- 熱波の間、冷房のない建物の学生は、冷房のある建物の学生に比べて課題への反応が遅くなりました。
- 暑さの影響は、課題の種類、暑さにさらされる時間、暑さの強さによって変わります。
- 寒さも課題の成績を下げる方向の結果があり、冷房を強めるほどよいという考え方にはつながりません。
- 道の日陰、到着後の汗の引き方、授業の始めの集中の手応えを、親子で確かめる材料にします。
暑い日に徒歩で通塾した子の頭は働くか|気温と勉強の効率の研究
暑い日の通塾で横断歩道の信号を待つ子は、歩き終えたあと、すぐに勉強へ気持ちを向けられるのでしょうか。武蔵小金井から通塾する家庭なら、信号待ちの間にも汗をぬぐう子を見て、到着後まで暑さが残らないか気になるかもしれません。授業に遅れないように着くことと、落ち着いて課題に取り組めることは、分けて考える必要があります。暑さは頭を使う課題の成績を下げる可能性があり、通塾では到着後に体を冷ませる余裕も考えたいところです。
根拠になるのは、熱波の前後を含めて学生を追った観察研究や、異なる温度で行った課題をまとめた研究です。Cedeño Laurent ら(2018)は、冷房のない建物で暮らす若い大人に、熱波の間の反応の遅れを認めました。そこで測ったのは課題への反応や処理の速さであり、子どもの学校の成績とは異なる指標です。暑い日に解く手が止まったときは、本人の努力を評価する前に、歩いてきた条件と着いてからの様子を確かめるところから始めます。
要点
- 熱波の間、冷房のない建物の学生は、冷房のある建物の学生に比べて課題への反応が遅くなりました。
- 暑さの影響は、課題の種類、暑さにさらされる時間、暑さの強さによって変わります。
- 寒さも課題の成績を下げる方向の結果があり、冷房を強めるほどよいという考え方にはつながりません。
- 道の日陰、到着後の汗の引き方、授業の始めの集中の手応えを、親子で確かめる材料にします。
冷房のない建物の学生で起きた反応の遅れ
暑い部屋では頭が働かない、という言い方を研究に置き換えるには、何を測ったかを見る必要があります。Cedeño Laurent ら(2018)は、米国マサチューセッツ州のボストン都市圏にある大学の学生44人を、熱波の前・最中・後に追いました。平均年齢は20.2歳で、冷房のある建物に住む24人と、冷房のない建物に住む20人が対象です。生活している環境を追う観察研究であり、くじ引きで冷房の有無を割り当てる試験とは方法が違います。
Cedeño Laurent ら(2018)では、平均室温が冷房のない組で26.3℃、冷房のある組で21.4℃でした。熱波前を基準にした両組の変化の比較で、熱波の間には、冷房のない組の反応時間がストループ課題で13.4%、加算課題で13.3%長くなりました。ストループ課題は、文字などの紛らわしい情報に惑わされずに答える課題で、加算課題は足し算に取り組む課題です。反応時間が長いという結果は、答えるまでに時間がかかったことを表します。
この研究を通塾の判断に生かすなら、屋外から入る教室の環境にも目を向けたいところです。歩いている間の暑さだけに注目すると、着いてからも暑いまま過ごす時間を見落とします。一方で、ここで示された差は、建物で暮らす学生を熱波の前後に追った結果で、徒歩直後だけを切り取ったものではありません。家庭で確かめる順番としては、着いた時点の暑さと、授業が始まる時点の落ち着き具合を分けて聞くと、教室へ相談する内容が具体的になります。
反応の速さと正しく答える速さを分けて読む
勉強の効率という言葉には、問題を読み始める速さ、答えの正確さ、終えられる量などが含まれます。研究で反応が遅くなったとしても、その数字をそのままテストの点数の低下として読むのは誤りです。速さと正確さを別々に見ると、どの部分で違いが現れたかがはっきりします。家庭でも、子どもが言う「集中できなかった」の中身を、読み始めにくかったのか、計算が進まなかったのか、と言葉にしてもらうと役立ちます。
Cedeño Laurent ら(2018)が測った、一定時間内に正しく処理する速さの変化は、ストループ課題で-9.9%、加算課題で-6.3%でした。ただし、加算課題のこの指標はp値が0.08で、統計的に明確な差とは扱われていません。p値は、差がないと仮定した場合に、観測した結果以上に極端な結果が得られる確率を表す数です。加算課題では反応時間の遅れが示されても、正しく処理する速さの差まで同じ確かさで示されたわけではなく、測る項目ごとに結果が違っています。
