- 東京の調査では、混雑への不満と生活満足との間に、ストレスや健康を介した関連が見られました。
- 長い鉄道通勤とストレスの関連、混雑した映像への反応にも研究結果があります。
- 駅の画像の見た目を変える実験では、感じる混雑とその場の気分に違いがありました。
- 公共交通を使う人の心理的な状態が車通勤の人より良いという調査もあり、電車通勤全体を悪いものとは扱えません。
混んだ電車で帰る夜は疲れが増すか|車内の混雑とストレスの研究
8296人の東京の鉄道通勤者を調べたKumagai ら(2021)は、車内の混雑への不満と生活満足との関係を分析しました。仕事帰りの車内で、かばんを抱えたまま周りの人の動きに合わせ、降りる駅を待つ夜があります。職場を出たときには残っていた元気が、家に着くころには尽きたように感じることもあるでしょう。混んだ電車で疲れるのは気のせいなのか、毎日乗っていれば慣れで消えるのか、という疑問は、その後に運動や学び直しの予定を持つ人にも切実です。

「疲れた」という言葉には、足の重さ、いらだち、何かを始める気力の乏しさなど、違う感覚が入ります。研究にも、その場の感情を尋ねるもの、唾液に含まれる物質を測るもの、日々の生活への満足を尋ねるものがあります。帰宅して着替えるのも面倒な夜を考えるには、どの感覚に対応した結果なのかを押さえることが大切です。混雑への不満はストレスや生活満足と関係しており、疲れを気のせいと片づける根拠はなく、慣れによって負担がすべて消えるという結果でもありません。
要点
- 東京の調査では、混雑への不満と生活満足との間に、ストレスや健康を介した関連が見られました。
- 長い鉄道通勤とストレスの関連、混雑した映像への反応にも研究結果があります。
- 駅の画像の見た目を変える実験では、感じる混雑とその場の気分に違いがありました。
- 公共交通を使う人の心理的な状態が車通勤の人より良いという調査もあり、電車通勤全体を悪いものとは扱えません。
東京の調査が示した、不満と生活満足のつながり
「人が多ければ、その分だけ疲れる」と聞くと、車内の人数と帰宅時の疲れを対応させたくなります。Kumagai ら(2021)が東京の鉄道通勤者を対象に分析したのは、混雑への不満と生活満足の関係でした。生活満足は、帰りの電車でその瞬間に感じた不快さを尋ねることとは、質問の射程が異なります。調査では、短い期間の鉄道通勤者の一部の集団に、混雑への不満が生活満足を直接下げる関係が見られました。
同じ分析では、ストレスや健康を通じて生活満足が低くなる間接的な関係も見られました。Kumagai ら(2021)の結果を読む際は、直接の関係が一部に限られたことと、間接的な関係があったことを両方残す必要があります。これは、普段の通勤を調べた観察研究、つまり研究者が乗る電車を割り当てずに実態を調べる研究です。仕事の忙しさや暮らしの条件も重なりうるため、この分析が捉えるのは、そうした日常の条件の中での関連です。
この関係は、仕事帰りのドアの前でいらだつという身近な感覚を、生活全体とのつながりから考える材料になります。たとえば、車内では周囲の荷物が気になったのに、家で靴を脱ぐころには落ち着いている日もあるでしょう。反対に、乗車中は淡々としていても、夕食を用意する段階で何もしたくなくなる日も考えられます。帰宅後の自分を振り返るときには、車内での不快さ、家に着いたときの気分、その夜の予定に手をつけられたかという場面を思い出すと、研究で扱う問いとの対応がつきます。
通勤時間と、体に表れるストレスの反応
長い時間乗った夜の疲れには、混み具合に加えて移動の長さも関わる可能性があります。Evans ら(2006)は、ニューヨークのマンハッタンへ鉄道で通う郊外の男女208人を調べました。通勤が長いほど、安静時を基準とした唾液中のコルチゾールの上昇が大きく、自分で感じるストレスも高いという結果でした。コルチゾールは、ここでは体のストレス反応を調べるために唾液で測ったホルモンです。
Evans ら(2006)はさらに、通勤の終わりに行う課題への粘り強さが、通勤が長いほど低いことを報告しています。結果は性別によって変わるものではありませんでした。本人の感想だけでなく、体の反応と課題への取り組みも同じ研究で扱った点が、帰宅後に気力が残らないという疑問に関係します。この調査で比べた軸は通勤時間であり、移動の長さに伴う反応を調べています。
