- 反復練習後の技能を追った試験では、改善の持続が報告されています。
- 短い講習では、知識・態度・安全な乗り方に効果が出なかった試験もあります。
- 自信、技能、自転車を使う頻度、けがの発生は、それぞれ異なる評価項目です。
- 安全教育の評価には、比較する群を置く試験と、参加歴のある人を追う観察研究があります。
自転車で通塾を始める前の練習|子どもの自転車の安全教室の研究
東伏見の駐輪場から学習塾へ自転車で通い始める前に知っておきたいのは、練習による乗り方の技能の改善は、その後も保たれたという研究の結論です。そう結論づけた Ducheyne ら(2014)は、練習した子と比較する子の変化を追いました。駐輪場で鍵を外し、自転車を引き出す子を見る親にとって、練習の成果がその場限りではなかった点は心強い結果です。
では、乗り方を練習したり安全教室に参加したりすれば、塾へ行く途中の事故も減るのでしょうか。技能や知識が上がった研究はありますが、安全教室への参加によって事故やけがが減るという証拠は十分ではありません。 この違いを踏まえると、教室を終えたかだけでなく、何を身につけたかを見る意味がはっきりします。
自転車の安全を調べる研究は、問題に正しく答える知識、実際に車体を扱う技能、道路での行動、事故の経験をそれぞれ測っています。親が願うのは無事に帰ることでも、研究が測ったものはその途中の段階である場合があります。参加したという事実を出発点にして、子どもの動きと毎日使う道を結びつけて考えていきます。
要点
- 反復練習後の技能を追った試験では、改善の持続が報告されています。
- 短い講習では、知識・態度・安全な乗り方に効果が出なかった試験もあります。
- 自信、技能、自転車を使う頻度、けがの発生は、それぞれ異なる評価項目です。
- 安全教育の評価には、比較する群を置く試験と、参加歴のある人を追う観察研究があります。
反復練習で伸びたのは、乗り方の技能です
まっすぐ進めるようになると、親は自転車に乗れるようになったと感じます。ただ、通うための準備を考える際には、単に倒れずに進むことと、必要な動作を落ち着いて組み合わせることを区別したいところです。研究でいう技能の得点は、子どもの運転を評価するための尺度であり、通塾を始めてよいかという家庭の判断そのものではありません。
Ducheyne ら(2014)の試験では、参加した学校を無作為に、つまり割り当てを偶然に任せる方法で群に分けました。練習のみの群は25人、保護者への働きかけも加えた群は34人、比較する群は35人で、練習を行う学校では45分の練習を4回行いました。練習した群では、比較する群よりも技能の合計得点の上昇が大きく、5か月後にも改善が保たれていました。
この研究のよい点は、練習直後の印象で終わらず、時間を置いて技能を測り直していることです。教わったばかりの動きができたかと、後になっても動きを使えたかでは、成果の意味が変わります。また、比較する群を置くことで、成長や普段の自転車利用に伴う変化と、練習を加えた群の変化を照らし合わせています。
一方、Ducheyne ら(2014)では、自転車で通学する程度や保護者の自転車に対する態度には、練習による明確な効果が出ませんでした。技能が伸びることと、生活の中で自転車を選ぶことは別の結果だったわけです。通学手段には道や家庭の予定なども関わるため、得点の改善だけで利用の増加まで期待する読み方は避けます。
家庭で講習を選ぶ際には、案内にある「安全」という言葉だけでなく、実際に自転車を動かす時間があるかを見ます。説明を聞く部分と、動作を試して指導を受ける部分とでは、子どもが持ち帰るものが違います。本人がまだ苦手にしている動きを扱う内容かどうかも、参加の目的を定める助けになります。
短い講習の後にも、動作による差が残りました
安全教室という呼び名が同じでも、扱う内容や時間はそろっていません。Macarthur ら(1998)は、4年生を対象にした短い技能講習を、比較する群を置いた無作為化試験で評価しました。参加者141人のうち講習の群は73人、比較する群は68人で、追跡時に評価できたのは117人でした。
Macarthur ら(1998)の結果では、まっすぐ走る動作や完全に止まる動作と、肩越しに後方を見る動作とで達成の割合が大きく違いました。下の表は、講習を受けた群と比較する群の値を、そのまま並べたものです。いずれの動作でも統計的に有意、つまり偶然のばらつきだけでは説明しにくいとする基準を満たす群間差はありませんでした。
