- 通勤手段を替えた人の追跡では、車を使い続けた人と比べてBMIが低くなる方向の差が見られました。
- 公共交通と体を動かす移動を組み合わせる人のBMIが低いという、同じ時点での比較もあります。
- 徒歩通勤を維持した人で明確な関連が見られなかった追跡結果もあります。
- 公共交通に伴う歩行時間には幅があり、鉄道通勤と死亡率の関連を体重の減少量に読み替えることはできません。
車通勤を電車と徒歩に変えると体重は変わるか|通勤手段と体重の研究
朝の改札を通るころ、車の運転席に座っていた日には意識しなかった靴の重さが気になります。家から歩いてきた靴で改札を抜け、その先の階段へ進むと、運転席にいた時間にはなかった足の運びが通勤に加わります。車をやめて電車と徒歩にすると、体重は実際に変わるのでしょうか。仕事帰りの運動を増やす時間が取りにくい人にとって、毎日の移動を使えるかは身近な疑問です。

研究では、通勤手段を変えた人を追う方法と、異なる手段で通う人を同じ時点で比べる方法が使われています。体重に関する指標のほか、歩く時間や長期の健康を調べた報告もあり、何を測った結果かを読む必要があります。玄関から駅までの道、職場で履く靴、帰りに立ち寄る店まで含めると、通勤変更は日常の複数の場面に関わります。車から徒歩・自転車・公共交通へ替えた人でBMIが小さく下がる関連は見られますが、電車と徒歩に替えれば個人の体重が一定量減ると約束する結果ではありません。
要点
- 通勤手段を替えた人の追跡では、車を使い続けた人と比べてBMIが低くなる方向の差が見られました。
- 公共交通と体を動かす移動を組み合わせる人のBMIが低いという、同じ時点での比較もあります。
- 徒歩通勤を維持した人で明確な関連が見られなかった追跡結果もあります。
- 公共交通に伴う歩行時間には幅があり、鉄道通勤と死亡率の関連を体重の減少量に読み替えることはできません。
通勤を替えた人の変化は小さい
「車を使わなくなると痩せる」という話を確かめるには、変更したあとに体格がどう動いたかを見る必要があります。Martin ら(2015)は英国の調査を使い、分析対象の4,056人について、開始時と2年後のBMIを扱いました。BMIは身長に対する体重の大きさを示す指標で、単位はkg/m²です。体重計に表示されるkgとは異なるため、研究に書かれた差を、そのまま減った体重として読むことはできません。
Martin ら(2015)では、車などの私的な自動車交通から、徒歩・自転車または公共交通に替えた179人を、使い続けた3,090人と比べました。BMIの変化の差は-0.32kg/m²で、95%信頼区間は-0.60〜-0.05でした。信頼区間は推定値の不確かさを幅で示すもので、ここでは差の大きさに幅があることも読み取れます。方向は減少側ですが、大きな減量を示す数字ではありません。
これは暮らしの中で起きた変更を追う観察研究で、通勤方法を研究者が割り当てた試験ではありません。引っ越しで駅に近づいた、勤務先が変わった、食事の時間も変えたといった事情が重なると、通勤以外の条件も体重に関係し得ます。こうした条件の重なりは交絡と呼ばれ、通勤変更そのものが差を生んだという断定を妨げます。たとえば職場の変更とともに車をやめた人なら、新しい職場での昼食や仕事中の動きも、変更前の生活と並べる項目になります。
大きな人数の比較が示すのは体格の差
Flint ら(2016)は、英国の40〜69歳を対象に、通勤と体格を同じ時点で比べた横断研究を報告しました。BMIの分析には男性72,999人、女性83,667人が含まれています。公共交通と体を動かす移動を組み合わせる人で、BMIが低い関連があり、男性の差は-1.00kg/m²、女性は-0.67kg/m²でした。男女の値はそれぞれの分析結果として示されており、全体の減量幅にまとめる数字ではありません。
Flint ら(2016)の差の95%信頼区間は、男性が-1.14〜-0.87、女性が-0.86〜-0.47でした。人数が多い研究でも、この比較が示すのは調査時点の通勤とBMIの関係です。車通勤だった各人が公共交通に替え、そのあとにこの幅だけ減ったという経過を測ったものではありません。通勤を替えたあとの変化を扱ったMartin ら(2015)と並べると、数字の大きさに加えて、測った時間の位置にも違いがあります。