乗車が長かった日に「今日は混雑のせいで消耗した」と感じたなら、職場を出てから玄関を開けるまでの出来事も思い出したいところです。電車を待った、乗り換えで足を止めた、座れていたが家に着く時刻は遅かった、という違いが含まれます。スマホの時計を見る場所を職場の出口と自宅の玄関にそろえれば、車内の印象とは別に、帰るまでにかかった時間をつかめます。この研究が示した身体的な反応を、個人の帰宅時の感覚だけから判定することは避け、時間とその夜の過ごし方を照らす材料として使います。
混雑した景色への反応は、立つか歩くかでも異なる
人の多い景色を見ること自体が、気分や注意の働きに関係するのでしょうか。Mavros ら(2022)は健康な若い成人42人を、歩く群か立つ群へ無作為に割り当てました。無作為とは、参加者が自分の好みで群を選ぶのを避けるために、偶然で割り当てる方法です。参加者は、それぞれ1分の歩行映像を6本見て、研究では本人が答えた感覚と脳波を調べました。
Mavros ら(2022)によると、混雑した場面では、自分で答えた覚醒の程度が高く、感情は負の方向になり、認知や注意の働きも多く使われていました。ここでの覚醒は、眠りから目が覚めたという意味ではなく、気持ちや体が活性化した度合いを指します。一方、歩いていた参加者の前頭部の脳波には、肯定的な感情反応を示唆する変化もありました。混雑した景色への反応は、測るものと体の動かし方によって、同じ向きにそろってはいません。
仕事帰りには、乗換通路を歩いているときと、車内のドア脇で止まっているときが続けて訪れます。映像を見る実験は、実際に人と接触したり、荷物を抱えて揺れに対応したりする乗車場面を再現したものではありません。ここで読んだ研究のうち東京の通勤者を調べたのはKumagai ら(2021)で、海外の通勤調査や映像への反応を中央線の夜の乗車に置き換える際には場面の違いが残ります。車内で立つ場所を試すなら、乗降を妨げない範囲でドア付近と車両の端の感覚を比べ、人の動きが視界に入る様子や、荷物を持つ腕の窮屈さを具体的に捉えます。
駅の見た目と、公共交通全体の評価
混雑の感じ方を変える要素として、駅の見た目を扱った実験もあります。Zhu ら(2026)は成人の地下鉄通勤者360人に画像を見せ、異なる画像の条件を参加者の群どうしで比較しました。自然を取り入れた視覚的な変更の条件では、感じる混雑が低く、環境の快適さとその場の感情的な幸福感が高い結果でした。著者らは、試した視覚的な方法についての証拠として解釈すべきで、駅の設計改善すべてに広げるものではないと結論づけています。
この実験で変わったのは、実際に電車へ乗るときの乗客数ではありません。駅の画像を見て生じる印象に違いがあったという結果です。混雑への対応を考えるときには、人が何人いるかという問いに加えて、何を見て、どのように感じたかという問いもあります。以下では、研究が何を比べたのかを並べます。
| 混雑と気分への見方 | 不満・感情・生活満足の結果 | 通勤調査と画像実験 |
|---|---|---|
| 混雑は生活の満足にも響く | Kumagai ら(2021)では、不満と生活満足に直接・間接の関係 | 東京の鉄道通勤者の観察研究 |
| 駅を快適にすれば混雑感が下がる | Zhu ら(2026)では、試した視覚的な変更で混雑感が低下 | 成人の地下鉄通勤者への画像実験 |
| 公共交通は気持ちを消耗させる | Martin ら(2014)では、車通勤に比べ心理的な状態が良好 | 英国の成人通勤者を追った調査 |
Olsson ら(2013)が調べたスウェーデンの大きな都市圏の通勤者では、通勤中の感情は主に肯定的か中立でした。通勤への満足は、全体的な幸福にも関係していました。朝夕の移動には、嫌な気分だけが並んでいるわけではないという結果です。たとえば帰りの車内で本を開ける夜や、仕事の連絡から離れて窓を眺める時間を好む人なら、その過ごし方も含めて帰路を評価することになります。
立川でキックボクシングに通う夜、座れた日の気分を残す
