- アルコールの濃さや飲む条件によって、水分の回復への影響は異なります。
- 水分の指標が悪化しなかった結果と、筋力やバランスへの影響は分けて読みます。
- 強い運動の後には、飲酒によって筋力低下や筋たんぱく質の合成低下が見られた試験があります。
- 最初の飲み物を水や麦茶に決め、飲酒する日は自転車で帰らない予定を先につくります。
汗をかいた帰りに駅前でビールを飲むと体は戻るか|ホットヨガ後の水分補給と飲酒の研究
4%のアルコールを含む飲み物では、運動後の水分の回復が遅れる傾向がありました。Shirreffs ら(1997)が暑い環境で運動した後の飲料を比べた試験の結果です。同じ研究では、アルコールを含まない飲料と2%までの飲料で、水分の回復に差は見られませんでした。ひとくちに「お酒も水分」と言っても、何をどの条件で飲んだかによって結果が違います。
ホットヨガを終え、立川駅南口で帰りの飲み物を考える場面を思い浮かべてみます。汗をかいた後のビールは、水分を戻し、体の回復にも役立つのでしょうか。運動後のビールを水分補給の中心にせず、まず水や麦茶を選び、飲酒と回復を別々に考えるのがよいでしょう。冷たい飲み物で気分が落ち着くことと、水分や筋肉の状態が戻ることは、同じ意味ではありません。
研究で測っているのは、体に残る水分だけでなく、反応の速さや筋力、筋肉をつくる働きです。ビールで水分の指標に悪影響が出なかった試験もあり、結果を読むには比較相手を見る必要があります。帰宅までの移動も含めて考えると、飲み終えた直後の心地よさとは別の判断材料が見えてきます。
要点
- アルコールの濃さや飲む条件によって、水分の回復への影響は異なります。
- 水分の指標が悪化しなかった結果と、筋力やバランスへの影響は分けて読みます。
- 強い運動の後には、飲酒によって筋力低下や筋たんぱく質の合成低下が見られた試験があります。
- 最初の飲み物を水や麦茶に決め、飲酒する日は自転車で帰らない予定を先につくります。
「飲んだ量」と「体に残る水分」は違います
汗をかいた後に飲み物を口にすると、飲んだ分だけ体が元に戻ったように感じるかもしれません。ところが、研究でいう水分の回復は、飲み込んだ量だけを数えるものではありません。尿として出る量や、血液の量がどう戻るかも見ています。口の渇きが落ち着いたかという感覚と、体内の水分の動きは、別々に確かめる項目です。
Shirreffs ら(1997)は、運動後にアルコール濃度が0%、1%、2%、4%の飲料を、それぞれ別の試験で飲む条件を比較しました。飲み始めは運動終了の30分後で、60分かけて飲んでいます。飲んだ量は体重減少分の150%に相当し、自由に好きなだけ飲む場面とは異なる、量を決めた試験でした。水分の戻り方を比べるために、飲む時点と量をそろえた点が読みどころです。
Shirreffs ら(1997)では、4%の飲料で血液や血漿の量の増加が遅くなりました。血漿とは、血液のうち血球を除いた液体の部分です。一方、水分補給後6時間の尿の総量には、試験間で統計的に明確な差がありませんでした。尿が増える傾向と、血液の量の回復が遅いという結果を、すべて同じ「水が抜ける」という説明にまとめないことが大切です。
この結果から飲み物を選ぶときは、まず目的をはっきりさせます。汗をかいた後の水分を補いたいのか、食事と一緒に酒を楽しみたいのかで、選ぶ理由は変わります。アルコール濃度だけを見て安心するより、飲料の量と、水などを別に飲む予定も合わせて考える方が、実際の行動につながります。水分補給という用事を酒に任せない、という順番をつくることができます。
ビールで悪影響が出なかった試験もあります
Jiménez-Pavón ら(2015)は、活動的な男性16人が暑い実験室で運動する、クロスオーバー試験を行いました。クロスオーバー試験は、同じ人が別の機会に異なる条件を経験し、結果を比べる方法です。著者らは、運動で水分を失った後の適量のビール摂取は、水分の指標に悪影響を与えなかったと結論づけています。飲酒を扱う研究を読む際には、こうした結果も含めて見る必要があります。
ただし、Jiménez-Pavón ら(2015)では、水分を補った後に体重は増えたものの、運動前の水準までは戻りませんでした。「悪影響がなかった」は、比べた条件より悪くならなかったという意味であり、完全に回復したという意味とは異なります。また、水分の指標を調べる試験と、歩くときの安定性や筋肉の回復を調べる試験では、答えている問いが違います。次の表は、各研究がどこを見たのかを並べたものです。
| 運動後の飲酒への見方 | 水分や筋肉で測った結果 | 飲料の比較と研究方法 |
|---|---|---|
