- 子どもの受診記録では、幼い年齢で巻き込みが目立ち、手のけがとのつながりが報告されています。
- 大人が同行していた子のけがもあり、同伴の有無だけでは乗っている間の状態を表せません。
- 柔らかい樹脂の履物を履いた子の重い足のけがが報告され、別の履物でも重傷例があります。
- 年齢が高い人の記録では転倒が大きな割合を占め、若い層ではけがの減少も報告されています。
駅のエスカレーターで子どもがけがをするとき|エスカレーターの事故の研究
推計26000件という数字が、McGeehan ら(2006)の調べた米国の子どものエスカレーターのけがにあります。対象は1990〜2002年に救急を受診した0〜19歳で、年平均では2000件でした。日常の移動を支える設備でも、けがは起きています。ただし、この大きな合計だけを見て、通塾する子がとりわけ危険だと考えると、年齢によって違う事故の姿を見落とします。
武蔵境駅北口で、塾のかばんを背負った子と待ち合わせると、途中のエスカレーターでの乗り方が気になることがあります。駆け上がる、手すりにもたれる、といった動きを見た保護者には、子どものけがはどの年齢で、どのように起きるのかという疑問が浮かびます。研究で目立つのは幼い子の巻き込みで、小中高生をひとまとめに最も危ない年齢層とする結果ではありません。 転んだのか、手足が挟まったのか、重いけがで入院したのかによって、記録が伝える問題も変わります。子どもの年齢と実際の持ち物を思い浮かべながら、事故の起き方を読み解きます。
要点
- 子どもの受診記録では、幼い年齢で巻き込みが目立ち、手のけがとのつながりが報告されています。
- 大人が同行していた子のけがもあり、同伴の有無だけでは乗っている間の状態を表せません。
- 柔らかい樹脂の履物を履いた子の重い足のけがが報告され、別の履物でも重傷例があります。
- 年齢が高い人の記録では転倒が大きな割合を占め、若い層ではけがの減少も報告されています。
武蔵境の学習塾へ通う子と、幼い子のけがの違い
小学生から高校生まで、駅を使って通う子には年齢の幅があります。そこに送迎についてくる幼い弟や妹が加わると、同じエスカレーターでも気にかけたい動きは変わります。「子どもは危ない」という大きな括りより、どの年齢にどんな受傷が集中していたかを見るほうが、家庭の場面と結びつけやすくなります。
McGeehan ら(2006)は、米国の全国的な傷害監視のデータベースにある救急受診記録を遡って分析しました。子どものうち5歳未満で推計件数が最も多く、12000件、人口100000人あたりの年間の率は4.8でした。これは、受診した症例をもとに全国の規模を見積もった値です。特定の駅で実際に数えた件数でも、利用者を乗り場で追跡した数字でもなく、幼い年齢に負担が偏っていたことを示します。
同じMcGeehan ら(2006)の記録では、巻き込みは全体の29.3%に対し、5歳未満のけがの36.5%を占めていました。ここでいう巻き込みは、体の一部などが設備の隙間に挟まれる事故です。この年齢では手が最も多い受傷部位で40.6%、手のけがの72.4%は巻き込みによるものでした。足元だけを見ていると手の問題が抜け落ちる、という読み方がこの結果から生まれます。
通塾する本人が年長になっていても、家族全員をその子の動きに合わせて考える必要はありません。小さな子が同行する日は、本人の通い慣れと、幼い子の乗り方を別の課題として扱えます。逆に、小中高生に幼児の数字をそのまま示して怖がらせるより、かばんを持っている自分の手足がどこにあるかという話のほうが、本人の行動に沿っています。
転倒と巻き込みでは、見ている事故が違う
エスカレーターの事故という言葉から、足が機械に挟まる場面だけを思い浮かべる人もいるでしょう。けれども、McGeehan ら(2006)が調べた子どもの全体では、最も多かった起き方は転倒で、13000件、51.0%でした。幼い子で巻き込みが目立つことと、子ども全体で転倒が多いことは両立します。年齢を絞った集計と全体の集計を行き来するときには、この違いが大切です。
Platt ら(1997)は、小児の救急部門を1990年8月〜1995年2月に受診した18歳未満の子どもを調べました。巻き込みが起きた位置には、段と段の間、段と側面の間、最後の段と降り口のくし状の板の間がありました。動いている途中だけでなく、降りる側の境目も事故の記録に登場します。「乗り込めたから、あとは移動を待つだけ」という捉え方では、設備と体が接する位置の変化が抜けてしまいます。