この違いは、暑い日の子どもを観察するときにも大切です。解き終えるまでに時間がかかった日でも、答えを丁寧に確かめていたなら、遅さだけで不調と決めつけずに済みます。逆に、すぐに書き始めていても、本人が説明を追いにくかったと感じることはありえます。帰宅後は問題数だけを聞くより、授業の始めに説明を聞けたか、途中から取り組みやすくなったかを聞く方が、到着後の時間の使い方を考えやすくなります。
暑さも寒さも、課題と時間によって影響が変わる
暑さが負担になるなら冷やすほどよい、と考えたくなりますが、温度と課題の関係は単純ではありません。Pilcher ら(2002)は、22件の原研究から算出した515の効果量をまとめ、暑さも寒さも幅広い頭を使う課題の成績に悪影響を与える方向の結果を報告しました。効果量は、研究ごとの違いの大きさを共通の物差しで表した数で、メタ分析は複数の研究をまとめて計算し直す方法です。比較の相手は暑くも寒くもない条件で、日常の教室をどこまでも冷たくすることを支持する結果ではありません。
Hancock ら(2007)のメタ分析も、温度による負担と課題の成績の悪化を結びつけています。同時に、課題の種類、温度にさらされる長さ、負担の強さが、結果を左右する重要な条件だと結論づけています。著者らが示した説明は、暑さなどへの対処に注意を使うと、課題に必要な情報の処理へ向ける余力が減るというものです。これは研究結果を説明する考え方であり、子どもがどれだけ汗をかいたかから集中力を計算する方法ではありません。
よく聞く言い方を、研究の比較に沿って並べると次のようになります。暑さの影響があるかという問いと、どんな条件で影響が大きいかという問いを分けています。通塾に取り入れる際は、表の右側にある研究の対象と方法も一緒に読むと、数字だけが独り歩きするのを防げます。
| 暑さと勉強についての考え | 課題の成績に現れた違い | 温度研究の条件 |
|---|---|---|
| 暑いと答えるのが遅くなる | 熱波の間に冷房のない組で反応が遅れた | Cedeño Laurent ら(2018)、大学の学生を追った観察研究 |
| 冷やすほど勉強が進む | 暑さと寒さの双方で課題の成績が下がる方向だった | Pilcher ら(2002)、温度条件を比べた研究のメタ分析 |
| 暑さの影響はどの勉強でも同じ | 課題の種類や温度にさらされる時間が結果を左右した | Hancock ら(2007)、温度による負担のメタ分析 |
気温だけで、その日の集中を説明しない
教室で手が止まった理由を考えるとき、暑かったという情報は大切ですが、それだけで話を終えると別の条件が見えなくなります。たとえば、習い始めた内容で問題が難しかった日と、慣れた計算を解いた日では、本人の手応えを同じ基準で比べにくくなります。歩く速さや授業前の待ち方も、親子で確かめる候補になります。これは原因を決めるための項目ではなく、どこを調整するか話し合うための材料です。
観察研究を読む際には、交絡という、見ている要因とは別の条件が結果を動かす問題があります。Cedeño Laurent ら(2018)の研究は、熱波前を基準にして冷房のある組とない組の変化を比べることで、単純な成績の横並びより踏み込んだ検討をしています。それでも、住む建物ごとの生活条件を含む比較と、冷房だけを割り当てる試験は区別して読む必要があります。研究の数字を子どものその日の出来に当てはめるより、環境を見直す理由として受け止める方が実用的です。
また、室温の測定値と冷房の設定温度は別のものです。Cedeño Laurent ら(2018)で比べたのは建物の室内の温度であり、家庭や教室が設定する温度の目標を決めた試験ではありません。冷房の表示だけで判断せず、実際に座る場所で暑いのか、風が当たり続けて寒いのかを本人に聞くと、相談すべき点が絞れます。寒がっている子にさらに強い冷房を求める方法は向かず、席や風の当たり方も含めて調整を相談する方がよいでしょう。
到着後に体を冷ます余裕を、通塾の予定に入れる
