- 目がさえた感じと、覚えたことを思い出せる成績は別の指標です。
- 噛む条件を変えた実験では、注意の種類によって改善と悪化の両方が見られました。
- 記憶に良い結果が出た実験はありますが、再検証では同じ効果が出ませんでした。
- 試すなら噛む前後の手順を決め、教室の決まりと本人の口の状態を先に確かめます。
塾へ向かう電車でガムを噛む子|ガムと注意・記憶の研究
西武多摩川線のホームで待つ間にガムを噛めば、目がさえるだけでなく、そのあと塾で習うことも覚えやすくなるのでしょうか。ベンチでかばんからガムを出す子を見て、噛み終えたらどうするかを保護者が考える場面です。眠そうな顔を見ると、保護者は少しでも頭を切り替えてから授業に臨んでほしいと思うかもしれません。けれども、口を動かしたあとのすっきりした感じと、授業の内容が記憶に残ることは、別々に確かめる必要があります。
ガムで目のさえ方が変わる研究はありますが、記憶が良くなる結果はそろわず、授業中まで噛み続けることを勧める根拠にはなりません。 Smith(2009)では覚醒、つまり目がさえている状態は高まった一方、記憶課題には明確な効果がありませんでした。さらに、噛む時点を学習の前に置くか、学習と重ねるかでも結果が違います。家庭で判断するときは、「眠気」「課題の成績」「口やあごの不快さ」をまとめて良し悪しにせず、本人の言葉で分けて聞くことが出発点になります。
要点
- 目がさえた感じと、覚えたことを思い出せる成績は別の指標です。
- 噛む条件を変えた実験では、注意の種類によって改善と悪化の両方が見られました。
- 記憶に良い結果が出た実験はありますが、再検証では同じ効果が出ませんでした。
- 試すなら噛む前後の手順を決め、教室の決まりと本人の口の状態を先に確かめます。
目がさえた感じと、眠気を測る指標は一致しない
「ガムを噛むと頭がすっきりする」という話には、研究で支えられる部分があります。Smith(2009)はガムを噛むことによる気分や学習、記憶などへの影響を調べ、覚醒が高まったと報告しました。その一方で、記憶課題には統計的に有意な効果、つまり偶然のばらつきだけでは説明しにくい差は見られませんでした。同じ研究の中で感覚と記憶の結果がわかれている点が、授業への期待を考える際の手掛かりです。
Johnson ら(2012)は、暗くした実験室で11分の瞳孔の検査を行い、ガムを噛む条件を、噛むまねだけをする条件や噛まない条件と比べました。瞳孔は目の中央にある光の入り口で、その大きさの不安定な揺れを眠気の指標として使っています。ガムを噛む条件では検査後の揺れの増加が抑えられ、日中の眠気の増加を和らげる結果でした。しかし、本人が答えた覚醒の評価が下がることを抑えた証拠は得られず、体の指標と本人の感覚は同じ動きをしていません。
Allen ら(2015)には、課題を行わないときの気分や、噛む速さと強さ、勤務中の状態を扱う研究が含まれます。勤務中に噛むことは、生産性の高さや認知上の問題の少なさと関連し、著者らは覚醒の低下を和らげる可能性を述べています。ここでいう認知は、注意を向けたり情報を扱ったりする頭の働きです。子どもに感想を聞くなら、「すっきりしたか」に加え、「先生の話を追いやすかったか」を別に聞くと、気分と学習中の様子を混ぜずに話せます。
注意は、続ける力と切り替える力で結果が違う
授業に集中するという言葉には、説明を聞き続けることも、板書から問題文へ目を移すことも含まれます。研究ではこうした働きを別々の課題で測ります。そのため、ある注意課題の成績が上がったという報告を読む際には、何を続け、何を切り替える課題だったかが重要です。「注意が良くなった」という短い紹介だけでは、授業のどの動作に近い結果なのかが見えにくくなります。
Tucha ら(2004)は健康な成人を対象に、噛まない、噛む動作をまねる、味のないガムを噛む、スペアミント風味のガムを噛む条件で、記憶と注意を調べました。ガムを噛むことで持続的注意、つまり注意を向け続ける働きは改善しました。一方、覚醒と、注意を柔軟に切り替える働きには悪影響が見られ、記憶も改善しませんでした。良い方向の結果だけを取り出すと、同じ実験で生じた不利益を見落とします。
比べる相手にも意味があります。噛むまねとの比較は口を動かすことに、味の違うガムとの比較は風味の条件に目を向けるためのものです。家庭では製品を次々に替えるよりも、まず何を期待して噛んでいるかを本人に聞く方が整理しやすくなります。下の表は、似た表現に見える研究結果を、測ったものの違いで並べたものです。