同じ言葉で語られがちな事故を、研究が拾った内容に沿って表に置きます。下の比較は、けがをした人の記録に何が表れていたかを見るものです。転倒、手の巻き込み、足のけがでは、読むべき箇所が違います。
| よくある捉え方 | 研究で表れたこと | 対象・研究の型 |
|---|---|---|
| 子どものけがは足の挟み込みが中心 | 全体では転倒が多く、幼い子では手の巻き込みが目立つ | McGeehan ら(2006)、米国の子どもの救急受診記録 |
| 乗っている途中だけに注意すればよい | 段の間や側面のほか、降り口の境目でも巻き込みがあった | Platt ら(1997)、小児救急の症例記録 |
| 足のけがは軽い擦り傷だろう | 緊急手術を要する重いけががあった | Lim ら(2010)、足をけがした子の病院記録 |
大人と一緒だった子にも、けがは起きていた
親がそばにいるかどうかは、家庭ではわかりやすい安心の基準になります。それでも「一緒にいた」という表現には、隣で手を取っていた場合も、少し離れて後ろを見ていた場合も入ります。乗っている間の行動を考えるには、同伴という言葉をもう少し細かくする必要があります。
Platt ら(1997)の記録にあった子は26人で、平均年齢は6歳、範囲は2〜16歳でした。7歳以下の子は全員が大人と一緒でしたが、50%は保護者と手をつないでいませんでした。また、21件、81%が鉄道駅または地下鉄駅で起きていました。買い物の途中だけでなく、駅での移動という場面にも接点のある症例報告です。
Platt ら(1997)では、13人、50%が手術のために入院していました。著者らは、幼い年齢、大人の見守りの不十分さ、乗っている間の不適切な行動、設備の機械的な問題を危険に関わる要素として挙げています。本人の不注意だけに原因を押し込めず、人の動きと設備の両方を見る結論です。子どもを叱る話だけで終えると、そばにいた大人が何を支えていたかという視点も失われます。
ただし、この観察記録から、手をつなぐことで事故がどれほど減るか、駆け上がると何倍危ないかという予防効果は算出できません。けがをしなかった利用者を同じ条件で比べた試験ではないためです。家庭に引き寄せるときは、事故の数字を罰や説教の強さに変えるより、同行者が受け持つ動作を考える出発点にするほうが適切です。大人が荷物を扱う場面と子どもに注意を向ける場面が重なっていないか、移動全体の様子にも目を向けられます。
柔らかい履物の報告が示した、足のけがの重さ
履物の研究で注目したいのは、流行や見た目ではなく、足が挟まったときにどのようなけがになったかです。Lim ら(2010)は、2006年9月〜2008年9月にエスカレーターで足をけがした17人の子どもの病院記録を調べました。そのうち13人、76.5%は、柔らかい樹脂のサンダル型の履物を履いていました。これは足のけがを受診した集団の内訳で、履いている子全体に占めるけがの割合とは異なります。
Lim ら(2010)では、その13人のうち9人、69.2%に、入院と緊急手術が必要な重い足のけががありました。著者らは、この種の履物が関わるエスカレーターの足のけがでは、足が強く押しつぶされることや、外傷によって切断されることも起こると結論づけています。軽い挟み込みという日常語では、記録された損傷の重さが十分に伝わりません。履物の話を単なる服装の好みで済ませない理由は、ここにあります。
一方で、Lim ら(2010)の別の履物を履いていた群でも、4人中3人に重い足のけががありました。特定の素材だけに目を向けると、この結果を読み落とします。研究が示す被害の重さと、どの履物なら安心と判定するかは、同じ話ではありません。商品名を探して避けることだけを家庭の対策にすると、子どもが実際に使っている靴そのものを見なくなりがちです。
靴を選ぶときには、子どもが気に入っている理由と、移動で使う場面を分けて話せます。履きやすさ、着脱のしやすさ、足先の感覚など、日常の使い心地には本人の言葉があります。その言葉を否定する必要はなく、動く設備を使う日に何を履いているかを保護者も把握することが、研究を生活に結びつける入口になります。履物だけを替えて乗り方への関心を終えるのではなく、足を傷める事故として受け止めることが大切です。
年齢が上がると転倒が目立ち、若い層には減少もある