| 酒は少しでも水分の回復を妨げる | 薄いアルコール飲料では差が見られない条件もあった | Shirreffs ら(1997)、濃度を変えた飲料の比較試験 |
| ビールなら水の代わりになる | 通常のビールで尿量が多く、反応やバランスも悪化した | Flores-Salamanca ら(2014)、若い男性で水・低アルコールビールと比較 |
| ビールを飲むと水分の指標はいつも悪くなる | 適量の摂取で悪影響が見られなかった | Jiménez-Pavón ら(2015)、活動的な男性のクロスオーバー試験 |
| ビールの種類が違っても結果は同じ | 低アルコールにナトリウムを加えた条件で水分の収支が良かった | Desbrow ら(2013)、男性が自転車運動後に飲料を比較 |
低アルコールという表示だけで選ばない理由
Desbrow ら(2013)は、男性7人が自転車をこいで体の水分を失った後、成分の異なるビールを飲む条件を調べました。低アルコールのビールにナトリウムを加えた条件では、通常のビールや、通常のビールにナトリウムを加えた条件より、水分の収支が良好でした。ナトリウムは塩分に含まれる成分で、水分の収支は、取り入れた量と失った量の差を捉える考え方です。研究の焦点は、ビールという名前よりも、飲料の中身にあります。
Desbrow ら(2013)は、低アルコールでナトリウムを加えた飲料を、通常のビールで見られる水分の損失を抑える可能性のある選択肢と評価しています。比較の中心は、成分を変えたビール同士です。水より回復に優れた飲み物だという結論ではなく、ビールの成分を調整したときの違いとして読むのが適切です。飲み物の呼び名だけでは、研究の条件を十分に表せません。
飲む物を手に取るときは、アルコール度数と容量の表示を一緒に見ます。度数が低いという理由で量を増やすと、飲み方そのものが変わってしまいます。「低アルコールだった」という記憶よりも、どの飲料をどれだけ飲むつもりなのかを確かめる方が、選択の内容が明確になります。飲むかどうかを決める前に表示を見るだけなら、飲酒を新たに試す必要もありません。
また、研究で成分を調整した飲料が使われたことを、自宅でビールに塩を加える手順に置き換える必要はありません。普段の帰り道では、水や麦茶を先に用意する方が、飲酒と水分補給の目的を分けやすくなります。味や冷たさだけで飲み物を決めそうなときも、最初に選ぶ物を決めておけば迷う場面を減らせます。塩分や水分の取り方について医師から指示がある人は、その指示を優先します。
水分が戻っても筋肉の回復は別に考えます
Barnes ら(2010)は、健康な男性11人に、片脚の太ももの筋肉を強く使う運動を行ってもらいました。筋肉が力を出しながら引き伸ばされる「伸張性収縮」を300回行った後、アルコールを含む飲料を飲む条件などを比べています。運動後36時間と60時間では筋力が落ち、アルコールを飲んだ条件でその低下がより大きくなりました。汗をかいたかどうかに加え、どんな負荷を筋肉にかけたかが関わる試験です。
Barnes ら(2010)で注意したいのは、筋肉痛の評価には飲む条件による差がなかったことです。筋力の差があっても、痛みの感じ方が同じ方向に変わるとは限りません。痛くないから回復している、あるいは痛みが同じだから飲酒の影響も同じだと考えると、研究で測った筋力との違いを見落とします。翌朝の体の感じは手掛かりになりますが、筋肉の働きそのものを測る検査とは別です。
Parr ら(2014)では、身体活動を行っている男性8人が、筋力を使う運動と自転車運動を組み合わせた試験に参加しました。筋たんぱく質合成という、筋肉を構成するたんぱく質をつくる働きを測っています。たんぱく質だけを摂った条件に比べ、アルコールとたんぱく質を摂った条件では合成の速度が24%低く、アルコールと糖質を摂った条件では37%低い結果でした。たんぱく質を一緒に摂っても、飲酒による低下が見られた点が重要です。
Parr ら(2014)では、どの条件でも筋たんぱく質合成は安静時より増えていました。つまり、運動の反応がすべて消えたのではなく、飲酒した条件で増え方が抑えられたという結果です。「飲んだら運動が無駄になる」と大きく言い換えるより、回復を優先する日に飲酒を組み込む理由があるかを考える方が、この試験の意味を生かせます。食事を取れば酒の影響を帳消しにできる、という理解にも注意が必要です。
帰り道では反応とバランスの低下が問題になります