| ガムに期待する働き | 覚醒と記憶の結果 | 噛む条件と研究対象 |
|---|---|---|
| すっきりすれば記憶も良くなる | Smith(2009)は覚醒の上昇を報告したが、記憶課題の改善は示さなかった | ガムが気分や記憶などに与える影響の研究 |
| 眠気は感想を聞けば同じように測れる | Johnson ら(2012)は瞳孔の指標と自己評価で異なる結果を示した | 暗い実験室で、ガム、噛むまね、噛まない条件を比較 |
| 噛めば注意全体が良くなる | Tucha ら(2004)は持続的注意の改善と、覚醒・柔軟性の悪化を報告した | 健康な成人が噛む条件を変えた実験 |
記憶の実験は、噛む状態をそろえても結果がそろわない
ガムと記憶をめぐっては、覚えるときと答えるときの状態をそろえる考え方があります。これは文脈依存記憶と呼ばれ、情報を覚えた際の状況が、あとで思い出す手掛かりになるという考え方です。授業中と試験中の両方で噛めばよさそうに聞こえますが、ガムを使った実験には支持する結果と、再現しなかった結果があります。まず、実際に比べられた条件を読む必要があります。
Baker ら(2004)は、最初に覚える段階でガムを噛んだ参加者の方が、思い出す成績が良かったと報告しました。また、覚える段階と思い出す段階の間で、噛む状態から噛まない状態へ、あるいはその逆へ切り替えると、成績が低下しました。ここには、噛むことそのものに加えて、途中で状態を変えることも関わっています。この結果を家庭の予定に置き換えて考えるなら、電車で噛んで教室では噛まない使い方も、最初から区別しておく条件になります。
一方、Miles ら(2007)はスペアミントのガムと単語の学習、直後の思い出しを再検証しました。覚える段階でも思い出す段階でもガムの効果は出ず、噛む状態をそろえることによる記憶への効果も示されませんでした。Baker ら(2004)の結果だけを理由に、試験中までガムを持ち込む必要があると考えるのは早計です。再検証の結果も合わせると、噛む状態をそろえることを暗記の基本手順にするには、支えとなる結果がそろっていません。
家庭では、覚えた感覚だけで判断せず、実際に答えられたかを分けて扱えます。単語が目に入っているときの親しみやすさと、何も見ずに答えることは、確認の仕方が違います。塾の小テストがあるなら、新たな課題を増やす前に、そのとき本人が何を思い出せたかを話題にするとよいでしょう。
噛むなら授業の前か、授業中かを分けて考える
Onyper ら(2011)は、認知課題の前に5分ガムを噛む条件で複数の成績に利点を認めましたが、課題中に噛む条件では利点を認めませんでした。良い効果が続いたのは検査の最初の15〜20分に限られ、頭の働きの全領域に及んだわけでもありません。ここでの時間は、その実験で観察された範囲です。通塾中に噛み始めた時刻から、授業の終わりまで効果が続くという読み方とは区別します。
Onyper ら(2011)は、考える処理と噛む処理が、使える資源を分け合うために干渉した可能性を挙げています。資源とは、同時に処理するために使える頭の働きの余裕を指します。口を動かす作業と問題を解く作業が重なると、片方に使う働きがもう片方と競合する、という説明です。これは実験結果を説明する仮説であり、噛んでいる子の頭の中で何が起きているかを直接言い当てるものではありません。
試す手順を組むなら、塾に着く前だけ噛み、着いたら終える形にすると、授業中の作業と重ねずに済みます。Onyper ら(2011)の5分という条件を参考に短く区切る場合も、間に合わない日は無理に噛む時間を作らない扱いが適切です。電車を降りてからの移動や教室に入る支度を遅らせないことを、先に家庭の約束にします。時間を延ばすことより、いつ終えるかを決める方が実行しやすい手順になります。
噛むのを終えたら、紙に包み、捨ててよい場所で処分する流れまで決めておきます。すぐ捨てる場所がない場合に備えて、包んだものを一時的に入れる袋を用意する方法もあります。取り出すところから片づけるところまで本人が扱えることを、持たせる前に家庭で確かめます。
あごの負担と教室の決まりを先に確かめる
勉強のために噛むと決める前に、本人が噛みたいと思っているか、噛んで不快にならないかを確認します。あごが疲れる、痛むといった訴えがあれば、そこで噛むのをやめる目安を親子で決めておきます。成績のためと思って痛みを我慢する使い方は避け、痛みが続くときは歯科で相談することが考えられます。すでに口やあごのことで相談中なら、通塾前にガムを使ってよいかも、その相談先で確かめます。
