- 学校のトイレへの不満と利用の先延ばしは、膀胱と腸の不調の症状と関連していました。
- 学校のトイレを避ける背景には、設備だけでなく人目やいじめに関わる不快さも挙げられています。
- 清潔さに満足しているかどうかが、症状を説明しなかった調査もあります。
- 膀胱と腸の不調がある子の試験では、便通の管理に排尿指導を足しても上乗せ効果はありませんでした。
駅のトイレを使いたがらない子|おしっこを我慢する習慣と子どもの膀胱の研究
高校受験を控えて東小金井駅から通う子が、塾の玄関に着いてもトイレを後回しにするなら、我慢の習慣をどう受け止めればよいのでしょうか。学校では行きづらく、駅では寄る時間が惜しく、到着後は席へ急ぐという流れを考えてみます。途中の場所ごとに理由が違えば、「行きたくなったら行けばよい」という声だけでは、本人の困り方に届かないこともあります。
学校のトイレを避ける習慣は膀胱と腸の不調と結びついており、我慢を本人の気持ちの強さだけで片づけないことが大切です。 Jørgensen ら(2021)の学校調査は、設備への不満、トイレの先延ばし、体の症状を一緒に尋ねています。一方で、清潔さへの満足と症状の関係がはっきりしなかった調査や、排尿の指導を追加しても効果が増えなかった試験もあります。トイレを使うかどうかという行動の背景と、すでに起きている体の不調の両方を見ると、家庭で整えることと医療で扱うことの違いがわかります。
要点
- 学校のトイレへの不満と利用の先延ばしは、膀胱と腸の不調の症状と関連していました。
- 学校のトイレを避ける背景には、設備だけでなく人目やいじめに関わる不快さも挙げられています。
- 清潔さに満足しているかどうかが、症状を説明しなかった調査もあります。
- 膀胱と腸の不調がある子の試験では、便通の管理に排尿指導を足しても上乗せ効果はありませんでした。
トイレを避ける行動と、体の症状を別々に読む
Jørgensen ら(2021)は、デンマークの252校、19,577人の子どもから回答を集めました。オンラインの質問票で尋ねたのは、トイレでの行動、学校の設備の質への評価、膀胱と腸の不調の症状です。設備への不満、トイレを避けること、症状の間には強い関連がありました。トイレを嫌うという言葉を、建物の使い心地の話としてだけ扱わず、体調と合わせて見る理由になる結果です。
膀胱は尿をためる器官で、研究では排尿だけでなく便通の問題も扱っています。「膀胱と腸の機能の不調」は、尿が漏れる、尿をこらえる動作をする、便秘があるといった状態をまとめて捉える考え方です。子どもの様子を読む際にも、トイレに行かなかったという行動と、痛い、漏れる、便が出づらいといった困り事では、伝えている内容が違います。行かなかった回数だけを数えても、体の状態の全体像にはなりません。
同じ「トイレの問題」という言葉でも、研究が答えている問いは異なります。下の表は、何を比べた結果なのかを整理したものです。学校生活での関連を調べる研究と、症状のある子への対応を試す研究とでは、結果を読む入口が変わります。
| よく言われること | 研究で得られた結果 | 対象・研究の型 |
|---|---|---|
| トイレへの不満は使い心地だけの問題 | 利用を避けることや膀胱・腸の症状とも関連 | デンマークの児童生徒の質問票調査、Jørgensen ら(2021) |
| 清潔なら症状の心配も小さい | 清潔さへの満足は症状を予測する要因にならなかった | 保護者が回答した調査、ALMadi ら(2025) |
| 排尿の指導を増やせば改善も増える | 便通の管理に加えた指導の上乗せ効果はなかった | デンマークの小児外来での比較試験、Axelgaard ら(2026) |
人目のつらさが、尿意より優先されることがある
Lundblad ら(2005)は、スウェーデンの6〜16歳の385人に、学校のトイレをどう感じているかを尋ねました。最も否定的な見方が強かったのは13〜16歳で、年長の子の25%は学校で排尿のためにトイレを使うことがなく、80%は排便のためには使わないと答えています。調査全体では、それぞれ16%と63%でした。尿と便で利用を避ける割合が違う点も、トイレの使いづらさを考える材料になります。
Lundblad ら(2005)が報告したのは、子どもが体の不快さを耐えてでも、学校のトイレを使う心理的・社会的な不快さを避けていたという姿です。大人には空いている個室が見えていても、子どもには誰に見られるか、利用したことをどう思われるかが気になる場面を想像できます。設備が使える状態にあることと、気兼ねなく入れることは、別の条件です。「もう大きいから平気」と年齢だけで処理すると、この違いを取り落とします。
