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公開:2026年9月11日/最終更新:2026年9月11日

駅で知らない大人に誘われた小学生は断れるか|子どもの防犯の練習の研究

改札前で子どもと別れるとき、保護者はかばんの肩ひもを直しながら「知らない人についていかないでね」と声をかけます。子どもがうなずいて歩き出すと、約束は伝わったように感じられます。けれども、目の前の大人から親しげに話しかけられた場合、何度も言い聞かせた小学生は本当に断れるのでしょうか。家で約束を答える場面と、相手の言葉を聞きながらその場を離れる場面には、違う動きが含まれます。

  • 防犯の技能は、誘いへの返答、その場からの移動、大人への報告を別々に見ると捉えやすくなります。
  • 個別や小集団での練習に、誘いが起きる場面での練習を組み合わせた研究があります。
  • 教材の視聴と、子ども自身が行動を練習することでは、結果が異なりました。
  • 教えた反応が助けを求める相手にも広がることがあり、技能の獲得と適切な使い分けの両方が課題です。

駅で知らない大人に誘われた小学生は断れるか|子どもの防犯の練習の研究

改札前で子どもと別れるとき、保護者はかばんの肩ひもを直しながら「知らない人についていかないでね」と声をかけます。子どもがうなずいて歩き出すと、約束は伝わったように感じられます。けれども、目の前の大人から親しげに話しかけられた場合、何度も言い聞かせた小学生は本当に断れるのでしょうか。家で約束を答える場面と、相手の言葉を聞きながらその場を離れる場面には、違う動きが含まれます。

防犯の教育を調べた研究は、知識だけでなく、子どもが誘いにどう反応したかにも目を向けています。言い聞かせへの返事だけで断れると判断せず、断る・離れる・知らせるという行動まで教えることが、研究から得られる答えです。ただし、その行動を教える際にも、避ける相手と助けを求める相手を区別する課題があります。以下では、練習の組み合わせで変わったこと、教材だけでは変わらなかったこと、教え方によって生じた困りごとを順に読みます。

要点

  • 防犯の技能は、誘いへの返答、その場からの移動、大人への報告を別々に見ると捉えやすくなります。
  • 個別や小集団での練習に、誘いが起きる場面での練習を組み合わせた研究があります。
  • 教材の視聴と、子ども自身が行動を練習することでは、結果が異なりました。
  • 教えた反応が助けを求める相手にも広がることがあり、技能の獲得と適切な使い分けの両方が課題です。

「あとで話した」と「その場で断った」は別の行動

「何かあったら親に話す子だから大丈夫」と考えると、話すまでの間にどんな行動を取るかを見落としやすくなります。White ら(2018)は、防犯の行動訓練や子どもを守る教育を事前に受けていない子どもについて、仕掛け人による誘いへの反応を観察しました。仕掛け人とは、研究の手順に沿って子どもに声をかける役の大人です。この研究では、後からの報告だけを成功の印として扱わず、その場での反応も調べています。

White ら(2018)で、仕掛け人から離れた子は27%、誘いを断った子は48%、仕掛け人がいたことを大人に話した子は83%でした。これは同じ意味の回答を言い換えた割合ではなく、それぞれ異なる行動の割合です。報告の割合が高くても、離れる行動の割合が同じように高いわけではありません。これらの値を足して「安全に行動した子」の割合にすることもせず、行動ごとの結果として読みます。

さらにWhite ら(2018)では、不安の強い子は早く報告する一方、仕掛け人と一緒に行くことにも同意しやすいという関連がありました。「怖がりだから誘いには乗らない」という見方とは違う結果です。不安の強さを測った観察なので、怖がらせる言葉を増やしたらどうなるかを試した結果とは区別します。子どもの性格だけを頼りに、断る場面を想像したつもりになるのは避けたいところです。

この違いは、家での会話の聞き方にも関わります。「知らない人に会ったらどうする」とひとまとめにすると、子どもは「お母さんに言う」だけで答えを終えるかもしれません。そこで大人が注目するのは、報告の言葉の正しさだけでなく、誘われてから報告するまでの行動です。研究が別々に扱った反応を意識すると、普段の約束のどの部分が言葉になっていないかを捉えやすくなります。