| 評価した動作 | 講習の群 | 比較する群 | 読む際の着眼点 |
|---|---|---|---|
| まっすぐ走る | 90% | 88% | 両群とも高い割合でした |
| 完全に止まる | 90% | 76% | 見た目の数値差と、統計的な判定は別です |
| 肩越しに後方を見る | 0% | 2% | 前へ進む動作とは達成の様子が異なりました |
この結果を通塾前の観察に生かすなら、駐輪場を出て最初の交差点までの動きを、親が後ろから見る方法があります。見る対象は、止まる、後ろを振り返る、合図をするという動きのつながりです。前進が安定しているかだけに目を向けると、進路を変える前の確認や、止まってから周囲を見る順番を見落としやすくなります。
観察のために、子どもへ急な曲がり方や難しい動作を要求する必要はありません。車や人の流れがある場所で親が試験官のように次々と指示を出すと、子どもの注意が親へ向いてしまいます。普段の動きを見た後、安全な場所に移ってから、どの場面で何を見ていたかを話します。
この講習について Macarthur ら(1998)は、安全な乗り方、知識、態度の改善に有効ではなかったと結論づけています。ここで注目したいのは、参加後に評価しても、動作の弱い部分が具体的に残っていたことです。教室を修了したというひとまとまりの情報より、どの動作がまだ難しいかという情報のほうが、次に練習する内容を選ぶ際に役立ちます。
知識と自信が増えても、道路での行動は別に見ます
教室から帰った子が、習ったことを楽しそうに話す場面は、学んだ内容を知るよい機会です。専門的な言葉を覚えたり、以前より積極的に自転車へ乗ろうとしたりする変化もあるでしょう。そうした意欲を受け止めながら、説明する力と、周囲の動きを見て行動する力をそれぞれ見ていきます。
Hatfield ら(2019)は、4〜8年生の108人に対して、8週の自転車教育の前、直後、およそ14週後に教室でオンラインの質問調査を行いました。知識と自信には明確な上昇が見られ、自転車への参加が増えることも示唆されました。その一方で、安全に関わる乗り方や衝突の経験が改善したという証拠は得られませんでした。
この前後比較は、同じ教育を受けた子の変化を複数の時点で見たものです。講習を受けない群との比較によって効果を確かめる試験とは設計が異なります。質問への答えとして表れた自信の上昇と、運転中に周囲へ注意を配る様子は、評価する手段も違うことを意識しておくと読みやすくなります。
通塾の準備では、本人に道全体を思い浮かべてもらい、歩道を走るつもりの区間と車道を走るつもりの区間を言葉にしてもらいます。これは、その区間で走ってよいと親が承認するためではなく、本人がどんな道を想定しているかを知るためです。日本の交通規則や講習の制度は、警察や自治体の最新の案内で確かめます。
子どもが思い浮かべた道と親の想定が違っていたら、その違いを出発前に扱えます。たとえば、親は広い道を使うつもりでも、子どもは曲がる回数の少ない道を選んでいるかもしれません。道を選ぶ理由がわかれば、単に「気をつけて」と伝えるより、実際に人や車と出会う場所について話を進められます。
自信がついたことを理由に、急いで単独の通塾へ進める必要もありません。止まると車体を支えられない、後ろを見ると大きくふらつくなど、基本の操作が不安定な子にとって、交通のある道は技能を試す場所に向きません。転倒や接触を避けるため、いったん自転車を使う範囲を狭め、落ち着いて扱える場所で動きを確認するほうが適しています。
事故を追った研究と、けがの研究全体の答え
安全教育の目的を考えるうえでは、技能テストだけでなく、その後の事故を追う研究も大切です。Teyhan ら(2016)は、英国の親子を長期に追う調査の参加者5,415人を分析しました。およそ40%が国の自転車技能講習を受けたと答えていましたが、講習への参加は本人が答えた自転車事故の経験とは結びついていませんでした。
Teyhan ら(2016)では、病院の記録を利用できた人のうち、自転車事故による入院があったのは6人でした。事故について本人が答えた経験と、入院に至った出来事とでは、捉える範囲が異なります。後者だけを見れば重い出来事に焦点が合う一方、発生が少ない出来事について群の差を見極めることは難しくなります。
講習への参加歴による比較では、参加した子としなかった子の家庭や、普段の自転車利用が初めから違う可能性があります。このように効果を知りたい要因以外の違いが結果に混ざることを、交絡と呼びます。Teyhan ら(2016)のような観察研究では、講習を無作為に割り当てた試験と同じ意味で、参加の有無を原因として扱うことはできません。