Shoham ら(2021)は、追跡調査に参加した女子3962人のデータで、学校のトイレ環境と尿を我慢する行動などの関連を分析しました。我慢する行動との関連を示すオッズ比は、トイレの汚れで1.36、トイレでいじめられていると感じることでは2.38でした。オッズ比は、ある条件の有無で行動や症状の起こりやすさを比べる統計的な指標です。この結果では、汚れという物の状態に加え、人との関わりも調べる対象になっています。
家庭で理由を聞くなら、駅や塾のトイレを使いたくない点を、本人の言葉で話せる時間を取ります。においなのか、人目なのか、授業に遅れそうなのかを、大人が先に答えとして決めないことが肝心です。人に見られることが嫌なら、友だちの前で事情を説明させる対応は避けたいものです。話した内容を誰に伝えてよいかも含めて扱えば、本人の嫌な場面を増やさずに環境の話へ進めます。
清潔さへの満足だけでは症状を説明しきれない
ALMadi ら(2025)は、5〜10歳の子を持つ保護者を対象に、交流サイトを通じてウェブの質問票への回答を募りました。集まった290人のうち、膀胱と腸の不調を示唆する症状があったのは111人、38%でした。多くの回答者は学校のトイレ環境に満足していましたが、清潔さへの満足、年齢、学校の種類は、症状を予測する要因として統計的にはっきりした結果になりませんでした。つまり、この調査では、きれいだと評価された設備を使っている子にも症状がありました。
先の学校調査との違いは、トイレのどの面を取り上げたかにもあります。清潔さへの満足は、施設への不満全般や、人前で利用する居心地の悪さと同じ質問ではありません。また、子ども自身の感じ方を尋ねる方法と、保護者に子どもの状態を答えてもらう方法とでは、回答の立場が違います。研究の結果を読むときは、「トイレ環境」という大きな言葉の内側に、こうした違いがあることを押さえます。
この区別は、学校や教室と話すときにも役立ちます。掃除の状態に困っているなら設備や清掃の話になりますが、授業中に席を離れると目立つことが嫌なら、必要なのは利用の手順についての話です。個室に入るまでの通路が気になる場合には、便器のきれいさを説明しても話がかみ合いません。大人が現場で見た状態と、子どもが使う際に負担になる状態を、それぞれ具体的な言葉にする余地があります。
清潔な設備を保つことは、利用する側の希望として伝えてよい内容です。同時に、症状について伝える場面では、掃除への要望とは別に、いつ何に困ったかを説明するほうが相手も受け取りやすくなります。たとえば利用環境の相談と、衣服が濡れた際の対応の相談は、話す相手や必要な配慮が変わります。設備の評価だけで会話を終えず、起きている困り事に合った相談内容にします。
尿の我慢だけでなく、便通と感染の経過も関わる
Shaikh ら(2016)は、時間を追って子どもの経過を調べた研究のデータを合わせ、トイレで排泄する習慣を身につけた181人を分析しました。開始時に膀胱と腸の不調があったのは54%で、その不調がある子の94%には、日中の尿漏れ、尿をこらえる動作、便秘のいずれかが報告されていました。ここで扱う不調には、便に関する症状も入っています。尿をこらえる姿だけを切り離すより、排泄全体の様子を扱った研究として読むほうが正確です。
Shaikh ら(2016)では、尿が膀胱から上の尿路へ逆流する状態の有無も比較しました。感染を予防する薬を使っていない子では、膀胱と腸の不調と逆流の両方がある群で、尿路感染を繰り返した割合は51%でした。比較した割合は、逆流だけの群で20%、膀胱と腸の不調だけの群で35%、どちらもない群で32%です。尿路感染とは尿の通り道に起きる感染で、この結果では、両方の状態を持つ群で繰り返しが目立ちました。
研究の読みどころは、子どもの状態によって比べた結果が異なることです。Shaikh ら(2016)の著者らも、膀胱と腸の不調と逆流をともに持つ子の再発リスクの高さを結論に挙げています。学校帰りにトイレへ寄らない子を、この研究の病気の群へ直ちに当てはめるのは不適切です。本人を「我慢する子」と呼ぶだけでは拾えない、診療上の条件を扱った比較だからです。
尿が漏れる・排尿のときに痛む・熱が出るなどが続くときは、医療機関に相談します。その際は、トイレに寄れたかという生活の事情に加え、体のどこがどうつらいか、便通にも困っているかを伝える内容に含めます。すでに診療を受けている子には、一般的な通塾時の工夫よりも、その子の状態に応じた指示が優先されます。
排尿の指導を足した試験では、効果は増えなかった
Axelgaard ら(2026)は、デンマークの小児外来で、膀胱と腸の不調のある子を対象に比較試験を行いました。便通の管理だけを行う群と、それに標準的な排尿の指導を加える群を比べています。排尿の指導とは、排尿の仕方や習慣について扱う支援です。親が普段の通塾で声をかける場面より、対象も対応の内容も絞った試験になっています。
Axelgaard ら(2026)の試験では94人を群に分け、83人が追跡を終えました。対象の年齢の中央値は6.9歳、追跡期間は12週でした。群分けには無作為化、つまり担当者や家庭の希望で割り振りが偏らないよう偶然に任せる方法を使っています。参加者が受けている対応を知る形で、便通の管理と、指導を追加した管理を並行して比べました。