個別の練習と、その場での練習を組み合わせた結果

防犯の行動を教える研究でいう「技能」は、正解を選ぶ知識問題だけを指していません。誘いに対してどう応じ、どのように動くかという、観察できる振る舞いを指します。また「その場での練習」は、誘いが起きる状況の中で行動を教える方法です。一般的な注意を聞くことと、場面の中で行動を練習することを、研究は異なる条件として扱っています。

Johnson ら(2005)は、未就学児13人に個別の行動の練習と、その場での練習を組み合わせました。その結果、参加した子ども全員が技能を身につけ、2週間後と1か月後に追跡できた子ども全員が、研究で定めた基準を満たしていました。3か月後も、3人を除いて基準を満たす行動が保たれていました。最初に学べたことに加えて、時間を置いてからも行動が残っているかを見た点が、この研究を読むうえで大切です。

小集団で学ぶ場合について、Johnson ら(2006)は、行動の練習だけを行う方法と、それにその場での練習を加える方法を比べました。対象は学童で、どちらの方法でも誘いに対処する技能の改善が見られました。さらに3か月後の評価では、その場での練習を加えた群の得点が、行動の練習だけの群より高いという結果でした。違いが現れた時点まで読むと、習った直後の反応だけで教育を評価しない理由がわかります。

両研究で注目したいのは、「教えた」という大人側の行為と、「行動が残った」という子ども側の変化を分けていることです。集団で説明を聞き終えたことや、家で約束を復唱したことは、その日の学習の経過を示します。一方、時間がたって場面が変わったときの反応は、別に確かめる対象になります。親が以前教えたことを思い出している間にも、子どもが今使える言葉や動きには変化があり得るという読み方です。

映像を見せた後に、何を測ったのか

映像教材は、大人と子どもが同じ場面を見ながら話すきっかけになります。ただ、視聴を終えたことと、教えられた動作が身についたことは同じ評価ではありません。Miltenberger ら(2013)は、6〜8歳の子どもを対象に、映像教材を見た群と比較する群を設けて、安全の技能を調べました。視聴後の技能には、群どうしではっきりした差が認められませんでした。

その後、Miltenberger ら(2013)では、親が行うその場での練習を受けると、両群の得点は改善しました。この段階では、群どうしの成績に明確な差はありませんでした。教材を見た群だけを取り出すのでなく、比較する群も一緒に追ったことで、どの段階で変化が現れたかがわかります。少なくともこの試験では、映像を見たという履歴そのものが、評価された技能の差を説明したわけではありません。

Beck ら(2009)も、6〜8歳の子どもについて、市販の教育プログラムと親によるその場での練習を調べました。子どもごとに練習を始める時期をずらして変化を見る方法を使い、教材による教育の後には安全の技能が示されず、その場での練習後には全員が基準を満たしたと報告しています。その技能は時間がたっても保たれていました。次の表では、映像を含む教育と場面での練習を、調べた対象とともに比べます。

よく言われること 研究で言えること 対象・研究の型
教材を見終えれば行動も身につく 視聴後に比較群との技能の差は見られなかった Miltenberger ら(2013)、6〜8歳、比較群を設けた試験
個別の練習はその日限りで終わる 場面での練習との組み合わせ後、追跡でも技能を保った子がいた Johnson ら(2005)、未就学児13人の実験
小集団で教えれば追加の練習は同じ結果になる その場での練習を加えた群の追跡得点が高かった Johnson ら(2006)、学童の小集団での群比較

教える反応を広げすぎないための注意

「知らない大人からは離れる」という教え方には、助けてくれる大人に近づく場面との境目があります。Ledbetter-Cho ら(2021)は、自閉スペクトラム症の子ども4人に、一般の見知らぬ大人の誘いへの安全な反応を教えました。すると、練習前には警察官の指示に従っていた子どもが、練習後には警察官に声をかけられた際にも、逃げるなどの反応を示しました。危険を避けるために教えた行動が、意図していない相手にまで広がった結果です。