甘いガムを選ぶ際には、味の好みだけでなく、糖を含むかという表示にも目を向けます。注意や記憶の結果を読むことと、歯の状態に合う製品を選ぶことは、別の確認事項です。歯について気になることがあれば、いつ、どのようなガムを噛んでいるかを歯科で伝えます。学習のためという理由で噛む機会を増やす前に、普段の口の手入れと合わせて考えると、判断の焦点がはっきりします。
塾や学校の決まりでは、授業中にガムを噛めないことが多いため、通う教室の案内を先に確かめます。授業前ならよいのか、教室内では扱えないのかなど、場所と時点を分けて確認すると行き違いを減らせます。車内での扱いも各社の最新の案内で確かめ、特定の路線なら問題ないと決めつけないようにします。本人が決まりを守って片づけられることが、学習上の手応えを比べる前の条件です。
ガムの感触や味が苦手な子に、眠気対策として持たせる必要はありません。噛んでいることが気になって説明を追いにくいなら、その不快さも本人の判断材料になります。合わないと感じたときにやめられる約束を先に作ると、保護者の期待に合わせて「効いた」と答えようとする負担も減らせます。
小テストの手応えを、誘導せずに聞く
家庭での確かめ方は、噛んだ日と噛まなかった日で、授業の最初の小テストの手応えを本人に聞くことから始められます。「ガムのおかげでできたか」と聞くと、答えの方向を先に示してしまいます。「問題を読み始めやすかったか」「答えを思い出すところで困ったか」と、実際の作業を尋ねる方が話しやすくなります。聞いた内容は、続けるかやめるかを相談する材料として使います。
手応えを比べる際には、その日の問題が得意な範囲だったか、前もって復習していたかも一緒に聞きます。眠かった日と元気だった日を比べれば、ガム以外の違いも重なります。こうした別の要因が結果を動かすことを交絡といいます。点数が良かったという出来事だけで原因を決めず、本人がどこで答えやすかったと感じたかまで聞くと、次に確かめる対象が絞れます。
小テストがない日には、わざわざ家庭で試験を追加する必要はありません。授業の初めに説明を聞けたか、口の中が気になったかといった、本人が話せる範囲で十分です。噛まない日も同じように尋ねると、ガムを使った日だけを特別に評価する聞き方を避けられます。答えが曖昧なら、無理に良し悪しの結論を出さず、普段どおり噛まない選択も残します。
次に教室の案内を確かめる際は、包んだガムをどこで処分するかを具体的に決めます。ごみ箱が使えるかを思い込みで判断せず、持ち帰る場合の袋をかばんの取り出しやすい所に入れておきます。持たせる準備は、ガムだけでなく、使い終えたあとの置き場所までそろえて完了です。
よくある質問
電車で目がさえたら、授業も覚えやすくなりますか
Smith(2009)では覚醒が高まった一方で、記憶課題に明確な効果は出ませんでした。「眠くない」と「習ったことを思い出せる」は分けて考えるのが適切です。家庭では、帰宅後の感想を聞くときも、眠気の話と小テストの手応えを分けて尋ねます。本人が気持ちよく授業に入れたという感想は、そのまま感想として受け止め、記憶力が上がったという評価に置き換えないようにします。
授業中も噛み続けた方がよいですか
Onyper ら(2011)では、課題前に噛む条件には利点がありましたが、課題中に噛む条件にはありませんでした。Tucha ら(2004)でも、注意の一部は改善した一方、別の働きは悪化しました。噛み続けるほど良いという結果ではなく、授業中の使用を増やす理由にはなりません。まず教室の決まりを確認し、本人が説明を聞くことや問題を解くことに取り組みやすい状態を優先します。
本人が嫌がる場合も試した方がよいですか
嫌がる場合は、ガムを通塾の準備に加えなくて構いません。味や感触が苦手なのか、あごが疲れるのかなど、嫌な理由を本人の言葉で聞くと判断しやすくなります。痛みがある日は噛むのをやめるという約束を作り、痛みが続くなら歯科で相談します。試すかどうかを決める場面でも、成績への期待を先に伝えて説得するより、口の状態と本人の希望を先に確かめます。
この記事の限界
比較の条件は、噛まない場合、噛むまね、風味の違い、課題の前後など研究によって異なり、測ったものも瞳孔の変化から単語の思い出しまで幅があります。健康な成人を扱うTucha ら(2004)や勤務中を扱うAllen ら(2015)の結果は、小中高生が授業に臨む条件とは異なります。