自宅で体重計の値を見る場面では、研究で比べたものを表に沿って確かめると、結果を取り違えにくくなります。同じ「通勤」の研究でも、ある時点の体格、変更後の変化、徒歩を続けた場合という問いが含まれています。以下では、数値の大小による順位を付けず、比較の内容を並べています。
| 通勤変更への期待 | 体格に関する分析結果 | 通勤者を比べた方法 |
|---|---|---|
| 車から替えると体格が変わる | 替えた群でBMIが減少する方向の差があった | Martin ら(2015)、英国の追跡 |
| 公共交通を使う人は痩せている | 体を動かす移動と組み合わせる人でBMIが低い関連があった | Flint ら(2016)、英国の横断研究 |
| 徒歩通勤を続ければ体重が下がる | 徒歩の維持に統計的に明確な関連はなかった | Mytton ら(2016)、ケンブリッジの追跡 |
歩く時間が増えることと体重の結果
Rissel ら(2012)は公共交通の利用に伴う身体活動を調べた研究を集めました。検索した1,733本のうち27本が条件を満たし、9本が活動量の実数を報告していました。公共交通の利用に伴う追加の歩行時間は8〜33分という幅でした。著者らがまとめたのは歩く時間であり、この幅に対応する体重減少量を示した結果ではありません。
家から駅までほとんど歩かない経路と、住宅街を抜けて駅へ向かう経路では、同じ電車通勤でも歩く部分が違います。降車後も、駅の出口に近い建物へ入るのか、職場までさらに歩くのかで移動の中身が変わります。玄関、改札、職場の入口という区切りを思い浮かべると、自分が実際に足を動かす区間をたどれます。公共交通の利用による効果と、その前後に歩く効果は、ここで扱う結果から切り離せません。
一方、Mytton ら(2016)のケンブリッジの研究は、2009〜2012年の809人を対象にした追跡です。徒歩通勤を維持した場合には、BMIとの統計的に有意な関連は見られませんでした。有意とは、偶然のばらつきだけでは説明しにくいと統計上判断することです。歩く通勤を続けることと、体重の指標が下がることは、この分析では明確につながりませんでした。
Mytton ら(2016)では、自転車通勤を維持した人は1年後のBMIが平均1.14kg/m²低く、95%信頼区間は0.30〜1.98、該当する分析は579人でした。ただし、開始時のBMIを考慮したあとには有意な関連が残りませんでした。著者らは、体を動かす通勤、とくに自転車が体重増加の予防や減量に寄与することを支持する結果と結論づけています。その結論を読む際にも、もともとの体格を考慮すると結果が変わった点を含めて受け取る必要があります。
鉄道通勤の健康の数字は何を測ったか
Patterson ら(2020)は、イングランドとウェールズの国勢調査の連結データを用い、25年にわたる通勤手段と健康の関連を調べました。対象には、経済活動に参加する就労年齢の394,746人が含まれています。鉄道通勤では、全死亡、つまり原因を問わない死亡の率が10%低い関連が見られました。これは体重の変化を測った数字ではなく、長い期間の健康を扱った結果です。
Patterson ら(2020)の鉄道通勤と全死亡の関連は、ハザード比0.90、95%信頼区間0.83〜0.97でした。ハザード比は追跡中に出来事が起きる率を比較する指標です。心血管疾患による死亡の率は21%低く、値は0.79、95%信頼区間0.67〜0.94でした。これらの割合を、体重が減った人の割合や、体脂肪が減った割合として使うことはできません。
同じPatterson ら(2020)では、自転車通勤は全死亡の率が20%低い関連で、ハザード比0.80、95%信頼区間0.73〜0.89でした。徒歩通勤は、がんの発症率が7%低い関連で、ハザード比0.93、95%信頼区間0.89〜0.97でした。交通手段によって、報告された健康の項目と関連の大きさが異なります。鉄道の結果を自転車にも、がんの発症の結果を体重にも一括して当てはめず、それぞれの項目名と一緒に読む数字です。
朝の電車を選ぶ場面で、長期の健康という視点を持つことはできます。その際、スマホで見た「死亡率が低い」という見出しを、その日の体重計で判定しようとすると、測る対象も時間の長さも合いません。通勤を替えた日には歩いた経路や帰宅後の足の状態を確かめ、体重を測るなら体重そのものの経過を見ます。死亡の数字は、目の前の減量目標を設定する計算には使いません。
キックボクシングのダイエットに通勤変更を加える場合