暑い日の予定を立てる際は、教室に入る時刻だけでなく、着いてから過ごす場所まで考えます。早く着いても、入れる場所がなく屋外で待つなら、暑い環境にいる時間が増えてしまいます。授業前に中で待てるか、待つ場所はどこかを先に確かめると、出発時刻を決めやすくなります。研究をもとにした実用上の工夫として、着席を急がせるより、移動と学習の間に落ち着く余地を用意する考え方です。
体を冷ます時間を見直すときは、塾に着いてから授業までに汗が引くかを本人に聞きます。「教室に入っても暑さが気になった」「始まるころには落ち着いた」など、言葉のまま聞けば十分です。汗が引いたことを学習能力が戻った証拠にせず、次の通塾で到着後の過ごし方を相談する手掛かりにします。本人が答えにくそうなら、汗の量を細かく尋ねるより、席についてから困ったことがあったかを聞く方法もあります。
日差しを避ける準備として帽子を用意し、歩く時間帯を動かせるかも家族の予定に照らして考えます。夕方へずらす案を選ぶなら、授業の時刻だけでなく、帰宅や就寝まで含めて無理のない予定にします。帽子の有無を成績向上の条件にせず、本人が使いやすい準備として話し合うのが自然です。暑さを我慢することを集中の練習として課す必要はなく、つらさを伝えたときに予定を変えられることも先に共有しておきます。
体調が悪い日に、集中の手応えを比べるために歩かせる方法は向きません。熱中症が疑われる症状があれば、授業の出来を確かめるより医療機関への相談を優先します。子どもが自分だけで通っている場合も、具合が悪いときは授業が始まるまで黙って待たず、教室の大人や保護者へ伝える約束にします。
道の日陰と授業の始まり方を親子で確かめる
通塾の道は、暑くなってから急いで選ぶより、先に地図で日陰の多そうな道を候補にします。地図では歩道や建物の位置を見て、実際の日陰は歩く時間帯に現地で確かめると、選ぶ理由が具体的になります。近そうに見える道だけで決めず、安全に歩けることと暑さを避けやすいことを合わせて考えます。横断歩道を渡る場所も含め、日陰へ移るために危ない横断をする必要のない道を選びます。
次に、暑い日と涼しい日で、授業の最初の10分の集中の手応えを比べて話します。たとえば「先生の説明を最初から追えた」「問題を読み始めるまで時間がかかった」という本人の表現を使い、暑かったかどうかだけで答えを誘導しないようにします。授業内容が違う日はその違いも添え、家庭での比較は予定を直すための会話として扱います。わざと暑い道を歩く日を作ったり、冷房を控えたりする必要はなく、普段の通塾で自然に生じた違いを振り返ります。
道、到着後、授業の始めを続けて見ると、調整する場所が見えてきます。道中がつらければ経路や歩く時間帯を、教室に着いてからも暑ければ待つ場所や席を、授業だけ難しかったなら学習内容を相談する、と話を分けられます。すべてを一度に変えると本人も何が楽になったか話しにくいため、困った場面に対応する変更から選びます。変えたあとは成績の上下だけを追わず、その困りごとがどうなったかを尋ねます。
最後に家庭で決めておきたいのは、いつもの道を暑さのために変えるときの連絡方法です。別の道を使うことだけでなく、途中でつらくなったときに誰へ連絡するかも子どもと共有します。保護者がすぐ応答できない場合に連絡する相手まで決めておくと、本人がその場で連絡先を探す負担を減らせます。
よくある質問
暑い日に解けなかった問題は、涼しければ解けますか
暑さ以外に、問題の難しさや理解の進み方も確かめる必要があります。Hancock ら(2007)は、温度による負担の影響が課題の種類などで変わると述べており、ある問題の正誤を気温だけで説明するものではありません。あとで落ち着いた環境で解き直し、読み始めにくかったのか、考え方がまだつかめていなかったのかを本人の言葉で確認すると、環境と勉強の内容を分けて相談できます。
教室の冷房は強いほどよいのでしょうか
Pilcher ら(2002)のメタ分析では、暑さだけでなく寒さも課題の成績を下げる方向の結果でした。冷房の強さだけを目安にせず、席についた子どもが暑いか寒いか、風が当たり続けていないかを聞くことが先です。教室全体の設定を変える話に進む前に、本人が座る位置や待つ場所を伝えて相談すれば、具体的な不快さに対応する方法を検討しやすくなります。