Flores-Salamanca ら(2014)は、若い男性11人が暑い環境で運動した後、水、4.6%のビール、低アルコールビールを飲む条件を、順序を無作為にして比べました。無作為とは、研究者の都合で順番を決めず、偶然に任せることです。約1.6リットルを1時間で飲んだ後、通常のビールの条件では、ほかの条件より尿量が多くなりました。同時に、反応時間が長くなり、バランスの指標も悪化しました。
この研究の結果で帰路に関わるのは、飲んだ後に素早く反応し、姿勢を保つ働きです。駅まで歩くことや、荷物を持って移動することを考えると、水分の戻りだけで飲み物を評価するのは狭い見方になります。ここで測られたのは反応とバランスであり、駅前での転倒件数ではありません。事故が起きる割合を付け足すことなく、移動中に必要な働きへの影響として受け止められます。
自転車で帰る予定がある人は、飲酒を帰路の予定から外します。飲んだら自転車に乗らず、自転車を使わない帰り方に切り替えます。飲む量を少なくすることと、自転車に乗ってよいかという判断は別です。同行者がいる場合も、乾杯の時点ではなく、移動手段を決める段階で飲酒の予定を共有しておくと行動をそろえやすくなります。
20歳未満の飲酒は法律で禁じられています。持病がある人や薬を使っている人は、運動後の飲酒について医師に相談します。相談する際は、運動の種類だけでなく、飲もうとしている物と量、運動後の体調も伝えると、聞きたいことが具体的になります。体調が悪いときに、飲酒で回復するかどうかを試す方法は向きません。
次の練習では飲む順番と翌朝の感じを確かめます
練習の前後に体重計に乗れるなら、同じ体重計を使って変化を見ます。服装や測るタイミングをなるべくそろえ、途中で飲んだ物も頭に置いて比べると、汗で減った分の目安をつかみやすくなります。目的は体重を減らした成果として喜ぶことではなく、運動の前後に体の状態がどう変わったかを知ることです。数字を追うのが負担なら、無理に計測を習慣にする必要はありません。
帰りの最初の飲み物は、水か麦茶にすると先に決めておきます。練習が終わってから探すより、出かける前に用意する物として決める方が実行しやすくなります。一緒に帰る相手がいるなら、「最初は水を飲む」と伝えておく方法もあります。これはビールを飲む前の儀式ではなく、水分を補う行動を飲酒の予定から独立させる工夫です。
すでに飲酒の習慣がある人は、飲んだ日と飲まなかった日の翌朝で、体の重さやだるさの感じを比べてみます。比較のために飲む日を増やすのではなく、普段の生活で生じた違いを振り返ります。そのときは、前日の練習が強かったか、仕事が立て込んだか、睡眠を取れたかも一緒に思い出します。違いを酒だけのせいと決めず、次の予定を調整する材料にします。
翌朝に外せない用事がある日は、その内容を運動に出かける前の予定表で確かめます。荷物を運ぶ用事や体を動かす予定があれば、終わった後の飲み会を流れで決めず、帰宅後まで含めた過ごし方を選べます。次の練習日に持つ水筒は、着替えと同じ場所に置いておくと準備から抜けにくくなります。水筒が準備できたかを出発前に見ることが、帰りの最初の飲み物を決める具体的な手順になります。
よくある質問
ビールを飲めば、汗で失った水分は戻りますか
ビールも液体ですが、飲んだ量だけで回復を判断するのは適切ではありません。Shirreffs ら(1997)では、飲料のアルコール濃度によって、水分の戻り方が違いました。Jiménez-Pavón ら(2015)では水分の指標に悪影響が出なかった一方、運動前の体重までは戻っていません。水分を補う目的なら、ビールに任せず水や麦茶を先に選ぶ方が、目的に沿った行動になります。
たんぱく質を取れば、飲酒の影響を補えますか
Parr ら(2014)では、アルコールとたんぱく質を一緒に摂った条件でも、たんぱく質だけの条件より筋たんぱく質合成の速度が低くなりました。筋肉をつくる働きへの影響は、一緒にたんぱく質を摂ることで消えたわけではありません。食事を取ったことを、飲む量を増やす理由にしない方がよいでしょう。回復のための食事と、酒を飲むかどうかは別々に考えることができます。
翌朝だるくなければ、その飲み方を続けてもよいですか
翌朝の体の感じは、生活を見直す手掛かりのひとつです。Barnes ら(2010)では、筋力への影響が違っても筋肉痛の評価には差がなく、体感と測定結果が一致しない面がありました。翌朝のだるさだけでなく、飲んだ量や帰りの移動手段も振り返る方がよいでしょう。持病や服薬がある場合は、自分の手応えだけで決めず、医師への相談で飲酒の扱いを確かめます。
この記事の限界
測定されたのは、暑い環境での運動後の水分の収支や、負荷をかけた筋肉の働きなどであり、ホットヨガを終えて立川駅南口から帰る人の回復を直接調べた研究は見つかりませんでした。実験で決められた飲料の量や摂取のタイミングは、仕事帰りに食事をしながら飲む条件とも異なります。
