同じ人の測定値の偶然の変動を考慮して分析し直しました。その再分析では、臨床的に重要といえる個人差は認められなかったと報告しています。数値の見かけの広がりをそのまま受け入れる場合と、比較群を使って評価する場合で、答えが変わった例です。

Williamson ら(2017)は、家族研究から生まれた180件を超える論文も探しましたが、対照群を見つけられなかったと記しています。Bouchard ら(1999)の家族間の差だけで、遺伝によって運動への反応が固定されていると判断するには、比較の土台が足りません。家族で似ているという観察と、生まれつきの性質が原因だという説明の間には、検討すべき段階があります。研究の価値を全て否定するのではなく、その設計が答えられる問いの範囲を見定める指摘です。

Bonafiglia ら(2022)は、参加者を偶然に任せて群に振り分ける無作為化試験8件、1879人の個人データをまとめて分析しました。こうした個人データのメタ分析は、論文ごとの平均だけでなく、参加者それぞれのデータまで統合する方法です。心肺の体力、腹囲、体重を調べた結果、大きなばらつきが訓練への反応しやすさの個人差に由来するという証拠は乏しく、測定誤差や運動以外の行動要因による可能性が示されました。同時に、意味のある改善の基準を超える割合は、いずれの項目でも運動群のほうが対照群より大きいと推定されています。

よく言われること 研究で検討されたこと 対象・研究の型
変化の幅が違うなら、効きやすい体質が違う 偶然の揺れでも個人差に見える図が生じる Atkinson ら(2015)の方法論の総説
家族で似るなら、伸び方は遺伝で決まる 家族研究の対照群の欠如を指摘 Williamson ら(2017)の批判的総説
個人差の証拠が弱いなら、運動の意味も小さい 重要な改善に達する割合は運動群のほうが大きいと推定 Bonafiglia ら(2022)の個人データの統合分析

運動量を変えると「伸びない」という判定も変わった

Montero ら(2017)は、健康な成人78人を、週1回から週5回までの5群に分け、6週の持久運動を行いました。各回は60分で、週の回数以外は同じ訓練計画に従う試験でした。体力の評価には、負荷を徐々に増やしたときに出せる最大の運動出力を使っています。変化が測定に伴う典型的な誤差の範囲である±3.96%以内なら、「反応が認められない」と分類しました。

最初の期間を終えた時点で、Montero ら(2017)の週1回、2回、3回、4回、5回の群における非反応者の割合は、順に69%、40%、29%、0%、0%でした。週の回数の異なる群を比べると、少ない回数の群ほど、その基準に達しない人の割合が大きかったという結果です。さらに、最初に非反応者とされた人が運動量を増やして次の期間を終えると、非反応者という判定はなくなりました。少なくともこの試験では、最初の分類がその人の変わらない特徴として残ったわけではありませんでした。

ここでの「反応なし」は、研究者が選んだ項目と境目に従った名称です。数値に小さな変化があっても、誤差と区別するための幅を超えなければ同じ分類に入ります。Montero ら(2017)の試験は、運動の量という変更可能な条件が、その判定に関わることを示しました。人の名前の横に固定した性質として貼る言葉よりも、ある計画を終えた時点での検査結果として読むほうが、研究の手順に忠実です。

この結果を知って、仕事帰りの予定にすぐ運動を足したくなるかもしれません。関節の痛み・息切れ・持病がある人は、量を増やす前に医師に相談します。試験で判定が変わったという結果と、今の体調で追加の負荷を受け入れられるかは別に考え、けがや体調の悪化を押して回数を達成する方法は避けます。帰宅後の生活まで圧迫される場合も、欠席分を一度に取り戻すより、実際に続けられる運動の内容から相談を始めるほうが現実的です。

西荻窪からホットヨガへ通う同僚と、運動量を比べる

西荻窪から電車でホットヨガへ通う同僚と、帰りの時間が重なるとします。仕事帰りに通う運動の話では、「同じ曜日に行っている」という共通点がまず目につきます。しかし同じ日に施設へ着いたことと、同じ量の運動をしたことは別です。着替えや待ち時間を含む滞在時間の長さだけでも、実際に体を動かした時間の長さは決まりません。