仕事帰りに体を動かす予定がある日は、通勤で使う靴と運動用の荷物を一緒に持つことになります。帰りに運動へ立ち寄る人なら、職場から目的地までの徒歩、荷物を持つ区間、帰宅時の疲れが日程の中に加わります。今回の研究には、この運動と通勤変更を組み合わせた効果の比較はありません。運動の日の予定を組むときは、かばんを持って駅まで歩く場面まで含めて考えます。
通勤を替える前に、駅までの道に階段があるかを実際に見ます。段差の位置、手すり、エレベーターへ回る入口も確かめると、かばんを持った状態で通れる経路を検討できます。足に痛みがある日や、歩行に身体上の制約がある人にとって、階段を上ることまで目標に加える必要はありません。濡れた靴で急いで下りるような計画は避け、転倒の危険がある区間を外した経路を選びます。
介護のために家族を乗せる人、送迎のあとに出勤する人、仕事の道具を車で運ぶ人には、自動車が必要な日があります。出勤の経路だけを電車に替えても、帰宅後に家族を迎えに行く段取りが残ることがあります。こうした日は、家族の予定と車の置き場所を先に照らし合わせます。車を使う生活を減量の失敗とみなす必要はなく、移動に求められる役割を満たすことが計画の前提です。
帰り道では、歩いたあとに増える間食がないかも確かめます。駅の売店で買う菓子、帰宅前に飲む甘い飲み物、夕食までにつまむ物など、車通勤の日にはなかった購入があるかを見ます。これは食べた物の影響を今回の研究が測ったという説明ではなく、自分の変更内容を把握するための確認です。買い物袋の中身と帰宅後の食卓を見れば、交通手段と同時に動いた生活の部分を拾えます。
朝の通勤を試す日は歩いた区間を読む
出勤前の玄関でスマホの歩数計を開き、端末をかばんやポケットに入れて持ち歩ける状態にします。試す日は週に1日だけ電車の日を作り、いつもの出勤用の靴で駅まで歩くことから始めます。これは体重を減らすための回数を研究が決めたものではなく、通れる経路と歩いた分を自分で確かめるための試し方です。通勤手段の変更を、毎朝続ける義務にする前に実際の動きを経験できます。
歩数の画面には、その日のほかの移動も含まれます。家を出た時点と駅に着いた時点を確かめると、駅までの区間を捉えやすくなります。職場の中を歩いた分や昼休みの外出が混ざった合計だけを見ると、どの道で歩数が増えたのかが曖昧になります。スマホを机に置いたまま動いた時間があれば、画面に出た歩数と実際の移動にずれがあることも覚えておきます。
朝の試行で見るのは、乗りたい電車に間に合わせるため走る場所がないか、靴が当たる場所がないか、職場に着いて荷物を置けるかという具体的な点です。足が痛くなるなら、そのまま歩数を積み増す計画は中断できます。車の鍵を置ける日には、送迎や仕事の予定と衝突しないことを家を出る前に確かめます。次の水曜の朝だけ車の鍵を置いて家を出て、最寄り駅まで歩いた歩数をスマホで読みます。
よくある質問
週に何日変えれば効くのでしょうか
効果が出る週あたりの日数は、この研究群から指定できません。Martin ら(2015)では徒歩・自転車への変更で、とくに早い時期に替えた人や通勤が長い人に関連が見られました。しかし、曜日ごとの実施回数を割り当てて、どの回数から効くかを比べた結果ではありません。通勤が長い人の結果を、駅まで遠回りすれば同じ変化が出るという指示に置き換えることもできません。
歩くだけで体重を減らすには足りますか
徒歩だけで減量に足りるという答えは出ていません。Mytton ら(2016)は、徒歩通勤を維持した人にBMIとの有意な関連を認めませんでした。また、自転車で見られた関連も開始時のBMIを考慮すると残らず、もとの体格によって結果の読み方が変わっています。通勤に徒歩を取り入れる計画と、期待する減量幅との間には、まだ数値で結びつけられない部分があります。
車通勤に戻すと体重も戻りますか
車へ替えた群でBMIが増える関連はありましたが、以前減った分が同じように戻るという意味ではありません。Martin ら(2015)では、徒歩・自転車または公共交通から車などへ替えると、BMIの差は0.34kg/m²、95%信頼区間は0.05〜0.64でした。これは通勤を替えた群の結果で、同じ人が往復する変更をして体重も往復したという報告ではありません。車が必要になった時点の暮らしの変更として読む数字です。
この記事の限界