着替えを入れたかばんを持って帰るとき、移動の負担を小さくしたいと考えるのは自然です。電車で疲れるという経験から、公共交通を使う暮らし全体が心理的に不利なのかも気になります。Martin ら(2014)は、英国の成人通勤者17,985人について、1991/2〜2008/9の18回の調査を用いて心理的な状態と通勤手段の関係を分析しました。車通勤に比べ、徒歩や自転車による移動と公共交通の利用は、心理的な状態の良さに関連していました。
Martin ら(2014)の公共交通の係数は、36点の尺度で0.195、95%信頼区間は0.035〜0.355でした。徒歩や自転車による移動では0.185、95%信頼区間は0.048〜0.321でした。信頼区間は、推定値にどの程度の幅があるかを表すものです。尺度全体に対して差は小さく、公共交通を利用すれば大きく気分が変わると期待させる数字ではありません。
自分の帰り道を確かめる際には、座れた日と立って帰った日の帰宅後の気分を、自分の言葉で残す方法があります。玄関でかばんを下ろしたところで、「静かに過ごしたい」「夕食の用意にすぐ取りかかれそう」など、実際の感覚をスマホに短く入力します。座れたかに加え、運動をした日か、仕事が予定どおり終わったかも添えると、その夜の条件が残ります。混雑で消耗したという感想と、体を動かして満足したという感想が同じ日にあっても、そのまま両方を書けます。
帰る電車を変えるなら、待つ時間も含めて試す
同じ曜日の帰りに、普段より1本遅い電車を選び、家に着いたときの疲れを見比べる方法があります。運動が終わって着替えをかばんに入れた時点で、次に乗る電車を待つ余裕があるかを確かめます。予定を詰めていた夜と余裕のある夜では帰宅後の過ごし方も異なるので、試すなら仕事の終わり方や運動の予定が近い日を選びます。これは自分の帰路を確かめる工夫であり、帰る時刻をずらすと疲れが減ると示した試験は、ここで挙げた研究にはありません。
待つ時間を足す案は、帰宅後に家族の世話がある人や、夕食と就寝の予定が迫っている人には合わせにくい方法です。ホームで待っている間に寒さや立つつらさが増すなら、その負担も含めて帰り方を考えます。出発を遅らせたことで帰宅後の時間が窮屈になったときには、混み具合だけを成果にしないようにします。終電や運行の変更に関わる予定は、各社や自治体の最新の案内で確かめます。
試した日の比較では、電車に乗っている間が落ち着いていたかと、玄関を開けたときに疲れが残っていたかを続けて思い出します。座れたとしても、待ち時間を含む帰路が自分の予定に合わなければ、その点も結果です。ホームでは乗車位置の案内に従い、先に並んでいる人の後ろで待ち、見送った電車の乗降が終わってから次の列へ進みます。運動の日の帰り、立川駅のホームで1本見送って次の電車の列の先頭に立ちます。
よくある質問
慣れれば混んだ電車も平気になりますか
慣れの可能性が示されたのは、生活満足への直接の影響です。Kumagai ら(2021)は、鉄道通勤が1年より長いか短いかにかかわらず、ストレスや健康を介した生活満足への間接的な関係を報告しました。直接の影響への慣れの可能性も示されており、通勤に慣れた人でも、日々のストレスと生活満足のつながりを含めて読む結果です。
運動のあとの混雑は体に悪いのでしょうか
ここで扱った研究には運動直後の乗車を比べたものがなく、運動後という条件での害の有無は判定できません。Evans ら(2006)が調べたのは通勤時間とストレスの関係であり、運動を終えた人の回復やけがを評価した結果ではありません。着替えたあとに乗る電車については、運動中から続く疲れと、乗車中に感じた窮屈さを、自分の帰路で捉えることになります。
疲れるなら車通勤へ替えたほうがよいですか
心理的な状態を理由に、一律に車通勤を勧める結果ではありません。Martin ら(2014)では、車通勤を比較相手にしたとき、公共交通の利用と心理的な状態の良さに小さな関連がありました。自分が替えるかを考えるなら、乗車中の不快さに加えて、仕事帰りに自分で運転する負担や、家に着くまでの流れも比較に入れます。駅で電車を待つ時間と、駐車場から自宅まで歩く場面も、それぞれの帰路に含まれます。
この記事の限界
測定の中心には生活満足やその場の感情があり、帰宅後に夕食を用意できるか、夜の運動を続けられるかという行動まで共通の物差しで追った資料ではありません。実験で画像や映像を見た時間と、日常の通勤について答える質問では、捉える経験の長さにも違いがあります。利用する路線、車両の位置、その日の乗客の動きに沿って個人の疲れを予測するには、乗車時の条件と帰宅後の状態を対応させる記録が要ります。東京の調査で尋ねたのは混雑への不満であり、機械で捉えた乗客の密度と疲れの対応は、今回の通勤者への質問調査とは異なる測定対象です。