同僚と話せるなら、運動の回数、動いていた時間、強さを並べてみます。毎回最初から最後まで参加するのか、途中で休む時間があるのか、ほかの日にも別の運動をしているのかを聞くと、通う曜日以外の違いに目が向きます。強さについては、施設の名前や運動の名前をそろえただけでは、本人がどんな負荷を受けているかまでそろいません。Montero ら(2017)が回数以外の訓練計画をそろえたように、何を同じにして何が違うのかを明確にすると、比較の焦点が定まります。

話の中で「体力がついた」という言葉が出たら、その人が楽になったと感じる動作も聞いてみます。長く歩くこと、荷物を持つこと、運動の動きを覚えることでは、変化の内容が異なります。自分は検査の数値を気にしているのに、相手は帰宅後の気分を話していたなら、同じ尺度での差を聞いたことにはなりません。相手の感想を疑うためでなく、何に対する満足なのかを理解するための会話です。

こうして違いが見つかった場合にも、同僚の生活を丸ごとまねる必要はありません。運動中に使える時間や帰宅後の用事など、自分が調整しやすい部分から、指導を担当する人に現在の内容を伝えます。「伸びないので全部変えたい」より、動いている時間や休む場面を挙げるほうが、相談する側にも状況が伝わります。研究で操作された条件を知る利点は、他人の成果を追いかけることより、自分の計画について具体的に話せることにあります。

同じ階段と帰り道で、変化を生活の動作に戻す

いつも通る階段の下で、前に上ったときと同じ速さを思い出してみます。体力の変化を日常の動作で見るなら、同じ階段を同じ速さで上り、息の上がり方を比べる方法があります。季節もそろえ、急いで電車に間に合わせた日と、余裕を持って歩いた日を同列に置かないようにします。上り切った速さを競うために加速するより、ふだんの動きの負担がどう変わったかに目を向けます。

階段の途中で人を避けたり、重い荷物を持っていたりすれば、その日の動作には別の条件が加わります。そうした事情があった日は、結果だけを良い悪いと評価する前に、そのときの歩き方を思い返します。Bonafiglia ら(2022)が挙げた運動以外の行動要因を考える際にも、運動時間の外側で何をしていたかは大切な視点です。暮らしの中では、検査室のように整えきることを目標にするより、どの条件が変わったかを言葉にするほうが取り組みやすいでしょう。

また、階段で確かめたいのは、運動に通う目的と結びついた動作です。仕事帰りに家まで歩くことを楽にしたいのなら、測定値を他人と比べるほかに、自分が困っていた場面へ戻る意味があります。以前は踊り場で立ち止まっていたのか、上った後も歩き続けるのがつらかったのかで、注目する場面が変わります。変化を見る動作を自分の目的に合わせると、施設での結果を受け取るときにも、何を質問したいかがはっきりします。

次に夜のバスを降りた帰りには、停留所から家までの坂を、運動を始める前と同じ速さで歩き、途中で息を整えた回数が変わったかを一度だけ数えてみます。以前の歩き方を覚えていれば、そのときとの差を思い出せますし、覚えていなければ今の様子を出発点にします。坂の途中で止まった場所が浮かべば、指導を担当する人にも「ここで休む」と生活の困りごとを伝えられます。次に相談する運動の目標は、同僚の検査結果に追いつくことより、買い物袋を持って玄関まで帰る負担を減らすことかもしれません。

よくある質問

体重が減らない場合も、運動が効きにくいのでしょうか

体重を目的にする場合は、持久力を目的にする場合と、見ている結果が異なります。Bonafiglia ら(2022)は体重と心肺の体力を別々の評価項目として扱い、腹囲も調べています。体重計の表示だけで運動全体の成果を判定するより、当初の目的が体重だったのか、歩く負担を減らすことだったのかを整理すると、次の相談で扱う項目を選びやすくなります。