対象は英国の通勤者を中心としており、年齢の区切りがある体格の調査と、就労年齢を扱う長期の健康の調査では、読者と重なる範囲が異なります。Martin ら(2015)の追跡でBMIを算出した身長と体重は自己申告で、診察室で同じ手順にそろえて測った値を追った結果とは測定の条件が異なります。歩行時間を集めた研究も、駅の階段や荷物を持った移動の負担を個人ごとに示すものではなく、日々の経路の細部は自分の移動で補う部分です。英国の自己申告による体重の追跡から、東京近郊で車から電車に替えた際の変化へ話を進めるには、その地域で通勤変更と体重を追う調査が次の段階となります。
参考文献
- Martin A, et al. Impact of changes in mode of travel to work on changes in body mass index: evidence from the British Household Panel Survey. J Epidemiol Community Health. 2015;69(8):753-761.
- Flint E, Cummins S. Active commuting and obesity in mid-life: cross-sectional, observational evidence from UK Biobank. Lancet Diabetes Endocrinol. 2016;4(5):420-435.
- Mytton OT, et al. Longitudinal associations of active commuting with body mass index. Prev Med. 2016;90:1-7.
- Rissel C, et al. Physical activity associated with public transport use–a review and modelling of potential benefits. Int J Environ Res Public Health. 2012;9(7):2454-2478.
- Patterson R, et al. Associations between commute mode and cardiovascular disease, cancer, and all-cause mortality, and cancer incidence, using linked Census data over 25 years in England and Wales: a cohort study. Lancet Planet Health. 2020;4(5):e186-e194.
改札を出てから扉に着くまでの数分が、続くかどうかを決める。
- 向く人: 授業や練習のあと、駅までの帰り道をできるだけ短くしたい人
- 向く人: 通勤や通学の途中の駅で、乗り換えを増やさずに通いたい人
- 向かない人: 駅から離れた場所へ、車の送り迎えで通うことを前提にしたい人
- 向かない人: 移動をせず、自宅だけで学びや運動を済ませたい人
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週に何日変えれば効くのでしょうか
効果が出る週あたりの日数は、この研究群から指定できません。Martin ら(2015)では徒歩・自転車への変更で、とくに早い時期に替えた人や通勤が長い人に関連が見られました。しかし、曜日ごとの実施回数を割り当てて、どの回数から効くかを比べた結果ではありません。通勤が長い人の結果を、駅まで遠回りすれば同じ変化が出るという指示に置き換えることもできません。
歩くだけで体重を減らすには足りますか
徒歩だけで減量に足りるという答えは出ていません。Mytton ら(2016)は、徒歩通勤を維持した人にBMIとの有意な関連を認めませんでした。また、自転車で見られた関連も開始時のBMIを考慮すると残らず、もとの体格によって結果の読み方が変わっています。通勤に徒歩を取り入れる計画と、期待する減量幅との間には、まだ数値で結びつけられない部分があります。
車通勤に戻すと体重も戻りますか
車へ替えた群でBMIが増える関連はありましたが、以前減った分が同じように戻るという意味ではありません。Martin ら(2015)では、徒歩・自転車または公共交通から車などへ替えると、BMIの差は0.34kg/m²、95%信頼区間は0.05〜0.64でした。これは通勤を替えた群の結果で、同じ人が往復する変更をして体重も往復したという報告ではありません。車が必要になった時点の暮らしの変更として読む数字です。