参考文献
- Kumagai J, et al. Do commuters adapt to in-vehicle crowding on trains? Transportation (Amst). 2021;48(5):2357-2399.
- Evans GW, Wener RE. Rail commuting duration and passenger stress. Health Psychol. 2006;25(3):408-412.
- Mavros P, et al. A mobile EEG study on the psychophysiological effects of walking and crowding in indoor and outdoor urban environments. Sci Rep. 2022;12(1):18476.
- Zhu W, Yu Y. Nature-inspired visual interventions in metro stations and commuters’ affective well-being: the mediating roles of perceived crowding and environmental comfort. Front Psychol. 2026;17:1901802.
- Martin A, et al. Does active commuting improve psychological wellbeing? Longitudinal evidence from eighteen waves of the British Household Panel Survey. Prev Med. 2014;69:296-303.
- Olsson LE, et al. Happiness and Satisfaction with Work Commute. Soc Indic Res. 2013;111(1):255-263.
改札を出てから扉に着くまでの数分が、続くかどうかを決める。
- 向く人: 授業や練習のあと、駅までの帰り道をできるだけ短くしたい人
- 向く人: 通勤や通学の途中の駅で、乗り換えを増やさずに通いたい人
- 向かない人: 駅から離れた場所へ、車の送り迎えで通うことを前提にしたい人
- 向かない人: 移動をせず、自宅だけで学びや運動を済ませたい人
このサイトは武蔵野個別指導塾とオンザショア立川店の運営者が制作しています。武蔵野個別指導塾は駅から徒歩30秒の完全1対1、オンザショア立川店は駅から徒歩1分で、床は溶岩プレートです。
慣れれば混んだ電車も平気になりますか
慣れの可能性が示されたのは、生活満足への直接の影響です。Kumagai ら(2021)は、鉄道通勤が1年より長いか短いかにかかわらず、ストレスや健康を介した生活満足への間接的な関係を報告しました。直接の影響への慣れの可能性も示されており、通勤に慣れた人でも、日々のストレスと生活満足のつながりを含めて読む結果です。
運動のあとの混雑は体に悪いのでしょうか
ここで扱った研究には運動直後の乗車を比べたものがなく、運動後という条件での害の有無は判定できません。Evans ら(2006)が調べたのは通勤時間とストレスの関係であり、運動を終えた人の回復やけがを評価した結果ではありません。着替えたあとに乗る電車については、運動中から続く疲れと、乗車中に感じた窮屈さを、自分の帰路で捉えることになります。
疲れるなら車通勤へ替えたほうがよいですか
心理的な状態を理由に、一律に車通勤を勧める結果ではありません。Martin ら(2014)では、車通勤を比較相手にしたとき、公共交通の利用と心理的な状態の良さに小さな関連がありました。自分が替えるかを考えるなら、乗車中の不快さに加えて、仕事帰りに自分で運転する負担や、家に着くまでの流れも比較に入れます。駅で電車を待つ時間と、駐車場から自宅まで歩く場面も、それぞれの帰路に含まれます。