Axelgaard ら(2026)の著者らは、便通の管理によって日中の尿失禁、つまり日中に尿が漏れる症状が減り、同時に排尿指導を行っても追加の利益はなかったと結論づけています。「指導を増やす」という方向の工夫をすれば、その分だけ症状もよくなる、という結果ではありませんでした。比較の中心は、便通の管理をしているところへ、別の指導を加える意味があるかという点です。治療の組み合わせを調べた結果として読む必要があります。
この結果を受けて、家庭で強めたいのは声かけの回数そのものではありません。教室の都合で利用を待つことになるのか、本人が入りたくないのか、すでに体の症状があるのかでは、必要な対応の担当も変わります。保護者が毎回の排尿を管理して、行けなかった日を失敗として評価する形は、本人の困り方を話題にしにくくします。学校生活での行動を把握する作業と、症状への治療を家庭の中で混ぜないことが、実務上の大事な区切りです。
玄関から席へ向かう前の時間を確かめる
塾の玄関でかばんを持ち直し、そのまま席へ急ぐ日の流れを、家で落ち着いたときにたどります。学校を出てから塾を出るまで、トイレへ行った回数を本人に一度だけ思い出してもらいます。回数に点を付けるのではなく、寄る機会がどこで途切れたかを探すための振り返りです。学校を出る前は片づけ、到着後は教材の準備というように、移動の両端にも用事があることを含めて考えます。
次は、到着してすぐに使える時間が授業前にあるかを、教室の人に尋ねます。玄関を開けてよい時刻と授業開始の時刻が違う場合には、早く着けば入れるのかという点まで話を進めます。子どもが想像する「遅れそう」と、教室で実際に必要な準備が食い違っていれば、その手順を伝え合う機会になります。到着時の行動を確かめるときは、着席や教材の準備に必要な時間も含めます。
授業前に寄る余裕があるときでも、トイレへ行くために周囲へ細かい事情を説明する形にはしないほうが本人は選びやすくなります。教室へ入る前に寄ってよいのか、荷物を置く場所はあるのかなど、利用に必要な手順が伝わっているかを扱います。友だちと同時に到着したときに、全員で同じように動かなくてもよいことも、通う日の段取りに入ります。ここで整えるのは、尿意があるときに席へ直行する以外の動きを選べる時間です。
最後に、家を出る時刻から玄関への到着、教材を出す準備、授業開始までを本人と逆算します。トイレに寄る余裕が削られるなら、急いで廊下を歩くことで埋めるより、出発前の支度の置き方を見直します。塾の玄関を通った瞬間に着席を急がなくてよい余白を、通う日の予定に残します。
よくある質問
女子と男子では、トイレを避ける割合が違いますか
Jørgensen ら(2021)の調査で学校のトイレを避けると答えた割合は、女子28%、男子23%でした。これは利用を避けると答えた割合であり、病気や症状がある割合を表した数字ではありません。きょうだいで対応を考える際には、性別の集計をそのままそれぞれの困り方の説明にするより、別の子の話として扱うほうが自然です。同じ学校に通っていても、使う設備や休み時間の過ごし方まで同じと考える必要はありません。
試験の日の朝だけ我慢する場合も同じですか
試験の朝には、会場に着いてから説明を聞くまでの動きが、普段の登校と異なります。Lundblad ら(2005)が扱った学校のトイレに対する感じ方を踏まえると、慣れない場所に入る気兼ねと、試験の開始に間に合うかという心配を分けて扱う視点が役立ちます。会場の案内で利用場所と入室の手順を確かめ、開始直前の判断を減らす支度が考えられます。その朝だけの出来事は、普段の習慣とは分けて受け止めます。
水筒の水を減らして、トイレを避けているときはどうしますか
水筒の残りが少ないか多いかだけでは、喉が渇かなかったのか、トイレのために飲むのを控えたのかが違います。水を減らしてしのぐ方法を対策として勧めず、飲みたいのに飲めない事情を生活上の困り事として扱います。Jørgensen ら(2021)が調べた設備への感じ方や利用の先延ばしという視点は、排尿を避けるために飲み方まで変えている場面を考える際にも役立ちます。水筒を持たせる量の管理より、飲み物を口にしてよいと本人が思える通い方の話に戻します。
この記事の限界
比較したのは主に、学校のトイレへの評価や利用行動が異なる子どもたちで、質問票で同じ時点の様子を捉える横断研究では、我慢が症状を起こした順序まではわかりません。症状のある子がトイレを避ける逆向きの可能性もあり、保護者を交流サイトで募ったALMadi ら(2025)の調査では、回答する家庭の偏りも結果に関わります。