このように、ある条件で学んだ反応が広い範囲に及ぶことを、ここでは「過剰な般化」と呼びます。Ledbetter-Cho ら(2021)では、一般の大人と警察官に対する適切な反応の維持は一貫せず、2人には追加の練習が必要でした。避ける行動の得点だけを高めても、助けを受ける場面の適切さまで同時に整うとは限らないという問題です。警察官かどうかだけを合言葉にするのでなく、何のために誰に助けを求める場面なのかという区別にも目を向ける読み方ができます。

不安が強く、誘いの話をするだけでつらくなる子には、恐怖を高めるような練習は向きません。家庭で取り入れるなら、子どもが取り組む内容を知ったうえで、短い言葉を選ぶ会話や、保護者と歩きながら場所を確かめる形にします。仕掛け人を使った研究上の手順は、研究者と親が手順を決めて行ったものであり、家庭で知らない大人を装って突然試す方法は勧めません。答えが出ないときには説教を続けるより、どの言葉が難しいのかを大人が受け止める余地を残します。

また、断れたかどうかを子どもの「よい子・悪い子」の評価に結びつけないことも、家庭での扱いとして大切です。大人の頼みを断るのは失礼だと思っている子には、安全のために会話を終えることと、普段のあいさつをすることの違いを伝えます。話を最後まで聞いて納得してもらうことを、子どもの課題に加える必要はありません。大人の側が説明の責任を引き受け、子どもが短い返答を使える余地を作ります。

武蔵境の塾へ通う小学生と、改札前で確かめること

塾へ出かける前、かばんを持った子どもに、断る言葉、その場を離れる動き、近くの大人に話すことを、自分の言葉で続けて言ってもらいます。「いやです」でも「行きません」でも、本人が口にしやすい言葉から始めます。大人の長い模範解答に合わせるより、途中で言葉が止まる箇所を知るための会話にします。これは家庭で約束を具体化する提案で、研究の得点をつけるための試験ではありません。

続いて、知っている大人に「一緒に来て」と頼まれた場合を話し合います。顔を見たことがあるかだけでなく、保護者と約束した行き先や迎えの予定が変わる場面として考えると、会話の焦点が定まります。子どもが「知っているから行く」と答えたら、その返答を叱るのでなく、誰との約束をどう確かめたいのかまで言葉を補います。大人が予定を変更する際の伝え方も、この会話に合わせて整えます。

実際に駅を使う日には、改札前を一緒に歩き、駅員のいる窓口など、頼れる相手がいる場所を見ます。親の視線では目立つ窓口も、子どもは普段の進行方向から見ていないかもしれません。どちら側から声をかけるのか、窓口の前で何と言うのかまで、普通の通り道の中で確かめます。「大人に知らせる」という約束に、近づく先と最初の言葉を持たせるためです。

次に一緒に改札前を通るときは、親が先に窓口の方向を教える前に、困ったときに向かう場所を本人が指さして示せるかを見ます。指した先が親の考えた場所と違っていたら、その場所を選んだ理由を聞く時間を取ります。窓口に着いても話し始めにくい子には、「困っています。助けてください」という切り出し方も渡しておきます。子どもが言葉を探している間は、大人のほうが話を急がず待つ役を担います。

よくある質問

高学年になれば練習は要らなくなりますか

高学年では、下校後の用事や友だちとの予定など、保護者が把握している行き先と本人の予定がずれる場面を話題にできます。Johnson ら(2006)が時間を置いた追跡で見たのは、以前学んだ技能が残っているかという点でした。家庭でも、年齢だけで卒業とするより、予定変更を誰にどう伝えるかなど、現在の生活で増えた判断を扱う形に変えると、幼い頃の約束を繰り返すだけの会話を避けられます。

顔見知りの大人が「親に頼まれた」と言ったらどうしますか

迎えを代わってもらう予定がある日は、保護者側から先に、誰が来るのかを子どもに伝える形が考えられます。White ら(2018)が扱ったのは見知らぬ人による誘いで、親の知人を名乗る人の真偽を見抜く課題とは違います。家庭の取り決めとしては、相手の説明をその場で子どもだけが判定する役にせず、迎えの変更を保護者に確かめる間は、約束した場所で待てる段取りを大人が支えます。