ここで取り上げた研究には、東京の電車でガムを噛んだ小中高生について、その後の塾の授業や学習内容の定着を直接調べたものは含まれていません。噛む前後の短い課題で得られた結果を授業全体へ広げず、家庭では教室の決まり、本人の手応え、口やあごの不快さを区別して扱う範囲の判断材料です。
参考文献
- Smith A. Effects of chewing gum on mood, learning, memory and performance of an intelligence test. Nutr Neurosci. 2009;12(2):81-88.
- Allen AP, et al. Chewing gum: cognitive performance, mood, well-being, and associated physiology. Biomed Res Int. 2015;2015:654806.
- Johnson AJ, et al. The effect of chewing gum on physiological and self-rated measures of alertness and daytime sleepiness. Physiol Behav. 2012;105(3):815-820.
- Tucha O, et al. Chewing gum differentially affects aspects of attention in healthy subjects. Appetite. 2004;42(3):327-329.
- Baker JR, et al. Chewing gum can produce context-dependent effects upon memory. Appetite. 2004;43(2):207-210.
- Miles C, et al. Chewing gum and context-dependent memory effects: a re-examination. Appetite. 2007;48(2):154-158.
- Onyper SV, et al. Cognitive advantages of chewing gum. Now you see them, now you don’t. Appetite. 2011;57(2):321-328.
改札を出てから扉に着くまでの数分が、続くかどうかを決める。
- 向く人: 授業や練習のあと、駅までの帰り道をできるだけ短くしたい人
- 向く人: 通勤や通学の途中の駅で、乗り換えを増やさずに通いたい人
- 向かない人: 駅から離れた場所へ、車の送り迎えで通うことを前提にしたい人
- 向かない人: 移動をせず、自宅だけで学びや運動を済ませたい人
このサイトは武蔵野個別指導塾とオンザショア立川店の運営者が制作しています。武蔵野個別指導塾は駅から徒歩30秒の完全1対1、オンザショア立川店は駅から徒歩1分で、床は溶岩プレートです。
電車で目がさえたら、授業も覚えやすくなりますか
Smith(2009)では覚醒が高まった一方で、記憶課題に明確な効果は出ませんでした。「眠くない」と「習ったことを思い出せる」は分けて考えるのが適切です。家庭では、帰宅後の感想を聞くときも、眠気の話と小テストの手応えを分けて尋ねます。本人が気持ちよく授業に入れたという感想は、そのまま感想として受け止め、記憶力が上がったという評価に置き換えないようにします。
授業中も噛み続けた方がよいですか
Onyper ら(2011)では、課題前に噛む条件には利点がありましたが、課題中に噛む条件にはありませんでした。Tucha ら(2004)でも、注意の一部は改善した一方、別の働きは悪化しました。噛み続けるほど良いという結果ではなく、授業中の使用を増やす理由にはなりません。まず教室の決まりを確認し、本人が説明を聞くことや問題を解くことに取り組みやすい状態を優先します。
本人が嫌がる場合も試した方がよいですか
嫌がる場合は、ガムを通塾の準備に加えなくて構いません。味や感触が苦手なのか、あごが疲れるのかなど、嫌な理由を本人の言葉で聞くと判断しやすくなります。痛みがある日は噛むのをやめるという約束を作り、痛みが続くなら歯科で相談します。試すかどうかを決める場面でも、成績への期待を先に伝えて説得するより、口の状態と本人の希望を先に確かめます。