授業前に汗が引けば、そのまま勉強を始めてよいですか
汗の引き方は到着後の過ごし方を見直す手掛かりとして使い、始めてよいかの判定はそれだけに任せないようにします。暑さがまだ気になるか、体調に変わりがないかも本人に聞き、つらさがあれば教室の大人へ伝える流れにします。授業前に待てる場所をあらかじめ確かめておくと、子どもが入口で立ち止まったまま判断に迷う場面を減らし、相談へ移りやすくなります。
この記事の限界
比較の中心は、冷房の有無が異なる建物で暮らす若い大人を熱波の前後に追った観察と、温度条件の異なる課題をまとめた分析であり、東京で小中高生が駅から歩いて塾へ着いた直後の学習を直接比べた研究は見つからなかったため、子どもの成績低下の割合は推定できません。反応時間や正しく処理する速さという測定と、授業を理解して後日思い出せることとの間にも隔たりがあります。
また、道の日陰を選ぶことや到着後の汗を尋ねることは、研究で効果の大きさが測られた学習法ではなく、暑さの負担を見直すための生活上の提案です。これらの研究が支えるのは温度環境へ注意を向ける理由であり、通塾後に必要な待ち時間や、各家庭に共通する冷房の設定を決める根拠は限られます。
参考文献
- Cedeño Laurent JG, et al. Reduced cognitive function during a heat wave among residents of non-air-conditioned buildings: An observational study of young adults in the summer of 2016. PLoS Med. 2018;15(7):e1002605.
- Pilcher JJ, et al. Effects of hot and cold temperature exposure on performance: a meta-analytic review. Ergonomics. 2002;45(10):682-698.
- Hancock PA, et al. A meta-analysis of performance response under thermal stressors. Hum Factors. 2007;49(5):851-877.
改札を出てから扉に着くまでの数分が、続くかどうかを決める。
- 向く人: 授業や練習のあと、駅までの帰り道をできるだけ短くしたい人
- 向く人: 通勤や通学の途中の駅で、乗り換えを増やさずに通いたい人
- 向かない人: 駅から離れた場所へ、車の送り迎えで通うことを前提にしたい人
- 向かない人: 移動をせず、自宅だけで学びや運動を済ませたい人
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暑い日に解けなかった問題は、涼しければ解けますか
暑さ以外に、問題の難しさや理解の進み方も確かめる必要があります。Hancock ら(2007)は、温度による負担の影響が課題の種類などで変わると述べており、ある問題の正誤を気温だけで説明するものではありません。あとで落ち着いた環境で解き直し、読み始めにくかったのか、考え方がまだつかめていなかったのかを本人の言葉で確認すると、環境と勉強の内容を分けて相談できます。
教室の冷房は強いほどよいのでしょうか
Pilcher ら(2002)のメタ分析では、暑さだけでなく寒さも課題の成績を下げる方向の結果でした。冷房の強さだけを目安にせず、席についた子どもが暑いか寒いか、風が当たり続けていないかを聞くことが先です。教室全体の設定を変える話に進む前に、本人が座る位置や待つ場所を伝えて相談すれば、具体的な不快さに対応する方法を検討しやすくなります。
授業前に汗が引けば、そのまま勉強を始めてよいですか
汗の引き方は到着後の過ごし方を見直す手掛かりとして使い、始めてよいかの判定はそれだけに任せないようにします。暑さがまだ気になるか、体調に変わりがないかも本人に聞き、つらさがあれば教室の大人へ伝える流れにします。授業前に待てる場所をあらかじめ確かめておくと、子どもが入口で立ち止まったまま判断に迷う場面を減らし、相談へ移りやすくなります。