発達の特性があり、言葉で長く説明するのが難しい場合は

話す長さをそろえるより、本人が使っている短い表現や、行き先を指さす方法から会話を組み立てることが考えられます。Ledbetter-Cho ら(2021)の結果を踏まえると、本人の支援に関わる人とは、避ける反応だけでなく、助けを受けるときの様子も共有する意味があります。家庭での提案として、答えの文章を増やすことより、どんな伝え方なら意図が伝わるかを相談の中心に置くと、本人に合った支え方を話しやすくなります。

この記事の限界

対象は幼児〜8歳前後が中心で、小学校高学年を調べた研究や、東京の駅から塾へ通う場面を直接調べた研究は見つかりませんでした。White ら(2018)の割合も、日本の小学生が誘いを断る割合として読む数値ではなく、参加した子どもの教育歴と観察条件を伴った結果です。

ここで扱った研究には練習によって実際の被害が減ったことを示すものがなく、評価されたのは主に研究用に設けられた誘いへの反応です。少人数の実験で技能の変化を捉えていても、本当の誘いに遭った子が練習どおりに動くかを測る段階には至っていません。

参考文献

  1. White C, et al. “Tell, tell, tell again”: The prevalence and correlates of young children’s response to and disclosure of an in-vivo lure from a stranger. Child Abuse Negl. 2018;82:134-143.
  2. Johnson BM, et al. Evaluation of behavioral skills training for teaching abduction-prevention skills to young children. J Appl Behav Anal. 2005;38(1):67-78.
  3. Johnson BM, et al. A preliminary evaluation of two behavioral skills training procedures for teaching abduction-prevention skills to schoolchildren. J Appl Behav Anal. 2006;39(1):25-34.
  4. Miltenberger RG, et al. Efficacy of the stranger safety abduction-prevention program and parent-conducted in situ training. J Appl Behav Anal. 2013;46(4):817-820.
  5. Beck KV, et al. Evaluation of a commercially available program and in situ training by parents to teach abduction-prevention skills to children. J Appl Behav Anal. 2009;42(4):761-772.
  6. Ledbetter-Cho K, et al. Teaching Children with Autism Abduction-Prevention Skills May Result in Overgeneralization of the Target Response. Behav Modif. 2021;45(3):438-461.

改札を出てから扉に着くまでの数分が、続くかどうかを決める。

  • 向く人: 授業や練習のあと、駅までの帰り道をできるだけ短くしたい人
  • 向く人: 通勤や通学の途中の駅で、乗り換えを増やさずに通いたい人
  • 向かない人: 駅から離れた場所へ、車の送り迎えで通うことを前提にしたい人
  • 向かない人: 移動をせず、自宅だけで学びや運動を済ませたい人

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高学年になれば練習は要らなくなりますか

高学年では、下校後の用事や友だちとの予定など、保護者が把握している行き先と本人の予定がずれる場面を話題にできます。Johnson ら(2006)が時間を置いた追跡で見たのは、以前学んだ技能が残っているかという点でした。家庭でも、年齢だけで卒業とするより、予定変更を誰にどう伝えるかなど、現在の生活で増えた判断を扱う形に変えると、幼い頃の約束を繰り返すだけの会話を避けられます。

顔見知りの大人が「親に頼まれた」と言ったらどうしますか

迎えを代わってもらう予定がある日は、保護者側から先に、誰が来るのかを子どもに伝える形が考えられます。White ら(2018)が扱ったのは見知らぬ人による誘いで、親の知人を名乗る人の真偽を見抜く課題とは違います。家庭の取り決めとしては、相手の説明をその場で子どもだけが判定する役にせず、迎えの変更を保護者に確かめる間は、約束した場所で待てる段取りを大人が支えます。

発達の特性があり、言葉で長く説明するのが難しい場合は

話す長さをそろえるより、本人が使っている短い表現や、行き先を指さす方法から会話を組み立てることが考えられます。Ledbetter-Cho ら(2021)の結果を踏まえると、本人の支援に関わる人とは、避ける反応だけでなく、助けを受けるときの様子も共有する意味があります。家庭での提案として、答えの文章を増やすことより、どんな伝え方なら意図が伝わるかを相談の中心に置くと、本人に合った支え方を話しやすくなります。