年齢が上がったら、今の伸びの小ささを受け入れるべきですか

年齢を理由に目標を下げる前に、何年前の自分と比較しているのかに目を向けます。Bouchard ら(1999)の家族研究が扱ったのは成人の訓練前後の変化で、同じ人が年を重ねる過程を長く追う設計とは異なります。昔の最高記録と今の結果の差だけで考えるより、今の出発点から、暮らしのどの動作を楽にしたいかを話すほうが、目標を選ぶ際に役立ちます。

伸びが乏しければ、別の種類の運動に変えたほうがよいですか

種類を変えたくなったときには、新しく選ぶ運動で何を伸ばしたいのかを先に考えます。Montero ら(2017)が変更したのは持久運動の量であり、種類を次々に入れ替えて適性を探す試験ではありませんでした。新しい運動を選ぶ際は、期待する変化に合った評価項目を指導者と相談すると、前の運動と何を比べるつもりなのかを共有しやすくなります。

この記事の限界

対象は座りがちな白人成人の家族や健康な成人などで、夜に通勤先から運動へ向かう東京の成人を直接調べた研究は見つからなかったため、ここで挙げた測り方をホットヨガの効果の判定に直結させることはできません。家族研究と持久運動の試験、方法論の総説、複数の試験を統合した分析を組み合わせて読んでおり、同じ条件を再現した研究だけを集めた記事でもありません。

測った項目と「伸びた」とする基準は研究ごとに異なり、酸素摂取量、運動出力、体重などの判定が使われています。同じ人を同じ条件で繰り返し測った研究は少なく、ある期間に見られた伸び方が次の訓練期間にも再現するかまでは、十分に確かめられていません。

参考文献

  1. Bouchard C, et al. Familial aggregation of VO(2max) response to exercise training: results from the HERITAGE Family Study. J Appl Physiol (1985). 1999;87(3):1003-1008.
  2. Montero D, et al. Refuting the myth of non-response to exercise training: ‘non-responders’ do respond to higher dose of training. J Physiol. 2017;595(11):3377-3387.
  3. Atkinson G, et al. True and false interindividual differences in the physiological response to an intervention. Exp Physiol. 2015;100(6):577-588.
  4. Williamson PJ, et al. Inter-Individual Responses of Maximal Oxygen Uptake to Exercise Training: A Critical Review. Sports Med. 2017;47(8):1501-1513.
  5. Bonafiglia JT, et al. Interindividual Differences in Trainability and Moderators of Cardiorespiratory Fitness, Waist Circumference, and Body Mass Responses: A Large-Scale Individual Participant Data Meta-analysis. Sports Med. 2022;52(12):2837-2851.

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  • 向かない人: 駅から離れた場所へ、車の送り迎えで通うことを前提にしたい人
  • 向かない人: 移動をせず、自宅だけで学びや運動を済ませたい人

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体重が減らない場合も、運動が効きにくいのでしょうか

体重を目的にする場合は、持久力を目的にする場合と、見ている結果が異なります。Bonafiglia ら(2022)は体重と心肺の体力を別々の評価項目として扱い、腹囲も調べています。体重計の表示だけで運動全体の成果を判定するより、当初の目的が体重だったのか、歩く負担を減らすことだったのかを整理すると、次の相談で扱う項目を選びやすくなります。

年齢が上がったら、今の伸びの小ささを受け入れるべきですか

年齢を理由に目標を下げる前に、何年前の自分と比較しているのかに目を向けます。Bouchard ら(1999)の家族研究が扱ったのは成人の訓練前後の変化で、同じ人が年を重ねる過程を長く追う設計とは異なります。昔の最高記録と今の結果の差だけで考えるより、今の出発点から、暮らしのどの動作を楽にしたいかを話すほうが、目標を選ぶ際に役立ちます。

伸びが乏しければ、別の種類の運動に変えたほうがよいですか

種類を変えたくなったときには、新しく選ぶ運動で何を伸ばしたいのかを先に考えます。Montero ら(2017)が変更したのは持久運動の量であり、種類を次々に入れ替えて適性を探す試験ではありませんでした。新しい運動を選ぶ際は、期待する変化に合った評価項目を指導者と相談すると、前の運動と何を比べるつもりなのかを共有しやすくなります。