エスカレーターのけがを子どもだけの問題と見ると、家族の中で付き添う側の状態を見逃します。O’Neil ら(2008)は、米国の65歳以上について、1991〜2005年の救急受診のデータを遡って調べました。推計のけがは39,850件で、最も多い原因は滑る・つまずく・転ぶというもので84.9%でした。年齢が高くなるほど、頭のけがの率と入院の率も高くなっていました。
中国の広州地下鉄を扱ったXing ら(2019)は、2013〜2015年の950件のけがを分析しました。66歳以上の乗客が全体の49.1%を占め、年齢が上がるほど転倒によるけがの割合が高く、巻き込みによる割合は低くなっていました。これは、年齢とともに事故の構成が変わることを示します。高齢の家族が付き添うときには、子どもを見守る役割と、付き添う本人の移動の負担を同時に考えたいところです。
さらにCaswell ら(2022)が調べた2009〜2019年の救急受診記録では、若い層でけがの発生が時間とともに減っていました。成人の患者は、若い層より頭・首・顔のけがや死亡に至る事例が多いという結果でした。昔の小児の報告だけを読む場合とは異なる、年齢間の比較と時間的な変化が加わります。子どもの事故への注意を保つことと、若い層で悪化し続けているという印象を持つことは区別したいものです。
付き添う大人にも足元の不安がある場合、子どもの体を支える役まで当然に任せる方法は向きません。親族の中で年長だから支えられる、という役割の割り振りをしなくてもよいのです。移動を助ける人自身が何を負担に感じるかも、家族で経路を選ぶ条件になります。年齢別の結果は、子どもの責任を重くするためではなく、同じ設備を使う人それぞれの事情を考える材料になります。
乗る前の持ち物と、出発前の靴を確かめる
次に子どもと駅を通る日は、エスカレーターへ近づく前の通行を妨げない場所で、かばんのひもや上着の裾がどこにあるかを一緒に見ます。家を出た姿のままではなく、かばんを背負い直した後や上着を脱いだ後の状態を見るのが具体的です。長く垂れた部分を扱うなら、動く段に乗ってから身をかがめる場面を作らず、乗る前に整えます。普段は背中に隠れて本人が意識していない部分を、親子で確かめる機会になります。
そのまま、いつも使うエスカレーターの横に階段があるかも一緒に確かめます。階段を使うほうがよいと一律に勧めるためではなく、その場でほかの通り方を選べるかを知るためです。階段の利用が負担になる子や同行者には、別の設備を探す余地もあります。設備の利用方法や地域の呼びかけは、各社や自治体の最新の案内で確かめます。
これらは、子どもに危険な動きを実演させる作業ではありません。ひもがどこまで届くかを機械へ近づけて試したり、隙間の広さを手で確かめたりする必要もありません。普段の持ち物の状態と、通行の選択肢を見るだけで、話す内容は十分に具体的になります。大きな声で「気をつけて」と繰り返すより、見つけた状態に対応する短い言葉を交わすほうが、何を直す話なのかが伝わります。
そして通塾の日、玄関で履こうとしている靴が、つま先の柔らかい樹脂の履物かどうかを一度だけ見ます。駅に着いてから靴の種類を思い出すより、出発前なら現物が目の前にあります。学校用とは違う靴に履き替える日も、家を出る足元が確認の対象です。気になる履物だった日は、駅で子どもに注意を追加するだけで済ませず、玄関で別の靴を選ぶところまで親子の話を進めます。
よくある質問
雨の日に濡れた靴で乗るときは、何を考えればよいですか
雨の日は、靴に加えて濡れた傘をどう持つかという動作も増えます。転倒が記録されていることを踏まえ、乗る直前に傘を畳みながら足を運ぶような作業の重なりを減らす考え方があります。水気への対応を急いで乗り口で済ませようとせず、通行の流れから離れた場所で持ち直すほうが、荷物の扱いに集中できます。雨の帰りは足元だけでなく、手元で増えた作業にも目を向けます。
混む時間に押されそうになったらどうしますか
混雑して身動きが取りにくいときは、周囲の流れに合わせることだけを優先せず、乗る前の段階で利用を見合わせる選択もあります。転倒と巻き込みでは事故の起き方が違うので、単に前の人についていけばよいとは考えないほうがよいでしょう。困った場面では近くの係員に状況を伝え、移動を手伝ってもらう方法もあります。混雑を抜けることを子どもだけの判断や体力に任せず、助けを求める選択を通い方に含めます。
低学年のきょうだいを連れて通塾するときはどうしますか