研究を広く集めた Richmond ら(2014)は、観察研究と試験を含む25研究を一定の基準で探して検討しました。このような方法を系統的レビューと呼びます。全体として、けがを測った指標には教育や技能練習による統計的に明確な効果が認められず、著者らは質の高い研究が乏しいことも指摘しています。
Richmond ら(2014)では、知識を測った16研究のうち8研究が、行動や態度を評価した13研究のうち5研究が、明確な改善を報告しました。これは改善を報告した研究の本数であり、参加した子の何割が上達したかという数字ではありません。知識の評価に成果がある教育も、行動の評価に成果がある教育もあり、すべての講習を同じ結果の箱に入れる読み方には無理があります。
親が教室の案内を見るときも、目標が知識なのか、操作なのか、道路での判断なのかを確かめると、期待する内容を絞れます。終了時にどんな評価が返ってくるかまで見れば、家庭で受け取る情報も想像しやすくなります。合格や修了の表示に加え、苦手な動作について説明があるかという点にも目を向けたいところです。
暗い道を歩き、最後は駐輪場の出口を見ます
塾の帰りと同じように暗くなった時間に、親子で同じ道を歩いてみます。昼間にはすぐ気づく段差や、建物の影に隠れる人が、歩く位置によってどう見えるかを比べます。車体を操作する負担がない状態なら、明るさの変わる場所や、曲がった先の見通しに注意を向けやすくなります。
このときは、道のすべてを一度に点検しようとせず、本人が見づらいと感じた場所で立ち止まります。親の高さから見えるものと、子どもが普段見ている範囲には違いがあるため、親が見えることだけで話を終わらせないようにします。塀の端や駐車している車の脇など、視線を遮る物を指さしながら話せば、曖昧な怖さを場所の特徴として共有できます。
道を歩く目的は、怖い場所を列挙して自転車への意欲を削ぐことではありません。自分の視界に何が入り、どこが隠れているかを、急いでいない時間に確かめることです。気になる区間があれば、歩いて通る方法も含めて、移動の負担と安全を両方考える余地が生まれます。
また、練習を見守る親自身も、走る子の後を追うことだけに集中しないようにします。見守る位置がほかの人の通行を妨げたり、子どもが親を気にして後ろばかり見たりするなら、観察する状況を変えます。親が先導する日と本人が道を選ぶ日では役割が異なるので、出発前にどちらが進路を案内するかを共有しておくと混乱を減らせます。
通い始めた最初の数回は、塾の駐輪場の出口に親が立ち、本人が左右のどちらを先に見ているかを確かめます。左右の順番だけを正誤にせず、その向きから何が来ると考えているのかを、出発後の落ち着いた場面で話します。駐輪場の内側では隠れていた相手が出口で初めて見えるなら、視線の動きと周囲の状況を結びつけて考えるきっかけになります。
親が立つのは、出口をふさがず子どもの動きを見渡せる位置です。声をかける前の顔の向きに目を向ければ、指示に反応した動きと、本人が自分から行った確認を区別して受け止められます。その場所で見届けたいのは、親を探す視線から、道を通る相手を探す視線への切り替わりです。
よくある質問
中学生になってから練習しても遅くありませんか
中学生になったことを、練習を省く理由にする必要はありません。Hatfield ら(2019)は4〜8年生を対象に教育の前後を調べており、幼い子だけに限った取り組みではありませんでした。久しぶりに乗る場合や自転車を替えた場合には、以前の乗り慣れた感覚に頼らず、今の車体を落ち着いて扱えるかから始めると、本人も練習の目的を受け止めやすくなります。
雨の日に傘を差して乗ろうとする場合はどうしますか
傘を持って走る練習を家庭で課すのではなく、自転車を使わない通い方を親子で用意します。片手がふさがった状態では、晴れた日に両手で操作していたときと条件が変わります。本文で挙げた操作の評価にならい、車体を扱う際に何を同時に行うのかを考えると、雨具の準備だけで済ませず、移動手段の選択まで話を広げられます。
習ったことを忘れたように見えるときは、叱るべきでしょうか
まず、説明を思い出せないのか、動作の途中で順番が抜けるのかを区別して見ます。Macarthur ら(1998)の評価でも、まっすぐ走る動作と後方を見る動作は別々に扱われており、ひとまとまりに「乗り方を忘れた」と捉える必要はありません。本人が言葉で説明する場面と、交通のない場所で動きを試す場面を分ければ、叱る前に手助けの内容を絞れます。