便通の管理に排尿指導を加えた試験はありますが、学校のトイレ環境を変えて症状が減るかを確かめた試験とは異なります。ここで取り上げた研究で駅や塾のトイレを調べたものは見つからず、学校での利用と症状の結びつきから、通塾の行き帰りの我慢そのものを追った経過までは捉えられていないのが現状です。
参考文献
- Jørgensen CS, et al. Dissatisfaction with school toilets is associated with bladder and bowel dysfunction. Eur J Pediatr. 2021;180(11):3317-3324.
- Lundblad B, et al. Perceptions of school toilets as a cause for irregular toilet habits among schoolchildren aged 6 to 16 years. J Sch Health. 2005;75(4):125-128.
- Shoham DA, et al. School Toileting Environment, Bullying, and Lower Urinary Tract Symptoms in a Population of Adolescent and Young Adult Girls: Preventing Lower Urinary Tract Symptoms Consortium Analysis of Avon Longitudinal Study of Parents and Children. Urology. 2021;151:86-93.
- ALMadi MK, et al. The effect of school toileting behaviors and environment on the development of bowel and bladder dysfunction symptoms in children aged 5-10 years. J Family Community Med. 2025;32(2):131-137.
- Shaikh N, et al. Recurrent Urinary Tract Infections in Children With Bladder and Bowel Dysfunction. Pediatrics. 2016;137(1).
- Axelgaard S, et al. Bowel Management and Standard Urotherapy in Pediatric Bladder and Bowel Dysfunction: A Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2026;9(4):e268836.
改札を出てから扉に着くまでの数分が、続くかどうかを決める。
- 向く人: 授業や練習のあと、駅までの帰り道をできるだけ短くしたい人
- 向く人: 通勤や通学の途中の駅で、乗り換えを増やさずに通いたい人
- 向かない人: 駅から離れた場所へ、車の送り迎えで通うことを前提にしたい人
- 向かない人: 移動をせず、自宅だけで学びや運動を済ませたい人
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女子と男子では、トイレを避ける割合が違いますか
Jørgensen ら(2021)の調査で学校のトイレを避けると答えた割合は、女子28%、男子23%でした。これは利用を避けると答えた割合であり、病気や症状がある割合を表した数字ではありません。きょうだいで対応を考える際には、性別の集計をそのままそれぞれの困り方の説明にするより、別の子の話として扱うほうが自然です。同じ学校に通っていても、使う設備や休み時間の過ごし方まで同じと考える必要はありません。
試験の日の朝だけ我慢する場合も同じですか
試験の朝には、会場に着いてから説明を聞くまでの動きが、普段の登校と異なります。Lundblad ら(2005)が扱った学校のトイレに対する感じ方を踏まえると、慣れない場所に入る気兼ねと、試験の開始に間に合うかという心配を分けて扱う視点が役立ちます。会場の案内で利用場所と入室の手順を確かめ、開始直前の判断を減らす支度が考えられます。その朝だけの出来事は、普段の習慣とは分けて受け止めます。
水筒の水を減らして、トイレを避けているときはどうしますか
水筒の残りが少ないか多いかだけでは、喉が渇かなかったのか、トイレのために飲むのを控えたのかが違います。水を減らしてしのぐ方法を対策として勧めず、飲みたいのに飲めない事情を生活上の困り事として扱います。Jørgensen ら(2021)が調べた設備への感じ方や利用の先延ばしという視点は、排尿を避けるために飲み方まで変えている場面を考える際にも役立ちます。水筒を持たせる量の管理より、飲み物を口にしてよいと本人が思える通い方の話に戻します。