弟や妹と一緒の日には、乗る前に誰が手をつなぐかをはっきりさせます。年上の子もかばんを持つ利用者なので、きょうだいだからという理由だけで見守る役を任せないことが大切です。大人が同行する場合も、荷物を持つ人と幼い子を支える人の役割を曖昧にしないようにします。年齢の違う家族で移動する日は、普段ひとりで通うときと同じ段取りを前提にせず、大人が同行する必要も含めて通い方を考えます。
この記事の限界
測定の中心は、事故の後に残された受診記録やけがの報告で、利用者が乗った回数や乗っていた時間までそろえた比較ではありません。国や期間、年齢区分も異なるため、件数や割合の大小を、そのまま乗るたびの危険度の順位に置き換える読み方には限りがあります。
病院・救急を受診した症例に加え、中国の地下鉄駅のけがの記録を扱いましたが、受診に至らない軽いけがまで網羅した集計ではなく、日本の駅での起き方を直接調べた研究も見つかりませんでした。生活の中で起きる小さな傷と、国内の通塾時の細かな事情まで把握できる記録ではない点が、読み取れる範囲を狭めます。
参考文献
- McGeehan J, et al. Escalator-related injuries among children in the United States, 1990-2002. Pediatrics. 2006;118(2):e279-85.
- Platt SL, et al. Escalator-related injuries in children. Pediatrics. 1997;100(2):E2.
- Lim KB, et al. Escalators, rubber clogs, and severe foot injuries in children. J Pediatr Orthop. 2010;30(5):414-419.
- O’Neil J, et al. Escalator-related injuries among older adults in the United States, 1991-2005. Accid Anal Prev. 2008;40(2):527-533.
- Xing Y, et al. An analysis of escalator-related injuries in metro stations in China, 2013-2015. Accid Anal Prev. 2019;122:332-341.
- Caswell SR, et al. Age-Related Injuries From Escalators. Am Surg. 2022;88(3):364-367.
改札を出てから扉に着くまでの数分が、続くかどうかを決める。
- 向く人: 授業や練習のあと、駅までの帰り道をできるだけ短くしたい人
- 向く人: 通勤や通学の途中の駅で、乗り換えを増やさずに通いたい人
- 向かない人: 駅から離れた場所へ、車の送り迎えで通うことを前提にしたい人
- 向かない人: 移動をせず、自宅だけで学びや運動を済ませたい人
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雨の日に濡れた靴で乗るときは、何を考えればよいですか
雨の日は、靴に加えて濡れた傘をどう持つかという動作も増えます。転倒が記録されていることを踏まえ、乗る直前に傘を畳みながら足を運ぶような作業の重なりを減らす考え方があります。水気への対応を急いで乗り口で済ませようとせず、通行の流れから離れた場所で持ち直すほうが、荷物の扱いに集中できます。雨の帰りは足元だけでなく、手元で増えた作業にも目を向けます。
混む時間に押されそうになったらどうしますか
混雑して身動きが取りにくいときは、周囲の流れに合わせることだけを優先せず、乗る前の段階で利用を見合わせる選択もあります。転倒と巻き込みでは事故の起き方が違うので、単に前の人についていけばよいとは考えないほうがよいでしょう。困った場面では近くの係員に状況を伝え、移動を手伝ってもらう方法もあります。混雑を抜けることを子どもだけの判断や体力に任せず、助けを求める選択を通い方に含めます。
低学年のきょうだいを連れて通塾するときはどうしますか
弟や妹と一緒の日には、乗る前に誰が手をつなぐかをはっきりさせます。年上の子もかばんを持つ利用者なので、きょうだいだからという理由だけで見守る役を任せないことが大切です。大人が同行する場合も、荷物を持つ人と幼い子を支える人の役割を曖昧にしないようにします。年齢の違う家族で移動する日は、普段ひとりで通うときと同じ段取りを前提にせず、大人が同行する必要も含めて通い方を考えます。