この記事の限界
適用範囲は、安全教育という名称全体ではなく、各研究で実施された具体的な講習の内容と、そこで使われた技能評価や事故の記録に限られます。講習後の質問への回答、動作の観察、入院の記録は捉える出来事が異なり、同じ「安全」という言葉でも、評価した結果をそろえて読む必要があります。
講習の内容や長さ、道路の環境は国ごとに違い、今回取り上げた研究から東京の通塾路へ移す際には、その違いが残ります。日本の歩道を走る子どもの技能を測った研究は見つからず、海外の講習での評価と、日本で人とすれ違いながら通う場面との間には隔たりがあります。
参考文献
- Ducheyne F, et al. Effects of a cycle training course on children’s cycling skills and levels of cycling to school. Accid Anal Prev. 2014;67:49-60.
- Teyhan A, et al. The impact of cycle proficiency training on cycle-related behaviours and accidents in adolescence: findings from ALSPAC, a UK longitudinal cohort. BMC Public Health. 2016;16:469.
- Hatfield J, et al. An evaluation of the effects of an innovative school-based cycling education program on safety and participation. Accid Anal Prev. 2019;127:52-60.
- Richmond SA, et al. Prevention of bicycle-related injuries in children and youth: a systematic review of bicycle skills training interventions. Inj Prev. 2014;20(3):191-195.
- Macarthur C, et al. Evaluation of a bicycle skills training program for young children: a randomized controlled trial. Inj Prev. 1998;4(2):116-121.
改札を出てから扉に着くまでの数分が、続くかどうかを決める。
- 向く人: 授業や練習のあと、駅までの帰り道をできるだけ短くしたい人
- 向く人: 通勤や通学の途中の駅で、乗り換えを増やさずに通いたい人
- 向かない人: 駅から離れた場所へ、車の送り迎えで通うことを前提にしたい人
- 向かない人: 移動をせず、自宅だけで学びや運動を済ませたい人
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中学生になってから練習しても遅くありませんか
中学生になったことを、練習を省く理由にする必要はありません。Hatfield ら(2019)は4〜8年生を対象に教育の前後を調べており、幼い子だけに限った取り組みではありませんでした。久しぶりに乗る場合や自転車を替えた場合には、以前の乗り慣れた感覚に頼らず、今の車体を落ち着いて扱えるかから始めると、本人も練習の目的を受け止めやすくなります。
雨の日に傘を差して乗ろうとする場合はどうしますか
傘を持って走る練習を家庭で課すのではなく、自転車を使わない通い方を親子で用意します。片手がふさがった状態では、晴れた日に両手で操作していたときと条件が変わります。本文で挙げた操作の評価にならい、車体を扱う際に何を同時に行うのかを考えると、雨具の準備だけで済ませず、移動手段の選択まで話を広げられます。
習ったことを忘れたように見えるときは、叱るべきでしょうか
まず、説明を思い出せないのか、動作の途中で順番が抜けるのかを区別して見ます。Macarthur ら(1998)の評価でも、まっすぐ走る動作と後方を見る動作は別々に扱われており、ひとまとまりに「乗り方を忘れた」と捉える必要はありません。本人が言葉で説明する場面と、交通のない場所で動きを試す場面を分ければ、叱る前に手助けの内容を絞れます。