対象は少人数の男性が中心で、ここに挙げた結果だけから、女性や持病のある人を含む各人にとっての安全な飲酒量を決めることはできません。水分の回復、反応とバランス、筋肉の回復は別の測定項目であり、ある項目に悪影響が出なかった結果は、ほかの項目の安全まで保証するものではありません。
参考文献
- Shirreffs SM, et al. Restoration of fluid balance after exercise-induced dehydration: effects of alcohol consumption. J Appl Physiol (1985). 1997;83(4):1152-1158.
- Jiménez-Pavón D, et al. Effects of a moderate intake of beer on markers of hydration after exercise in the heat: a crossover study. J Int Soc Sports Nutr. 2015;12:26.
- Desbrow B, et al. Beer as a sports drink? Manipulating beer’s ingredients to replace lost fluid. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2013;23(6):593-600.
- Barnes MJ, et al. Acute alcohol consumption aggravates the decline in muscle performance following strenuous eccentric exercise. J Sci Med Sport. 2010;13(1):189-193.
- Parr EB, et al. Alcohol ingestion impairs maximal post-exercise rates of myofibrillar protein synthesis following a single bout of concurrent training. PLoS One. 2014;9(2):e88384.
- Flores-Salamanca R, et al. Postexercise rehydration with beer impairs fluid retention, reaction time, and balance. Appl Physiol Nutr Metab. 2014;39(10):1175-1181.
改札を出てから扉に着くまでの数分が、続くかどうかを決める。
- 向く人: 授業や練習のあと、駅までの帰り道をできるだけ短くしたい人
- 向く人: 通勤や通学の途中の駅で、乗り換えを増やさずに通いたい人
- 向かない人: 駅から離れた場所へ、車の送り迎えで通うことを前提にしたい人
- 向かない人: 移動をせず、自宅だけで学びや運動を済ませたい人
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ビールを飲めば、汗で失った水分は戻りますか
ビールも液体ですが、飲んだ量だけで回復を判断するのは適切ではありません。Shirreffs ら(1997)では、飲料のアルコール濃度によって、水分の戻り方が違いました。Jiménez-Pavón ら(2015)では水分の指標に悪影響が出なかった一方、運動前の体重までは戻っていません。水分を補う目的なら、ビールに任せず水や麦茶を先に選ぶ方が、目的に沿った行動になります。
たんぱく質を取れば、飲酒の影響を補えますか
Parr ら(2014)では、アルコールとたんぱく質を一緒に摂った条件でも、たんぱく質だけの条件より筋たんぱく質合成の速度が低くなりました。筋肉をつくる働きへの影響は、一緒にたんぱく質を摂ることで消えたわけではありません。食事を取ったことを、飲む量を増やす理由にしない方がよいでしょう。回復のための食事と、酒を飲むかどうかは別々に考えることができます。
翌朝だるくなければ、その飲み方を続けてもよいですか
翌朝の体の感じは、生活を見直す手掛かりのひとつです。Barnes ら(2010)では、筋力への影響が違っても筋肉痛の評価には差がなく、体感と測定結果が一致しない面がありました。翌朝のだるさだけでなく、飲んだ量や帰りの移動手段も振り返る方がよいでしょう。持病や服薬がある場合は、自分の手応えだけで決めず、医師への相談で飲酒の扱いを確かめます。